第209話「魔導士学院に絡む事件簿」

しかしそれが面白くない人間がいた。


 同じ水系の授業を受けるクゥーズだ。


 彼は伯爵家が嫌いだった。


 理由は父の毎日の台詞が元だ。


 自分と伯爵家長男を比べて物を言うからだった。



 クゥーズは伯爵の息子と同じ授業を受けたくないあまり、教室でザベルを発見してから彼はすぐに水系の授業に変更する。


 実は彼にも親にも目的がない。


 なので別に水でも土でもたとえ風であってもなんでもよかった。


 親が伯爵家と差をつけたいだけで通わせてたのが原因でもある。



 水系の教室で受講しているとある日クラスで可愛い子を見つける。


 それは男爵家の長女だった。


 初めはアープに近づきたいと思っていたのが、調べたら伯爵家とアープの父は仲が良すぎると分かったのだ。


 彼は徹底的に伯爵家と仲良くする者を差別していた、そんな理由から親の関係にも関わらず彼女に嫌がらせを始めたのだ。



 伯爵は王都での仕事を終えて自分の領地へ帰る時、ゴブリンが街を襲っていると早馬で聞いた。


 馬車を走らせ街に辿り着くが、なんとか撃退したと言う。


 王都へ行く前にギルマスへ注意したにも関わらず問題が起きてしまった



 ザベルのこと、王の鉱山のこと、街の襲撃、問題が続くあまり流石にイライラが募っていた伯爵はギルドに理由を聞きに行くと何故かそこには男爵もきていて伯爵とは正反対でかなり上機嫌だ。


 そんな時に『鉱山』に行きたいとエクシアと言う個人ギルドのギルドマスターが伯爵へ直談判してきた。


 たまたまその場に居合わせたのが男爵で、よく聞けば彼等も知り合いでまさかの騎士テロルが助けられて居ると言う。



 今まで楽しげだった男爵が激昂して居るので伯爵は理由を聞くと、その鉱山に行った冒険者が戻るだろう時間に合わせてギルドに来たと言う。


 伯爵は古馴染みからも切る願いとされれば断るわけにはいかないので、鉱山の直通路の許可を出すとまさかの男爵までついていくと言い始めたので伯爵自身も王への報告もあるのでいく事にした。


