第175話「お……俺の物欲センサーに対応するだと!」

誰かのくだらないジョークに誰かが皮肉を言う……


 バームのパーティーはコレで続いているのだろう……ダンジョンで命をかけているのだが変な緊張がなくて良い。


 まぁバームの事だと本気かもしれないが…。


「じゃあ……このボスと戦ったヒロは確実に貰って貰いたいんだが……皆どうだ?」


 バームがそう言うとメンバー全員が賛成と言うのでもう確実に貰うしかないが、名前で気に入った物があった……マゴット・リングだ。


 鑑定さえしてないが、僕が大好きなメタルバンドのファンの総称だった。


 マゴットとは蛆虫という意味であるが、メタルなのでファンの呼び方自体がらしいところも好きだった。


 この異世界でも思い出せたことが幸せだった。


 僕はリングを手に取ると皆が不思議そうに見ていた。


「てっきり武器を取ると思った……杖とかなんかソレっぽいから……」


 そんな感想を言ったのはスゥだった。


 僕達のパーティーが貰ったのは、マゴット・リング、狂気の仮面、雷鳴の杖、浮遊のブーツだった……皆鑑定ができないので形状で選んでいた。


 因みに貰ったのは今までの分配を加味して決めた。


 分配対象は1人3個になる様に配分になったなので対象は僕、ユイ、チャイが2個だ……ある意味此処まであまり物欲を発揮しなかったチャイの独り勝ちな気もする。


 彼は僕の魔法を見て、魔導士を目指したいと強く思ったらしく武器を第一に選んだその後僕に相談して来たので効果を鑑定して浮遊のブーツにした。


 移動時に空を歩く様に移動する為に、移動スピードが1.5倍になる代物だ。


 彼は自分が特にガタイが良いのに行動が遅くなるのがコンプレックスだった様なので勧めた。


 スゥは習得物の交換として+1尖った・硬い・ロングソードを貰っていたので自分が4個になるので気にしていた。


 本来ならスゥは貰えるはずがないのだが、指を加えて狂気の仮面を眺めて「ふぬぅーーーふぬぅーーー」とモジモジしていたので聴いてみたらデザインが気に入ったので唸っていたようだ……完全に一目惚れの様だった。


 配分的にはユイが貰えるのだが、僕のクロークには+4イヤリングとチカラの指輪が放置されてたのでその2個をあげることにして彼女に仮面を選んで譲ってもらった。


 チカラの指輪は名前の通り筋力を上げるのだが、彼女は装備の関係で筋力を上げたかったのでちょうど良いそうだ。筋力不足で装備の選定に苦労してたらしくコレでやっと装具を増やせるらしい。


 因みにチカラの指輪でもアクセサリーの防具効果で防御力が5程上がるのでなかなか良いアクセサリーだが、何故かクーヘンがバームに『あれが欲しい』とユイの指輪に指差していた……クーヘンにはあげる気はないのでバームに頑張って探してもらうしかない。


 防御アップが目的なら女性的にも映える+4イヤリングもプレゼントした。


 コレは防御基礎値が5点ある片耳のイヤリングで+4の修正が付いているのでかなりレアだ。コレで防御値が+4追加される。


 その上、イヤリングにはMPの総量を25ポイントあげる効果があるので、回復師の彼女的には地味に役に立つ。


 僕は結局マゴットリングを貰うことになったが、バームのパーティー皆からは何故一番活躍しているのに配分が2個で一番少なくその上、珍しいアクセサリーを消費しているのかと言われたが、スゥとユイは体操ご機嫌であったしコレで僕の株が上がったことは間違い無いので結果オーライだ。


 女性に優しく自分に甘くソレが僕のモットーだ。


 残った氷結のロングソード、火鼠の弓、不滅の矢、ヒドラ・ウィップはバームのパーティーが貰うことになったが結局最後までコレを貰って良いのか?と悩んでいた。


 全部が彼等の職業に適応するので『気を使われた』と最後まで疑っていた。


 その後、彼等はチャックに罠外しと解錠を、ユイに祝福をかけて貰い宝箱をその場で開けていた。


 僕は例のユニークスキルを使って次元倉庫にA+ランクの階層主からの褒賞を仕舞い込んできた……理由は昨日タバサが宝箱を持って帰ってきたので、モアは此処で開ずにギルドに持ち帰り皆の見ている前で開けたいらしい。


