第153話「焦るエクシア、予想外しか起きない戦場」
ヒロが起きてからギルドに向かい、馬車に乗るまでそんなに時間は労していないが、乗った馬車が鉱山についたのは3時間後(3時進)だった、寝坊組は丁度馬車で1時間走ったあたりの時に起床していた。
寝坊組がギルド・ファイアフォックスに着いてタバサにエクシアと話している所にミオの伝言で走ってきたメイフィが来たのはヒロが鉱山へ到着する直前の事だった。
ヒロが鉱山に到着後、救助活動を始めるまでの間に寝坊組は街営ギルドに向かい用意した馬車で鉱山に向かっていた……そして女性を助けてそのまま本格戦闘になったのは、寝坊組が鉱山近くまで馬車を走らせた辺りだ。
そしてまさに水精霊が巨大な水槍を尻尾にお見舞いしたときに彼等の馬車が到着した。
エクシア達がこんなに早く到着出来たのは、必要の無い荷物を全て後回しにした事と、そもそも馬車の精度がヒロが乗っていたものと違うからだ。
時間にして30分は早かった……そしてその30分はヒロにとって救いだった。
「やっと着いた!何だあのバケモンは!あの巨体で片腕がやたら太い剛腕を振り回してやがる……おいロズ!このまま馬車を走らせて救護所がある安全圏までひとまず突っ走れ。あんな一撃受ければ馬車なんてお釈迦だ。伯爵様と男爵様の安全の為と、ヒロが居るなら救護所かまた何か思いついて、あの魔獣の真前のどっちかだあの馬鹿なら後者かもだがな!」
「分かってますよ!エク姉さん。この馬車だって邪魔だし降りて向かうには貴族の人は遅すぎて邪魔っす。」
ロズ達の馬車はベロニカが御者を交代していた。
万が一があった場合到着が遅れるので馬車を走らせたまま途中で交代したのだが、当然この馬車の御者には冒険者崩れが雇われているだけあって、走る馬車で交代するときの身のこなしは上々だった。
後の馬車も伯爵達が中にいるので途中からギルマスが自ら馬車の御者をしていた。
鉱山が近づくにつれて、御者が不安そうにしていたので心許無くなったギルマスがスピードを落とし走りながら交代したのだが、男爵が連れて来た御者は『普通の人』なので交代に苦労していた。
突然、貴族の馬車が2台専用路から入って来た事で、その周辺にいた冒険者は慌てたが、先頭を走るテロルを見て俄に活気付いた。
「テロルだ!騎士テロルが仲間を連れて来た!これでもっと楽になるぞ!テロルが来たと前線の壁に伝言するんだ!テイラーさんに伝言を届けるんだ!」
そう言った冒険者の声を前へ前へと伝言ゲームのように伝える。
丁度今うまく5回目の転倒で少し時間が持てそうなので僕は盾のグループリーダーの所に向かう打ち合わせだ。
5回目ともなるといい加減慣れて早く起きあがってもいいはずだが、デビルイーターはかなり体力を消耗しているのか倒れる度に起き上がるのがどんどん遅くなっていた。
あの甲羅が相当重いのかも知れない。
「テイラー!テロルが来たってさ!これで少しは休めるな!今走り抜けたらしいから少し辛抱しろ!」
「騎士団のマルフォイが帰って来ないから困っていたんだが…有難い!そろそろ盾が限界だったんだ!」
「キミがいて本当に良かった!……こんな妙案を考えなければ僕たちは既に半分は減っていた筈だ。」
「今テロルが来たと言ったから、これで随分と前線の盾も楽になるはずだ!テロルとは以前一緒に戦った事があるからキミも安心できるはずだ。自己紹介が遅れたね俺はギルド・希望の盾のテイラーと言うんだがキミは?」
「僕は駆け出し冒険者のヒロです。テイラーさんの盾技は盾持ちタンク皆に効果があるスキルですもんね。皆楽になるにはわかります。」
「そんなことまで知っているのか?キミは本当に駆け出しなのか?………勿体無いから早く上に昇級するといい。駆け出しをしている意味が僕には見出せないんだが?」
