第173話「役に立ちそうもないユニークスキル」


「なぁ……なんで6個なんだ?」


「私に聴かれても答えなんか知らないわよ?」


「なぁなんであの箱だけ蒼いんだ?」


「私の話聴いてた?でも思い当たるなら……あの蒼い箱はど真ん中にあるからバーサーカーの討伐報酬っぽいと思うけどね?」


「良いなーーーアレ中身みたいなぁ……」


 そんなやり取りをする、バームクーヘンの彼等をメンバーは悲しそうに見つめていた。

この蒼いは文字通りだ、青とは違く緑とも違う『蒼』なのでグリーンに近いブルーに近いグリーンなのだ。


 一言で言うと緑が優ってる。


 まさか色にこの表現が使われる事にびっくりだった。


 ひとまず僕達は宝を分配する事にした。


 僕はまず箱の中身より『鑑定』が優先なのは言うまでも無い。


 問題の蒼い箱は


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 宝箱 (ガーディアンの蒼き財宝) (毒矢)


特定条件1:

  2パーティ6名以上でフロア入場

特定条件2:

  脱落者0にて勝利

特定条件3:

  女性冒険者3名以上


※以上の条件をクリアした場合宝箱はS+の

報酬に切り替わる。


S+確定ドロップ『ランク無し・適応外宝箱』


        入手方法

  ダンジョンの特定条件を満たし、ガーデ

 ィアンを倒した場合に入手。


  中の財宝は討伐者全員に付加される。


 この箱には必ず罠がかかっている


 解錠方及び罠の解除方は箱ごとに異なる。


 この箱は階層主の部屋から移動出来ない。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 この箱は開けたらここにいる全員が何かを貰えるらしい………が、それを言ったら絶対に鑑定をした事がばれそうなので、何かいい方法がないか考えていたら、一つ思い出した事がある。


「なぁチャックお願いが……鑑定スクロール売ってもらえないかな?あの蒼い宝箱鑑定した方が安全じゃ無いか?」


「いや売らなくても使うよ……俺アレ見た事ないし……多分あの箱はそうそう手に入るもんじゃない。罠がかかっててもガス系だと持ち帰れないしな。」


「バームさん良いですか?鑑定だけさせて貰っても?」


「良いも何も……アレ倒したのは君だから……この箱は君たちのものだよ?」


「そうだねー気になるよこの箱は!私達も実はずっと見たかったんだよー。見た事も無い箱だからね……鑑定スクロール持ってたんだけどさっき全部使っちまって失敗したって反省してたんだよねー」


 チャックはスクロールを使って鑑定する。


「マジか……まず大切なことから言うと……この箱はここから移動はできない……」


「どう言うことだ?この箱全部移動出来ないのか?」


「いや……バーム興奮してないで冷静にちゃんと聴きなよ!?『この箱』って言ったんだよ。あの蒼い箱だって事だでしょ?」


「そうっすね……更にこの箱には必ず罠があるらしい。ちなみに罠は『毒矢』です。」


「マジか!罠どうする!解毒があればそのまま開ければ……ビーンズ!解毒あるか?あればそれを………」


「良いから続けてくれる?なんか悪いわねーこんなのが一緒で……はぁ……」


「いや大丈夫っす……てかこの後の説明が一番やばいです。いっぺんに読んで説明しますね……『ダンジョンの特定条件を満たし、ガーディアンを倒した場合に入手。中の財宝は討伐者全員に付加される。』ですねあの魔物達はガーディアンだったんですね特定条件で出るのは分かったんですが、どうすればその条件になるかがわからないですね。」


「後問題はこれ開けるとここにいる12人全員が何かしら『付加』されるみたいです。なんで鑑定スクロールを後で自分に使わないとダメっすね。なにが起きるか調べるには……」


