第168話「新たな出会いと迫り来る不運」
「それにしてもチャックは対応が早かったね!私はなんとか盾を構えて前線に立ったけど、ヒロの対応にはびっくりだよ……背負いカバン背負しょったまま戦うのも凄いわね。」
「そうね!いきなりゴブリンを蹴り飛ばすとは思わなかったわ。」
「ユイもびっくりしたです!でも、あの行動一つで敵対する魔物が1匹少なるなるんだから凄いです……覚えるのに必死です。」
「そうだね!僕だったら絶対無理だよ。体格だけ良くて無駄に……情けないよ……」
「チャイ!自分を卑下することは意味がないよ!君は薬師なんだろう?中級傷薬が一つ作れれば僕達前衛はヤバい戦場でもそれを頭から被って戦えるんだよ!?命が繋げるんだ。だからサポートだからと言ってやれる事を100%やれば役に立てるんだよ。」
「なんかそんな事言われたの初めてで……あ!傷薬なら中級までは作れます。実家で母親の手伝いしてたので薬だけなら!あとは畑の作業を手伝ってたので体力と物を運ぶのには慣れてます。このガタイだし」
そう言ってチャイは自分のバッグから大瓶の中級傷薬を皆に配るそれも全員に2本ずつ。
「ちょっと待て!チャイ!このサイズは傷薬(大)だろう?それも話だと中級傷薬じゃないか!幾らすると思ってるんだ?……マジで……マジで貰っていいのか?」
「僕が出来るのはこんな事だけだし……薬草だったら街に戻ればまた採集出来るし。元手は瓶代だけなんだ。」
「よし!じゃあ俺がお前に、薬師でも役に立つ方法を教えてやる!」
「この傷薬を毎回メンバー分持ち歩くんだ!絶対に周りは助かる。そして体力あるんだから毒消しとか、麻痺治しとかも持っておくといい!ダンジョンで一番ヤバいのは『状態異常』だ!毒なんか長引けば100%死ぬ!お前はそれをその体格で補える!アイテム持ち歩く事で!」
「前衛に居ない分、仲間の状態異常を的確に見破れば速攻で対応出来るだろう?戦闘に参加しない分回復師の薬師版だ!」
「良いじゃないですか!薬師シェルパとして様々な薬を担ぎ、どんな状況でも対応出来る薬師だったら『役に立たないはずが無い』最高の役立ち方ですよ!」
「そうね!私達薬師は何かしら貢献する方法を考えないとね!?お互いさ!私は攻撃サポート位かな今のところ……」
「モアさんは生活魔法使えれば良いんじゃないですか?ウォーターとかあればダンジョンで休息中でも薬作れますよね?それとライトとかもダンジョンだと役に立つし、薬草はカバンに括り付けておけば良いし、ダンジョンに自生している草花も利用して良いと思う。」
「そうなると、乾燥させるのに炎系の生活魔法もあったほうが……ぶつぶつぶつぶつ……」
「凄い事考えるのね!?現場で調剤か……良いかも!街に戻ったら生活魔法を調べてみるわ。私MPは適性があって常人より多いのよ!本当にタバサのリーダーはすごいわね……考えが追いつかないわ!」
「モアちゃん!ヒロさん自分のパーティーに適応する気満々みたいだよ。あの様子だとさ、ははははは」
「私もカイトシールド上手く使いこなして褒められるタンクにならないと!」
そんな話をしている中でも、チャックは自分の役目とばかりに散らばったアイテムを集める。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
魔石(小)5
ゴブリンの耳3
ゴブリンの目玉1
壊れた木の盾1
銀貨2枚
銅貨1枚
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
折角出たが……壊れた木の盾とかぶっちゃけゴミだ。
戦闘が終わった僕たちは宝箱が出なかったので、そのまま階段へと向かい降りる階段を見て意思統一をする。
「いいか皆んな……いよいよ5Fに降りる事になる。ダンジョンの駐在員の話では地下4階までの情報は貰ったが5Fのボスに関しては聞いてない。」
「昨日宝を持ち帰った、タバサは『ホブゴブリン』と思われる敵と戦ったと言っている。彼女の実力なら多分ゴリ押しでも勝てるって言われたんだ。」
「だけど僕達は状況が違う。危険と判断したらすぐ合図するから門から出るんだ。フロアボス部屋は入っても出られるらしいから絶対無理はしない事。そして英雄気取りで対応しない事。」
「それをアンタが言うか?今まで出鱈目だったぞ結構?」
