第220話「エルフの姫君、そしてエルフと揉めそうな僕」
「…………………ちょっと!どう言う事よ!ユイにスゥ!私達………遠い姉妹だったの!?」
「ビックリしました私も……なんか他人とは思えないと思ってたんですよ!」
「そうだね!ビックリだよ。モアちゃんは月エルフの姫さまだったのか!今来たのはシャドウエルフの王都直属軍だよね?………危なかった……『人間』の格好では力が全く出せないから……実は今『闇払い』しか出来ないんだ……誤魔化せてよかった!」
「私もです!この『人間』の格好では『ファントム・ハウンド』しか出せないので誤魔化せて良かったです。まぁ姿形は『ファントム・ハウンド』も『スピリチュアル・ハウンド』も似てるので……」
「土壇場で誤魔化すなんて……と言うか……太陽エルフの姫に大地エルフの姫とは……偶然って怖いわね……それにしたって貴方達はなんで此処に?」
「ワタシはモアと同じよ!?隠れ住むなんて出来ないから……何とかエルフ族の崩壊を防ぎたくて、光の神殿から出てきたのよ爺さん達は頭が硬くてさ〜」
「私もスゥとモアと同じでね。抜け出してきたの!大地や森の穢れを祓う役目が私達エルフの役目なのに……今の十賢者はこれ以上穢れを祓い植樹しても全て人間の穢れで汚染されると言って聞かなくて」
「穢れに『根源』があるとすれば、それは何か!そういう事を探そうとせずに、全て『人間』のせいにして自分たちは滅びるだけ!と言い、民衆を惑わしているのよ」
「「どこも同じねー」」
ユイの説明を聞いて見事に声がハモるスゥとモア。
「ところで『スピリチュアル・ハウンド』って詠唱したのに出るのは『ファントム・ハウンド』なのは何でなの?」
「え?」
「は?ちょっと……スゥ本気なの?」
「え!?あ……アタシ……魔法苦手なのよ……身体強化は得意なんだけど……」
「「なんかわかるーー」」
ユイとモアは声をハモらせながらそう言うと、宿に向かいながら話をする。
言った時の表情は白い目で見ていたのは言うまでもない。
「魔法詠唱は発言が全てじゃないのよ。既に魔法を準備しておいて、ブラフで詠唱するのそうするとさっきみたいなことが出来るわよ」
「取り敢えず宿に戻ってこれからの事を相談しましょう?スゥにユイ!今日はありがとう!遠き姉妹に逢えて本当に嬉しいわ!」
そう言って3人は宿に向かって行った………
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
ひとまず宿の中の入り、待ち伏せが無いか安全を確認して部屋に入る。
お互いの安全の為に三人で寝られるように、宿の主人にベッドを移してもらった。
深夜の為あまり良い顔しなかったが、人間の様にチップを払ったら喜んでやってくれた。
そして三人で安心して眠れそうなので今後の予定を話し合う。
「どうしようか?……ひとまず宿に帰って来たのは良いけど、このままこの街に居続けても問題にしかならな気もするのよね?」
モアがギルドからコッソリ持ち帰ったホーンラビット肉を食べながら2人に言う。
2人もそれをつまみながら話す……
「そうなのよねー!でもさ、何処行っても同じだよね……多分私達3人とも『家族が黙ってない』事は変わらないと思うの。だからこそこの街で三人で居れば少しはマシじゃないかな?」
「此処なら既に何人かとは仲が良いし、ギルドにも今日多く知り合いできたじゃ無い?ヒロのお陰で?」
「私もスゥちゃんと同じ事を考えていました、多分ですが先程の襲撃の失敗で月のエルフの護衛隊は既に連絡を取ってモアちゃんを見逃さないようにしているはずです。だからこそ私達は離れない方が、私たちを追う護衛軍を牽制できるはずです。お互いの護衛軍を」
三人は同じような事を考えていた様で、下手に街を移動すればその際に個別に捕まり引き戻されかねないと思った。
敵の敵は味方だ……
私達を連れ帰るために、護衛軍が互いにコンタクトを取りあい一助協定を結んだら街の外は危険しか無い。
