第202話「銅級冒険者はじめての単独任務』
翌日、僕は既に早い時間に男爵邸まで来ていた。
元の世界でいえば8時になるが、この時間はたいして辛くはない本来ならば学校に行く時間だ。
僕は銅級冒険者に上がり、座学を受ける必要があるがそれより先に既に仕事の依頼が入っていた。
『男爵の娘さんを護衛しながら魔導士学院に行く』ことだ。
いつもならファイアフォックスに顔を出してから向かうのだが、流石に連日遅い上に昨日は鉱山バトルとダンジョンアタックだもう流石早い時間にファイアフォックスまで行く余力がないので、依頼が終わったら行くと前日のうちにエクシアには伝えておいた。
タバサはファイアフォックスに寝泊まりしているので、逆に宿屋まで来てくれた。
既に宿屋の親父さんとは仲が良くなっていて、『支配人』と読んでパンを多く貰っていた。
延泊している僕達の連れと言う扱いで何故かタバサのご飯まで無料で出してくれていたので、飴ちゃんをカウンター脇にある皿に置いておく。
親父さんにはお世話になっているのでたまに飴ちゃんを配っている。
ちなみにアソート袋の飴ちゃんの残りは既に1袋と50個まで減っている……総数にして250個だ。
その他にも倉庫から買ってきた妹用の飴ちゃんもある。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ハイチョー19粒入り 1袋
甘露飴20粒入り 1袋
フルーツミックス24粒入り1袋
メルメルキー30粒入り 1袋
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すごい量だが妹用に買った物だ。
コレがあったお陰で異世界に来た時に食べ物は最低限我慢できるのでは?と思えたくらいだ。
この飴も夏になる前に食べないといけないが、まだ冬も迎えてないので多分問題ないだろう……。
最近はロックバードで買った、ホーンラビットの毛皮のブーツのありがたみがよく分かる。
今まで暮らしていた東京と違って、土剥き出しの地面は寒い……
アスファルトが無い分、朝晩の気温は物凄く差があり足元から冷えていく感じだ。
因みに僕の仲間達はまだ初級冒険者のままなので、皆で薬草採取とスライム駆除に向かっていった。
僕は男爵邸の前で皆と別れることになったが、いまいちしっくりこない……急に一人で行動する事になり仲間外れにされている感じがするのだ。
皆には『変な事にならないように』頑張ってと言われたが、正直今までも巻き込まれることはあっても、自分から進んで何かをしたわけでは無い。
ロックバードの村も奥に行ったら精霊がいてその精霊が『普通では無かった』だけで、鉱山だって馬車の乗り間違えだ。
鉱山に着いたので救助活動をしたら巻き込まれたので身を守る為の正当防衛でしか無い。
昇格試験に関してだって、三馬鹿が何かやらなかったら階層ボスの部屋に入ることはなかった。
そのことはひとまず置いておこう。
今日は護衛の問題より、アープちゃんが勉強中にどう時間をうまく使うかが問題だ。
間違いなく暇だろう。
テロルでさえ身体の鍛錬に勤しむほどなのだ……間違いなく暇だろう。
「すいません、男爵様に依頼を受けました。」
「話は伺っております。お待ちしておりました!それでは念のために冒険者証を掲示してください。いかに男爵様と知り合いといえども冒険者が『任務』にて男爵別邸へ入る場合の通例事項になります。」
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冒険者証
階級 銅級 1位 ギルド:街営冒険者
所属ギルド 『ファイアフォックス』
ギルドマスター
『エクシア・フレンジャー・フレイム』
名前 ヒロ 種族 人間
クラス 『未設定』 『未設定』
発行 ジェムズマイン 担当員 ミオ
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僕が冒険者証を掲示すると、番兵はそれを受け取り細部を見た後に門にある不思議な紋様に翳すと冒険者証が青白く発行する。
「ご苦労様です。只今依頼受付を済ませました。コレで依頼を開始することになります。それでは男爵様よりご説明がありますので、奥の広間までお願いいたします。」
「門を開けよーーー!護衛任務の冒険者だ!確認済みにより、通してよーーし!」
番兵は通る声で中に声をかける。
中世西洋風の鎧を着ている番兵だけあって、物凄くなんかファンタジーの世界観だった。
