第185話「拳闘士降臨!……大霊界へようこそ!」


「じゃあ王様のへ献上するのは、宝石杖、深紅宝玉、パールリング、宝石化粧箱(小型) 、カッコいいロングソード、あと秘薬と念の為に万能薬2個もセットで。」



「ポーション類は買取ますか?ちなみにコッチの4個が通常ポーションでこっちが高級です。この箱は専用木箱ですね……」



「そうそう!皆にお言っておくね?分配で僕的に欲しいのは、火矢弓と書物ですね……」



 ヒロに……火矢……危険じゃないか!?とチャックが言っていたが、一番皆が持ってても困る弓だしユイモアと、スゥに関してはなぜコレが使えるのか『確証が無い』ので鑑定した後周りの目についたら彼女達の身が危険だと判断した結果だ。


「なぁみんな……すまないが俺言いたいことがあるんだ……金貨袋とか、ポーションとか討伐部位は全員で分けるので賛成だけど、それ以外の一個のものはリーダーに渡さねぇか?」



「リーダーが居たお陰で俺たち集まれたし、俺たち今後もパーティー組めるだろう?俺たち5人ならさ……リーダーは多分居場所があるのは一目でわかったし、そもそも今の実力の俺たちは絶対に足手纏いになるだろう?」


「俺たちはもっと勉強と訓練をして、リーダーみたいな度胸を付けるべきだと思うんだ。ちゃんと分配を請求するのはそれからじゃねーかなぁ?……どうかな?」



「「「「チャックに賛成〜」」」」



 チャックの言い分は自分が逆の立場なら理解はできるが、僕に発言権はない様で勝手に賛成されて決まってしまった………


 そこで、魔物素材やポーションで分けられない物を売る話になると、すぐに金の匂いを嗅ぎつけたマッコリーニがハンスにバッグを持って来させる……ギルドの中なのに『遠慮』はないらしい。


 買取価格は……素材が素材だけに安かった。唯一高値がついたのはポーションだった。


 当然鉱山での戦闘が理由だが、そこで消費した分のポーションを購入する冒険者が居る事は間違いが無い。


 その為に既に値段が大きく変動していた。


 買取が終わると、マッコリーニは端数になるポーションをずっと狙っていたと白状した。


◆◇◆◇◆◇◆◇


ポーション3

金貨360枚


魔石(中)4

銀貨22枚


ゴブリンの耳14

ゴブリンの目玉7

ゴブリンの指4

銀貨2枚


錆びたナイフ3

壊れた木の盾

壊れた鎧2

薄汚れた剣1

折れたナイフ1

銅貨5枚


◆◇◆◇◆◇◆◇




 ダンジョン遠征の宝箱収入に買取金額を加味した結果、僕達共通の収入は『1人あたりの貨幣』が金貨220枚、銀貨25枚、銅貨5枚とかなりの金額で、あまりの額の高さに全員が若干壊れていた。


 ダンジョンで手に入れた個人分配の内訳はかなり僕が占有する形になってしまった。


 無理を言って下層に降りるムードを作った上に、5階層のガーディアンなどと闘う羽目に持ち込んだのだから、その取り分こそ公平で良かったのだ。


 だが、メンバーは全員僕に譲ってくれた。


 彼ら的には、倒せるはずも無い魔物だから……と言っていたが、そもそも彼らがいなければ条件さえ満たしていないのだからと思ったが、『条件』など言ったものなら『何故わかる』と言うことになるのは目に見えていた。


 言い出せるはずもなく結局は僕が貰いすぎで終わることになった。


◆◇◆◇◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◇◆◇


『ヒロ分配』

魔石(小)5

ポーション1

高級ポーション2(専用木箱)

フェムトのショートソード

マゴット・リング

精神のワンド 

マジックバッグ(大)

炎の弓(エルフ限定)

高級鑑定スクロール

錬金の書(初級・第1巻)

大切断のスキル・スクロール 

罠外しの捻れた鍵(銀) ※Cランク箱開封罠解除可能


『スゥ分配』

魔石(小)6

ポーション1

高級ポーション2

+1カイトシールド 

チェインメイル

+1尖った・硬い・ロングソード

狂気の仮面

スケイルスキン・リザード・アーマー


『モア分配』

魔石(小)6

ポーション1

高級ポーション2

スリング

フレアダガー

新緑のローブ

火炎球のワンド 

フェザー・アンクレット


『チャック分配』

魔石(小)6

ポーション1

高級ポーション2

+1ロングボウ

矢筒(30本入り)

強弓

ベノム・ダガー 

ガントレット・オブ・オーガ・パワー 


『チャイ分配』

魔石(小)6

ポーション1

高級ポーション2

傷薬2

軟膏(大)3

疾風のスリング

雷鳴の杖

浮遊のブーツ

サハギンスキン・グローブ 

罠外しの捻れた鍵(銀) ※Cランク箱開封罠解除可能


『ユイ分配』

魔石(小)6

ポーション1

高級ポーション2

捻れ曲がった杖

純白のローブ

ユニコーン・サークレット 

イヤリング 

チカラの指輪 


◆◇◆◇◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◇◆◇


 僕達が個人別の分配をしている時、彼等は僕らが得た収入などを横目で見ながらも、皆自分の今日の結果を窓口で報告していた。


 ミオにメイフィも窓口業務があるので、ダンジョン駐在の職員が戻って来るまでになるべく多くの冒険者を処理せねばならない。


 鉱山から帰ってきた冒険者は、既に全員が最低限の処置は済まされていた。


 その為、イーザは小さくなりながらも、頑張って駆け出し冒険者の結果報告を終わらせていく。



 そうしていると、ダンジョンで見たギルドの派遣駐在員が戻って来た。



 ミオさん達が一度処理から外れ他の受付嬢が持ち場を変わると、そのままミオもメイフィ駐在員の方へ行き何やら受け取って色々と指示を受けて話を聞いてーいる。



「連絡いたします、本日トレンチのダンジョンで昇格試験をお受けになった皆様お疲れ様でした。コレから本日の試験の結果報告をしますが、まだ受付処理が終わっていない方が居ましたら、速やかに窓口で処理をお願いいたします。」



