第273話「王都に近づくと起きる安定のフラグ…」

「そう言えば……もうすぐ王都に到着するんですよね?」



 僕は今乗馬の訓練中だ……昼からの数時間で太腿の内側が痛い……習いたての人がなるらしいが、その後は全身筋肉痛で主に上半身と言っていた。



「ああ!そうだが?まだ結構かかるから、訓練にはちょうど良い距離な筈だ」



 大地のエルフのエルデリアさんが乗馬術を教えてくれている。


 その代わりに魔力容器の原理から、魔力ミキサーまでを代わりに教える感じになっている。



「あの魔力容器だが、本当に大変だずっとイメージを維持しているのが大変だよ。」



「回すだけで一苦労だ……何かコツがあるのかい?」



 熱心に毎日やっているのを見た僕は何となくアドバイスをした。


 魔道士学院でやった魔力操作基礎講座を元に教えたら、魔力操作基礎講座について色々聞かれたので言葉選びが大変だった


 それは基礎技術ですが、錬金魔法の魔導書に書かれた一部です……とは流石に言えなかった。


 魔導師ですらない僕が語れるほどの知識はない。



 ちなみに、彼等の国にも既に錬金術師は居ないらしく、隠居して姿を見せないエルフの錬金術師がいる位らしい。


 稀にポーションを売りに来るので移住を勧めているが、以前『国の為に働くべきだ!』などと威圧的に出た長老の一人がいて、その時を最後に150年ほど顔を見せなくなった様だ。


 当然だが王様がその長老に対して大激怒したようだ。



 その話で僕はどこも一緒だなと思った。



 ちなみにエルフもポーションは、人間と同じ様にダンジョン頼みらしい。



 ひとまず簡単には行かないので自己アレンジが必要なことは確かだ。


 なのでキッカケを教えてみることにした。



「それはですね!一番目に慣れた物で再現すると良いですよ!できれば密封された物が良いですね!」


「その見慣れている容器が回る感じのイメージです」



今は乗馬訓練中なので集中出来ないが、『ムムムー』と声がするので常にイメージトレーニングはしている様だった。


 既に中間地点の村を出て三日目の昼だ。


 明日には王都に着く予定だが、これから進むべき先に何かある様だ……カブラが大きな声で注意を促す。



「やっと出番だ!アンタ達戦闘準備!チャック!こっち来て手伝いな!」



「残念だが相手は『人間様』だ、エルフの旦那には助力をしてもらえないからな!」



「ヤクタターズの元騎士団ども!後ろの商団3組を守りな!アンタ達に役目は本来『そっち側』だろ!?死ぬ気でやんなよ!」


 カブラが指示を出し、一気に慌ただしくなる。


 視覚拡張の効果はかなり先まで見通せる為に詳細がわかるが、他の冒険者には肉眼で馬車かな?と判別できる位の距離だ。



「カブラ!馬車の詳細を説明してくれ!周りに護衛はいるか!?」



 彼女のボスであるテイラーが詳細を注文する。



「馬車は王都に向かっていたんじゃないね……こっち側に向かっていた様だ……護衛は全滅だ!誰も動いてない。今は馬車から誰かが引き摺り出されてる……流石に遠くて人相は分からないが、来ている服でどっかの御令嬢だ!早くしないと間に合わないね……l