「リーダー開けますか?持ち運べないのでこの箱は……開けるなら消える前に開けた方がいいと思うんです。」


「皆さんに聞きましょう……『開けますか?』」


 結果は聞くまでもなく『開ける』に満場一致だった。


 箱を開けると一冊の本が入っていて、それは凄く草臥れ本だった……また嫌な予感がする。


 こう言う場合は大概このダンジョンの秘密やら世界の秘密など知りたくも無いものが難しい言葉で書かれたものが入っていて、関わった者が皆大変になると決まっている。


 絶対開きたく無いが、万が一にも元の世界に帰る手段が書かれているならばと考えると皆の為にも開けない訳にはいかない。


 そう考えていると皆が口々に感想を言う。


「本?皆にって事は……これには何か重要な事が書いてるん筈だ!ガーディアンに守られた本……冒険の匂いがするぞ!」


「な!バーム。私も同じ事思ったよ!コレは内容次第では……次に行く場所が決定だ!」


「モアちゃん!私達駆け出しなのに……コレ知って平気なのかな?」


「大丈夫だよユイちゃん!スゥちゃんも一緒に冒険してくれるってさっき約束したじゃ無い?既に私達3人居るんだもん。頑張らなきゃ!皆に負けてなんかられないわ!」


「そうだよ!ユイちゃん私達は、戦士に回復師に薬師が揃ってるんだから!あとは他を補えば十分冒険出来るはず。あの本に何が書いてあるかわからないけど、今日手に入れた装備で確実にレベルアップしていつか辿り着こう」


 口々に本を見つめながら話している。


 しかし鑑定すると皆の予想を大きく外れる事がわかった。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


   スキルブック 1『解放者全員』


    題名『選ばれし者への祝福』


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


 よくよく考えれば『中の財宝は討伐者全員に付加される。』だった『付加される』だ……


 皆に僕は急かされる様に本を手に取り開ける……一見すると本のような形状だったが、実際は豪勢な背表紙のバインダーの作りだった。


 開けた途端に部屋の中で急に旋風が起こり、バサバサと宙を舞う中の紙は此処にいる12人それぞれの手元に収まる様に舞い落ちる。


 当然皆は慌てて回収しようとするが、初めに手に取った紙以外は何故か上手く取れない……嘲笑うかの様にヒラヒラと舞い、足元に落ちていく。


 足元周り一面に散らばる一見羊皮紙の様な物……しかし手に持った紙の材質は羊皮紙のそれではないとわかる。


 不思議な色をした紙……こんな沢山の紙が本に挟まっていたと考えづらい。


 しかし足元に散らばった紙は、僕達の見ている前で崩れる様に消えていく。


「ちょ……どう言う事だよこれ!冒険者は!?中身は!?内容が!」


 ばら撒かれた後に崩れて消える紙を見て焦るバームに比べて、冷静なクーヘンは突然叫ぶ。



「うそーーーーーー!コレ…………コレ………スキル………レアスキル『火炎斬』のスキルスクロールだ!」



 皆が慌てて自分の持っている紙を見る。


 それに釣られて僕も見るが……戦闘スキルでもなく意味がわからないスキルだった。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


  スキルスクロール『ユニーク』


   次元収納『倉庫』の習得。


  特定(任意の場所)に倉庫への入り口を

 設置可能。


 入り口は4時進使用可。

 4時進経過後、中に留まる事は不可。

 (1日過後再度利用可能。)


 次元倉庫に4箇所出口を設置可能。


 倉庫の規模はスキルレベルに依存。

   倉庫LV1「2歩(四方)」

   倉庫LV2『経験値不足』


  『使用者は自分のみ限定』

 使用者限定 『獲得者のみ習得可能』


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


『次元収納『倉庫』ってなんだよ………』


 僕は声に出していた………。


 皆が興奮していた為に僕のスキルは聴こえてなかったが、黙っている事は出来そうにない。


 皆獲得スキルを黙秘することを条件に、皆が得たものを見せ合う事にしたのだった。


「僕のは『ユニークスキル』です……次元収納『倉庫』らしいですが………」


「何……ユニークスキルって………でもコレ……戦闘スキルでは無いんだね……」


「次元収納って『マジックバッグ』の事だよね?『倉庫』って街にある倉庫の意味なのかな?」


「マジックバッグが無くてもアイテムを自由に出し入れできるんですよね?凄い良いですね!」


 スゥはスキルの内容が重要な様だ……ユニークスキルと知った後で戦闘スキルでは無い事を知って興味が無い様だ……彼女は前衛の戦士なので前衛で役に立つスキルが手に入った冒険者に過剰反応を示していた。


 ユイに関しては『倉庫』が気になったらしくどんなものか見たくて仕方ない様だ。


 ユニークスキルの次元収納倉庫が使用者限定スキルで、倉庫内には僕以外は入れないと知ってかなり残念がっていた。


 モアに関してはマジックバッグと同じ効果がある時点で大興奮だったが、入り口が必要な時点で周りの壁を探して『あそこに作ってみましょうよ!?中見てきて感想を教えてよ!」と仕切りにお願いされたが、この手のスクロールは覚えたら消えちゃうとクーヘンに言われて、皆で見せ合うまでは我慢する様だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る