「結果報告発表後の窓口受付は原則無効です。出発報告をして街を出てから戻り結果報告をするのが冒険者の依頼を受ける責務です。ちゃんと守れるようにしてくださいね!済まされてない方はお急ぎください。」



「報告の前にギルドマスターより、通達があります。では、ギルドマスターお願いします。」



「皆ご苦労!今日の件だが………残念な事があった………自分勝手な行いで、冒険者が死ぬ事になりかねない事例が起きた。」



「ギルマスの言う通りだ!危うく彼等は死にかけた!なんとか脱出は出来たがダンジョンで得た重要かつ貴重な装備を無くしたんだ!そこの冒険者!オークボス、ヒロ貴様のせいだ!責任をとって、そこの宝箱の装備で償え!」



「「「そうだー!」」」



 ギルドマスターの声に合わせ話し出す輩が居た。



 当然その声の方に皆が向く。



 当然その顔には見覚えがある……ドドリアとその一味だ………よく考えると、竜の玉集めに出てきたキャラじゃなかった気がする。



 ヘベレケだっただろうか……まぁこの際名前などどうでも良い。



 マヌケな三馬鹿の顔が見えて無事を確認はできた。



 マヌケ面を三つ並べて、横には昨日テストに受からず試験への挑戦権まで失った哀れな男がいた。



 元は6人いたが、その内の2人はパシリ的存在で昨日既に銅級に上がったのでここには居ない……と思ったが彼らとは反対側にいた……彼等2人は新しい冒険者達とパーティーを組んでいて、彼等4人を睨んでいた。



 睨み具合が尋常じゃない相当怨んでいたのだろう……そんな彼等2人は昨日から仲がさらに良くなったようだ。



 ちなみに三馬鹿のボスは腕を組んでこっちを見下ろしながら、何か言おうとしていた……互いの視線が合うまで待っていたようだ。



「俺の子分に大変なことをしてくれたな!お前達に最後のチャンスをやろう!その装備で償う機会だ!タバサ含めて今日一緒に居た全員で償え!まず償うのはお前だ!オークボスのヒロ!!」



「「「はははは!」」」



「オークが人に混ざるな!魔の森で暮らしてろ!いいか今日の事はこのパーティーのサブリーダー、ビヨーンが居る限り全冒険者に伝えてやる!今後でかいツラするなよ!まぁお前達が銅級になるなんて100年早いがな!」


「100年だったらオークなんて生きてないから一生駆け出しオークか……哀れだなぁ!そう思わないか?モッキン!」


「そうだよなぁザッコ!自分達だけ得しようとするからこうなるんだ!」


「お仲間はとばっちりで残念だろうが、よく覚えておくんだ!雑魚と付き合うと…………」




「一体!?誰が!?オークですか!言うに事欠いて雑魚ですって!?最も大切な時にいつ迄もゴチャゴチャと鬱陶しいのよ!いっぺん死んで、大霊界行ってこい!!!」



 大声の元はシャインさんだった…………



 次の瞬間、『ド…ガン!!』と硬いものがぶつかる音がしたと思うと、彼女の前にあった机がベロロア達にぶちかまされていた………どうやら蹴り飛ばしたらしい……身体強化は彼女の専売特許だ!


 蹴った勢いで大きい長机が軽々と吹っ飛んでいき、彼等を巻き込み惨状となる。


 しかし彼女は、前蹴りの体制から即座に追撃を開始する。


 しかし予想以上に鈍い彼等……机が見事にぶつかり砕けた机の破片がのしかかり、動くに動けないベロロアとその仲間達……


 必死に立ち上がり彼らが逃げようとした瞬間、カブラとチャック、ベリーとタルトが逃走経路を予測して逃げる先の床に矢を撃ち込む………そして回復師なのに手を見ると、何故か硬そうでかなり大きい籠手を着けているシャインさん。



 装備が形状変化していて拳全体を包む様な状態になっていた……ボクシンググローブをもっと流線形にした感じだ。



 拳闘士の様な素早い動きで暴言の元であるベロロアに肉薄すると、低い体制から右拳の重い一撃をガラ空きの出っ張った腹にメリ込ませる。



 出っ張った腹に一撃受けるのは、タバサとの模擬戦以来じゃ無いだろうか……タバサの時とは違うのは、そこそこ体重が有るはずの彼は完全に宙に浮いて身体がくの字になっている。



 非常に可哀想だ………やめてあげて………既にベロロアと哀れな仲間達の顔がキチャナイの!鼻水とヨダレで!



「シャイン………そこまでにしときな………誰かさんが引いてたら……逆にあんたが損するよ!?」



 突然ビクン!として動きが止まるシャイン。



 そして下を向いてトボトボと帰ってくる……それを見て笑いが堪えられないカブラだった………

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