 鉱山での第二連合討伐部隊の組織編成もあるのだ伯爵は遅かれ早かれ行かないと話にはならない。


 鉱山に着く前に男爵と相談すると、『下手すれば問題は丸ごと解決する』と同乗者が言う。


 その言葉を言ったのが例の鉱山に向かった冒険者の仲間達だ。


 意味は分からないが全員が慌てて向かっている。


 しかし鉱山に着くと予期せぬ事が起きている。


 報告が芳しくない筈のジュエルイーターが、今はどう見ても押されているとしか見えない。


 周りの冒険者に聞くと、突然水の槍が魔獣の方を吹き飛ばしたかと思うと、負け気味だった前衛部隊が息を吹き返したと言う。


 ザベルも習い始めた…と思い出しながら水魔法?と思った瞬間、今度は天から巨大な氷の氷柱が降って来る。


 それも何故か槍の様な


 そうすると、馬車で一緒に来ていた個人ギルドのギルマスが血相を欠いて戦場へ突っ込んでいき、仲間には『取りっぱぐれるからあそこへ行くぞ』という。



 終わってみれば圧勝で伯爵がジェムズマインに街に帰ったその日に鉱山は魔獣から解放された。


 その冒険者本人が来て男爵に馬車を貸せ、代わりにあの部位をやる。


 伯爵はダメ元で直通路の許可を餌に条件を出して見ると、まさかの伯爵本人までもらえる始末。


 激昂した男爵だったが、事なきを得たのでひとまずは、一番大きい討伐部位を探して借りていく事を皆に告げる。




 ひとまず馬車に討伐部位を積んで持ち帰るが、昼にはダンジョンに着いているはずだが、その後少年は帰ってこないと言う。


 一旦馬車でダンジョンに行こうと、街で一番有名なギルド『希望の盾』の回復師が何故か迎えに行きたがる。


 男爵も行くそうなので伯爵もついて行き、やっと少年がダンジョンから出てきたかと思うと、今度は想定以上の仲間が増えておりデカイ宝箱が目の前にある。


 彼等は全員で一路街に向かうと言うので、伯爵と男爵は馬車を提供する。




 街へ着いたその後の昇格試験の結果、一連騒動の主犯である少年は『銅級冒険者』になる。


 彼は宝箱を開けて、仲間と相談後に多くの宝を王に献上すると言った。


 少年はその宝の中に『秘薬』を発見する。


 無茶を言い秘薬を貰い受け王都へ輸送が即時決まり、護衛はテロルを筆頭に男爵家に所縁がある銀級冒険者達だが、それは鉱山の時に知り合った例のギルドだった。




 ここで問題が起きる。


 男爵家長女の護衛問題だ。


 テロルを王都へ派遣すると男爵の長女アープの護衛が居なくなる。


 その時たまたま例の少年を呼んで執務室で話していたので、銅級になった彼に男爵が依頼をすると二つ返事で引き受けた。



 彼の実力を目の当たりにした伯爵は、土系魔法にこだわり過ぎた自分を諫めつつもはやる気持ちを抑え自宅に戻る。


 真夜中だが息子を起こそうとするが、当の息子は何故か寝ずに父を待っていた。


 理由は魔導士学院の現状についてだった。




 魔導時学院の講師の一部が、私利私欲の為に貴族と組んでただの棒切れを高値で売り払っていた。


 鑑定の結果『マジックワンド』ではなく『木工品』だったらしい。


 一部始終を単独で調べ上げたザベルは憤慨していた。


 理由は男爵の長女の件で目の仇にされていたからだ。




 ザベルはこのワンドの件を調べ上げる過程で、クゥーズの悪巧みとその父親の伯爵家転覆計画を調べ上げた。


 クゥーズの悪巧みは、講師を金で抱き込み男爵家の長女を水系魔法院から破門にし、悪い噂をばらまき恥をかかせる事だ。


 男爵家の名誉を落としそこを利用する魂胆だった。


 父親の悪巧みは、討伐部位を領民の命の対価に『強制徴収』する事だった。


 ここでエクシアがその悪巧みに追加の悪事が増えたことに気がつく…『秘薬』の強奪だろうと言う事だ。


 伯爵はその情報を逆手に利用するらしく今罠を用意する。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 『宴会日『深夜』ー伯爵邸ー』(エクシア目線)



 あたしゃ、今日は『めでてぇ』のでギルドで皆で飲み直しをしていると、伯爵家のナントカって言う執事が飛び込んできた。


 なんでも、問題が起きたので依頼を頼みたいとそれも極秘だ……それは勿論、喉から手が出るほど欲しかった、最後のピース『貴族特別枠依頼』いわゆる『貴族枠』だ。


 既にギルドランクアップの審査申請済みだが、出来ることはやるのがギルドマスターだ。


 だから、後追いの判定材料に貴族が依頼を3件受けたかった。


 そうすれば『無条件』でランクアップだ。


 運良くヒロの奴がダンジョンで『秘薬』なんて拾って来るもんだから、一気に風向きが来た。


 騎士テロルと男爵の斡旋で、輝きの旋風が『一つ目の貴族枠』ゲット。


 テロル護衛の代理でヒロが抜擢され、彼が『ファイアフォックス』のギルドメンバーになる。と言った事から依頼が舞い込み、『二つ目の貴族枠』ゲット。


 そして近いうちに『何か男爵にねだろう』と思ってたら、伯爵からまさかの『三つ目の貴族枠』コレを終わらせれば……確実に昇格だ!




 伯爵邸にいくと既にメンツが集まってたよ……



 アタイはひとまず一部始終を聞いてから情報を組み立ててみた。


 ただ問題もある……



 護衛任務を受けたヒロに関しては下手に動くと相手にバレるので、そのまま何も言わずに護衛任務を続けさせようと提案。


 だってその方が面白いだろ?アイツが関わるんだ!絶対に何かしでかすから!今から楽しみで仕方ない……


 しでかす部分は口が裂けても言えないからほぼ語らずに濁したけど、結果的にどうするかは伯爵と男爵が決めてくれって言ったら二つ返事で了解されたよ。


 一応アープには可哀想だけど囮になってもらうしかない。


 でも命が狙われるわけじゃないし、最後は念願の『王子様』が登場するんだからまぁ多めに見てくれるだろう……


 アープは年頃の夢見る乙女だから多少頑張ってもらわないとねザベルの坊主には。

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