 かなり距離があるので、馬で追いついても人質が壁にされるのは目に見えていた。



「アタシに任せな!新しい戦い方考えたんだ!行くよ!アリン子!」



「最高スピードで駆け抜けるよ!合図と同時にスピードダウンもな!」



 そう言い残すと目立ちたがり屋のエクシアは、アリン子に乗って爆走を開始する。



 あっという間にトップスピードになり、馬車を襲っている悪漢と距離を縮めるエクシアとアリン子。



 アリン子が腕に絡ませてるのは冒険用のロープで、エクシアはそれを使い身体を固定させている。



 そのロープを勢いよく上に振るうアリン子……当然勢い良くエクシアは空中に放り投げられると同時にアリンコはロープを鉤爪で切り離す。




 「おいで!焔蛇!『炎の女神!山神たる力を!』悪しき者に力を示せ!来れ!『チャンティコ』」



 エクシアは空中で叫ぶと身体が炎蛇にみるみるうちに変わっていく……器用に回転しながら体制を立て直すと自然落下に任せて腕と尻尾を振るう。


 馬車を襲っていたのは盗賊の様な格好をしていて、全員が顔を布で包んで隠している。


 突然上空から燃えるラミアが降ってくるのでパニックになるが、急なこと過ぎて対応もできない。



「な!ラミアが何故こんな王都のそばに!そ……空を飛んで……え!?……ぐあぁぁ!」


「誰か〜誰か!燃える!身体が!燃える!この尻尾を解いてくれ〜!うがぁぁぁ〜あづい〜!」



 エクシアが盗賊の一人を地面と衝突のクッション代わりに使うと、酷い音を立てて地面に圧縮され息絶える。


 落ちざまに一人の首を斬り飛ばし、尻尾で馬車ごと盗賊一人を巻き潰す。


 もともと放物線を描く以上落下位置がバウンドしてズレるので、その移動を抑える為に馬車に巻きつくつもりだったが、運の悪い盗賊が巻き込まれたようだ。



「トンネルアント亜種が来るぞ!なんだ!今日は化け物ばかりだ!どうなってやがる!『依頼』の品物を届けるのに後ちょっとだって言うのに!」



「誰でもいい『この娘』を依頼主に届けろ!こんなチャンス次などないぞ!」



 盗賊団のリーダーと思わしき人物が指示を出す、それもそのはず凄いスピードでトンネルアントが接近してくるのも目視できる距離だ。


 しかし彼は『間違い』を冒す……ラミアの魔物ではなく『魔物の様なエクシア』なのである。


 性格もさることながら、容姿まで魔物だ……区別が出来ないのは仕方が無いだろう……とロズならば言うだろう。



 盗賊団のリーダーが指示を出す直前にトンネルアントが仲間の横をすり抜けていく。



「なんてスピードだ……間一髪だ……少し前に居たら跳ね飛ばされていた……運がいいぜ!!」



 そう言って盗賊の一人が後ろ仲間に話しかけて振り向くと、そこには頭部を三枚におろされた仲間がいた。


 アリン子はすれ違いざまに大鉤爪てチョンとタッチしてみた。


 そしたら盗賊団が続け様に前後に重なる二人の頭部がバラバラになっていた。



 勢いがつき過ぎて走り抜けてしまったので、アリン子は急いで地面に鉤爪を突き刺し、後ろ足を巧みに動かしてUターンをする。



「なんて化け物だ!あのスピードですり抜けてまた戻ってくるぞ!だめだアレは駄目だ!剣で斬られて死ぬのはいいが喰われたくない!絶対に嫌だ!」



「逃げろ!逃げろぉ!」



「おい!?クソが!なんでこうなる!仕方ない引くぞ『依頼の品』を忘れずに持っていけ!」



 この状況下にもはや太刀打ちできないと悟ったリーダーがそう言うと、エクシアが素早く尻尾を伸ばして一気に巻きつく。



「ほう!?『誰の差金』で『どんな依頼』なのか詳しく話して貰おうか!」



 全員が恐れ慄く瞬間だ……『人語を喋る魔物』この時点で既に魔物の脅威度が跳ね上がる。


 満足に死ぬ事さえ選べないのは、尻尾に巻きつかれて殺されてない時点で既に想像がつく。



 今まで燃えていた筈のラミアの身体は焔が消えて、燃え上がる様な赤とオレンジのグラデーションが浮かび上がっていた。


 ウッカリ燃やして殺さない様に火を消していた。


 かなり先まで走っていたアリン子が戻ってきて、ラミア&アリン子のモンスタータッグが出来上がる。


 片方は人語を話すのだ恐怖で頭がおかしくなる盗賊達。



「何でも話します!だから生きたまま食べないで!」


 盗賊の一人がそう言った瞬間、皆その場でチビってしまう……そしてエクシアが……イラッとして『ぎゅー』とすると皆意識を手放した。



「は……は……」


「死にたくないですぅ……た……食べないでくださいぃぃぃぃぃ」



 そう話したのはどっかの貴族の御令嬢なのだろう。 


 

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