 中は不思議な空間で、約8畳程度の広さで既に木製の棚が中央に2列並んでいた。


 入れるのは僕だけで、周りの人は設置したゲートから中を覗くことはできるが見えない壁で入れない様だ。


 その便利さに皆羨ましがっていた。


 試しに他の場所に扉の設置ができるかやろうとしたら、既に同じ部屋にある場合はできないらしく設置と同時に先に作った方が消えてしまう。


 タイムオーバーの場合は中の物は消えないか心配になったが、この場合他の階で確かめるしかない。


 問題は此処に設置した扉は誰でも仲が見えてしまうと言うことだ。


 入れないから奪われないが、今までこの場所を利用したことのある銅級冒険者は突然現れた入れない部屋に不安を感じるだろう。


 しかし設置した以上は今更どうすることも出来ないので、どうにか消えないもんかなぁと考えていたら……かき消す用に扉が消える。


 設置も撤去も使い手の自由だが、多分異世界倉庫への門を出している間は通算で4時間しか使えないと言う事だと、扉が消えた事から推測した。


 こまめに設置し中に置いたら扉を撤去そうすれば上手く使えるはずだ。


 AAランクのガーディアンの財宝は、残念ながらこの階層から持ち出すことはできないので次元倉庫に持って行くことも出来ないだろうし、万が一持っていって開封出来ないとか消えてしまうとかしたら困るので、僕は開ける事を皆に話した。


 さっきのガーディアンの蒼い財宝の事を例に話したので、同系統の宝箱の為に皆は納得していた。ちなみに箱はトロールトランクで大きさはサイズLだ。


「皆良い?開けるよ?」


 僕はそう言ってトロールトランクの蓋を持ち上げると……


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ポーション 3

スケイルスキン・リザード・アーマー 1

ベノム・ダガー 1

フェザー・アンクレット 1

ガントレット・オブ・オーガ・パワー 1

サハギンスキン・グローブ 1

ユニコーン・サークレット 1

金貨袋(240枚)1袋

罠外しの捻れた鍵(銀) 2

火炎球のワンド 1


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「うぉぉぉまじかーーーい!!」


「やった!防具だ!凄い全部防具じゃない?」


 大はしゃぎしたのはスゥにチャックだった。


 スゥは戦士職で盾持ちタンクなので防御力が生きて来る、喜ばないはずは無い。そしてチャックは既に武器を2種類と矢筒を手に入れたのだ。


 此処からは防具が欲しいのは決まっている。


 モアもユイもトロールトランクを覗き込んで目をキラキラさせる。


「ユイちゃん!ユイちゃん!早く祝福で確認して!」


 モアに急かされる様に祝福を掛けるが、装備が崩れ去ることはなかった。


「皆待て!いいか……此処はこの状況を作ってくれたリーダーから先で、それ以降選ぶ順序はクジで決めよう!」


 チャックがクジと言うとイカサマしか思い描けないが……まぁ健全にクジをするだろうと思ったら、モアが用意し始めた。


 石を拾い集めた後、そこにナイフで傷をつけてアタリにする。


 ソレを小袋に入れて引く様だ……チャックが苦虫を噛み潰したような顔をしているので多分イカサマの予定だったのだろう。


「チャック………もう貴方にはクジは作らせないわ!」


 意外にもユイのダメ出しだった。


 順序は意外にも、スゥ→ユイ→モア→チャイ→チャックの順で、チャックは仰向けになり『いやんいやん』言っている。


 物欲センサーとはよく言った物だ。



 僕は皆に勧められて選ぶ事にしたが、今の僕には一択しかない!


「本当に僕からで良いんですね?恨みっこなしですよ?」


 僕がそう言うと皆は生唾を飲み込む……自分の欲しい物を取られると思っているのだろう。

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