「「「「だねーーー」」」」
チャックの一言でホッコリする。
「でもわかったぜ!リーダーがヤベェって言う奴は俺達にはどうも出来ない!だから即とんずらだ!」
チャックの一言を〆に下層に僕達は降りた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
僕達が下層へ降りたあと一組の冒険者が階段を下りる……その冒険者達は後を付けていた。
「くそ!馬鹿にしやがって!モッキン本当に雑魚って言われたんだな俺達は!」
「ビヨーンさっきから言ってるだろう!お前と戦ったアイツが獲物取られたから俺らの事を雑魚呼ばわりしたんだよ!それも自分たちは5Fのフロアボス倒すとか言ってな!」
「いいか!モッキンにザッコ!俺たちは黙ってやられてたりしない。アイツ等より早くボス倒して宝箱持って出るんだ!オーク娘のタバサが倒せるんだ。俺たちなら楽勝だ!3人いればお釣りだってくる……所詮この周辺の魔物と同じだ。」
そう言ったビヨーンをリーダーとするザッコとモッキンは既に鎧に幾つもの打撃跡があり、傷薬も既に3瓶目だった。
実力が伴わない冒険者が無理をすればどうなるかなど、この世界の住民ならば誰にだってわかる。
しかし当の本人達が起こす問題は、偶然が重なりより酷い方へ歯車が動き出す………
◆◇◆◇◆◇◆◇
地下5Fに降りてからはずっと一本道だった。
空間感知で調べると渦巻き状のフロアのようで延々と道が続き、敵性反応を見る限り曲がる場所もなく隠し扉もないから突然戦闘になる訳でもない。
運が良いのか悪いのか……前にパーティーが居る。そのパーティーが敵を全部殲滅するので僕達は後をついていくだけだ。
背後の方にも似たように通路を只歩くだけの冒険者がいるようだ……石壁に反響する足音は聞こえるが近くはないようだ。
暫く歩くと、開けた場所に門がある場所に着いた。
前に居たパーティーが既に陣取って何やら用意していた。
「お!?マジか……お前等駆け出し冒険者だろう?その装備見ればわかるぜ。それも相当戦闘慣れしてんだろう?……おっと!すまないな俺はこのパーティーのリーダーでバームって言うんだ。有能な冒険者は是非知り合いになっておきたくてな」
「俺の自慢のパーティーを紹介させてくれ!ウチの相方でクーヘンだ。見ての通り戦士だ。後ろの二人はベリーとタルトだ、その横のがビーンズとスープーだ。」
突然そのパーティーのリーダーと言う男性が話しかけてきた。
ビックリした事に全員名前をくっつけると食べ物の名前になる……選んでパーティーを組んだのだろうか?
自己紹介をすると全員が其々挨拶を交わしてくる。
男性の持つシールドに夥しい血飛沫が付いているので、間違いなくこの男性が僕達の前で闘っていてくれた人だ。
彼のパーティーメンバーは気さくな感じで笑いかけてくれている。
とても感じの良いパーティーだと思った。
「初めまして、今日このダンジョン初挑戦中の駆け出し冒険者で、この連合パーティーのリーダーをしているヒロと言います。彼女は2班のリーダーでスゥさんです。」
「こんにちわ!駆け出しのスゥです。よろしくお願いします。」
「今日はこのダンジョンで昇格試験なのですが、チェックも無事終わったので折角だし皆で6階までは行こうって。モアさんの発案で探索する事になったんです。」
「あ!紹介しますね、彼はチャック横の彼はチャイ。スゥの後ろにいるのがユイと発案者のモアです。」
「こんちわ!チャックです。ちなみに地下6階行こうってのはモアの発案ですけど、さっさと試験終わらせてソロで潜りたいと言ったんですよリーダーが、んで5階まで冒険するって言うんで俺達は混ぜてもらったって感じです。」
「そ…ソロで5階か……凄い自信だな。」
「でも嘘じゃないと思うよ?バーム。さっきの上階層で戦い見たけどゴブリン蹴飛ばしてたのアンタだろう?更に横凪で動き止めてから1体1に持ち込んで突きで仕留める。」
「多分あの動きだと一人であの3匹片付ける気だったよね?因みにどうするつもりだったんだい?」
ビックリした事に僕達が闘っていた部屋を通り過ぎて行ったパーティーの一つが彼等で、クーヘンと言う女性戦士は戦い方を観察していたらしい。
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