「チャック達はどうしようか?私達の事を話した方がいいかな?」
「チャックだから良いんじゃない?」
「ユイもそう思った……」
「実はモアも言わなくてもいいかな〜って思ってた!アイツどうせ適当だから『大丈夫だろぉ〜一緒なら』とか言いそうだって思ってさ」
「「わかる〜」」
チャックは本人がいなくても酷い扱いだった……
そして彼女達は眠りについた。
この次の日に単独任務を終えたヒロが、彼女達の護衛軍に鉢合わせをするのだった。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
『護衛を終えたのでギルドへ報告し、査定を受けた後銅級冒険者講座を受ける』それが最低限今日熟さなければならないノルマだ。
それ以外にもエクシアが言っていた事もある。
僕は早足でギルドに向かう……
その途中に丈の長いローブを着込んだ冒険者の様な者とぶつかってしまった。
相手も路地から出て来たのだ。
「あ!すいません!急いでいたもので怪我は無いですか?」
僕がそう言うと、ぶつかった相手の被っていたフードがはだけて顔が見えて居た。
顔立ちはスッキリしており、とても整った顔立ちだ。
そして耳がとても長く人では無いのがわかる……『エルフ』だった。
「大丈夫でしたか?怪我が無ければ良いのですが……もし痛いところがあれば言ってください。傷薬もありますので!」
「人間風情が……我々に……誰が人間などが作った薬など飲むか!」
彼はとても高圧的だった。
人間を毛嫌いしているのか言い方が酷かった。
彼は立ち上がると、僕の謝罪を無視しギルドの方に歩いて行ってしまった。
たまたま側で見ていたおばちゃんが怪訝そうな顔で僕に話す
「なんだいありゃ……謝ってんのに『人間風情』だって!?だったらこの人間の街から早く出てってくれってね!坊やもそう思わないかい?……大丈夫だったかい?アンタ……一方的に謝ってたけど向こうだって確認せずに出て来たのをアタシャ見てたんだから…」
「アンタの方が謝れるだけ偉いよっ!」
見ず知らずのおばちゃんだったが、言いたい事を言ってくれたので少し嬉しかった。
初めて見たエルフだったが、思ったより酷い印象だったので只々びっくりだった。
「有難う御座います。エルフの方でしたね……初めて見ましたエルフを……」
「そう言えば耳長かったね!あの台詞も納得がいくわ!高圧的で有名だからね!エルフは。こっちが仲良くしようとしても、見下しやがるんだよね!」
「でも珍しいね、エルフって確か国民に人間の街などへは渡航を禁止してたはずだけどね?まぁ最近は王都でもよく見かけると言ってたわね。冒険者が短命種が博識の私達に意見するな!って言われたそうだうよ!王都で前に喧嘩になったことがあるって、此処に来た冒険者から小耳に挟んだよ!」
「でも、昔は人間が治める王国類とも仲が良かったらしいんだけどね!?御伽噺ではそう言われてるんだよね……当時に何が有ったか知らないが、今の私達がしたことじゃ無いだろうに……頭が良いならわからないのかね?」
「何が有ったかは今は誰も覚えてないんですか?」
「今はもう魔導士学院くらいじゃ無いかい?書物が残っているならね!?」
今度『魔導書』の閲覧の時にでも学長に聞いてみよう。
それに関する書物があれば尚更良い。
自分の世界に戻る方法で関与していたら、関係性の問題でそれを台無しにはしたく無いからだ。
ただ問題は、彼が何かの理由で人間を毛嫌いしているなら相手にしない事で乗り切れるが、過去に戦争でもあった場合はそうは行かなくなり、王族が人間との国交を断絶してたら絶望的だ。
しかし、今のところは望みが少しはある。
さっき高圧的だったエルフの彼が居るのだ……来るなら行ける可能性もある。
僕はおばさんに情報のお礼を言ってギルドへ向かった。
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