門が開くと、入り口に女性の姿が見える多分迎えに来たメイドさんだろう。
「お待ちしておりました。ヒロ様、では武器の類は此方にてお預かりいたします。其方のバッグも」
「あ!すいませんコレは渡すのはちょっと」
僕はそういって中のスライムを見せる。
「僕はテイマーでもあるので、一緒でいいですかね?ギルドマスターも男爵様も娘さん達も既に知ってるんですが……」
「構わん!通しなさい。武器の携帯も構わん。既に男爵様から許可は得ている。」
「申し訳ない!ヒロ殿その者はまだ入ったばかりで教育が行き届いてなく……お恥ずかしい限りだ」
そう言ったのは執事のマッジスだった。
「構いませんよマッジスさん。中にスライムが居たので逆に不安にさせたらって思っただけなので、昨日はダンジョンアタックだったので宿に置き去りだったので……今日は色々スライムにやらないとならない事があったので……なので謝るなら僕の方です。」
そういうとマッジスは珍しく笑いながら
「スライムをテイムするとは……今からどんなスライムになるか見ものですな!」
「私は昔冒険者をやっており、スライムが好きでしてな!よく見つけては遠くから観察した物です……いやはや……懐かしいものですな……」
「では奥へご案内しましょう」
僕達は奥に行く間に少しスライムの話をしていた。
マッジスさんは本当にスライムのことが好きなようで、どの辺りにはどんなスライムが棲息しているかを熟知していた。
それにしても幾ら顔見知りの僕がする護衛任務とは言え、冒険者である僕が武器を携帯していては危険なのでは無いだろうか……操られていたりしたらどうするのだろうか……ちょっと不安にもなる。
まぁそれだけ信用があるのだろう。使わないレア素材を沢山渡した甲斐があると言う物だ。
「すまんな!朝早くに……冒険者は朝が苦手だと聞いたが、全く遅刻もせず来たな……寧ろ早いぐらいだ。一応半刻遅く出発するか話していたのだが……定刻で良さそうだな!マッジス定刻に変更だ」
「はい。ご主人様!」
マッジスは短く返事をすると、馬車の準備だろうか?足速に広間を出て行く。
3人娘が着替えて出てくる。
小さい魔女のような格好だ。
「これが魔導士学院の制服ですか?可愛らしいですね!」
「うむ!そうなのだよ……この魔女の格好が可愛らしいとは……君は流石に魔導師なのだな」
男爵にはそう言われたが、見た感じは完全に某有名遊園地にいそうなコスプレ幼女魔法使いだった。
僕がそう思っていると男爵が一枚の羊皮紙を渡してくる。
「それはマッジスに用意させた日程だ、一定周期毎に同じ時進で受講する。そのマークがついた日に、今日と同じ風の刻に来てくれ。」
そう言われて僕は予定表を見る。
『魔導士学院予定表』と書かれた羊皮紙で、担当講師『魔導師 プラム・ウォーター』と書いてあった。
羊皮紙に書かれているのは7日分のマスが書いてあり一箇所には⚪︎の上に✖️が書かれている。
35個の箱が並んでいるので、ある意味カレンダーではあるが確証はない。
しかしー数字が書いていないし、曜日や月のような記入もない。
「コレはどうやって使えば良いのですか?慣れていない物で……」
「うむ……その箱の◎のついている日に気をつけて間違いなく来るだけで構わない、テロルの場合は朝になると✖️証をつけて潰していたようだぞ?そして目的の日に来るようにしていた様だ」
どうやら結局カレンダーの様にコレは使うのだが、カレンダーの様に毎日を区別する概念は異世界には無いのかもしれない。
コレはエクシアさん達に要確認だ。
ちなみにこの世界の時間は3時間毎に同じ文字を使う。
そして時間を表す数字を『刻』の前に書く。
一覧にするとこんな感じだ。
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光12〜15光の刻
火15〜18火の刻
木18〜21木の刻
無21〜0虚無の刻
闇0〜3闇の刻
水3〜6水の刻
風6〜9風の刻
土9〜12土の刻
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
なので、今日指名があった時間は『風の9刻』出発となる。
集合がそれより1時進早いので『風の8刻』になる訳だ。
この風や土そして水と火などに分けてあるのは、その時間が一番精霊が活性化するとされている様だ。
ファイアフォックスで聞いた話なので裏付けは無い。
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