「実は今日昇格試験だったのですが、乗る場所間違えて此処に……これが昇格試験の代わりになればラッキーなんですがね〜」
「キミは本当に変わっているね……この魔獣が昇格試験だったら皆永遠に駆け出しのままだよ……キミぐらいじゃないか?受かるのは?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「おい!此処に駆け出し冒険者が居ないって………どう言うことだ?来てないのか?」
「そんなこと言っている場合か!今ならあの魔獣を倒せるかも知れないんだ!うまくテイラーがやってくれたんだ!多くの冒険者の死をもって………俺は一人でも多く回復させて戦力を増やさないといけないんだ!俺があの死地に送っちまった……あの坊主のためにも!あの坊主の…………」
「待てよ!何だよ!?あの坊主って!」
「私が話すわ!エクシア!きっとあなたが言っている人は駆け出しの冒険者よね?この女性を救護担当冒険者に引き渡した子だと思うわ。あっちの戦場から帰ってないわ……随分経つから多分もう………」
「エク………エクシア?お願い!向こうにあたしを助けてくれた少年がいるの!もう間に合わないかも知れないけど………それでも故郷に彼を返してあげたい……住み慣れた街に返してあげたいの!エクシアお願い彼の遺体を………」
「シャイン!何だお前………誰のこと言ってるんだ……希望の盾の回復師が何で此処にいるんだよ!!こんなところで何してんだよ!」
「ううう……ごめんなさい……多分あなたが探している少年と私を助けた少年は同一人物よ………彼はこの『高級ポーション」私に使って……助けてくれたの……瀕死だった私にこのポーションを飲ませてくれた無理矢理飲ませて生かしてくれた…………もうMPも無いのに…役に立たない私を……」
「アイツが死ぬはずない!規格外なんだ!アイツは!!規格外な大馬鹿野郎なっ…………くそ!見て来る!この目で!!見て確かめるまで信じない!」
「姉さん!一人で行くな!」
「テロル!エクシアと共に行け!無理はさせるな死なせるんじゃないぞ!二人共ちゃんともどれ!」
「姉さん俺も行くぜ!ソウマ、ユイナ、ミク、カナミお前達は此処にいろ伯爵様と男爵様のそばにいて何かあったら街まで逃がせ!いいな?」
そう言って、決心したように、ファイアフォックスのメンバーと輝きの旋風そしてテロルが戦場に赴く……戦場へ………
僕はテロルさんがくる前に、思いついた事があったので実験することにした。
アイスの魔法は結構効果があるのだこの魔獣には。だから氷系の魔法のアイスを大きくしたらウォータースピアのようになるんじゃないかと思ったのだ。
そして上空で作った氷の槍を自然落下させれば重力と自然落下のスピードで結構なダメージが行くのでは?と思ったのだ。
イメージはウォータースピアの氷版で槍先はドリル型だ道路の工事に使いそうなやつがイメージだ。
「ひとまず胸あたりでいいかな……あそこ岩みたいな鱗があるから壊しとけば戦士も楽だろうし……」
僕は独り言を言って試しにアイスと言おうとしたが、ウォータースピアに習って厨二病的センスで魔法を想像してみた。
「フロストランス!!」
大きな先がサメの歯状にギザギザになった氷柱が、上空から胸の鱗目掛けて落ちてくる。
当然掌から撃ち出す魔法なのだが、ちょっとした『ズル』をした。
起点となる部分に生活魔法のウォーターを放って水を生成したあとその水を凍らせてフロストランスを生成した。
うまく行くかわからないが物は試しでやったら見事に凍った。
魔法効果で凍った後そのまま自然落下で落ちてくる。射撃魔法の様な初速こそ無いがそこそこ上空なので勢いは付くはずだ。
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