第142話「二つ名が裏料理長……冒険者ちゃうやん!」
「ベラさん?良くありませんよ?そう言うのは……まぁ今までの貴女からの報告から今回は多めに見ますが……本来は審査減点対象です。」
「今回の審査時は全ての戦闘をそちらのピョウさんとムーロンさんが行ったので、評価点が足らないので戦闘が苦手だと判断された様ですよ?戦闘してないなら自業自得ですし、どんな場所かわからない場合でも戦える様に戦闘に不安があるのであれば基礎からやり直すべきです。」
「銅級冒険者は遊びではないので、各個人の戦闘結果を審査官が見なければ依頼がどこまで出せるかわからないんです。」
「リーダーとして指示するのは当然ですが、リーダーとして仲間を守るのも役目ですよ?3人で組むパーティーであれば貴方が抜けたら彼等はその分戦闘をしないといけません。」
「そうすれば大怪我を負うかもしれません…そうなったら貴方は大切な指示を受ける側の仲間を失うんです。分かりましたか?『豪剣のベロロア』さん」
「あと皆さん二つ名はあってもいいと思いますよ?既に私たちの間ではそれで通ってますから。それに私が親しくさせて戴いている冒険者と仲良くされている方も二つ名を持ってますから……ね?ヒロさん」
「そうですね。紅蓮のエクシアって言われてますもんね!エクシアさんは。」
「だな!いいんじゃない?私の場合は『勝手に周りが呼んでるだけ』だがな……まぁ気に入ってるけどね!」
僕がそう言うとベロロアはビックリした表情で顔を上げると、エール片手にエクシアが串焼肉を頬張りながらクッチャクッチャしていた……この人は一体どこからそんなものを…
「私が言いたいのはエクシアさんもそうですが……あなたの事ですよ?」
「え?」
「え?本当に自覚ないんですか?今このギルドで呼ばれてる貴方の二つ名は……踊るホーンラビット亭の『裏料理長』ヒロさん……貴方ですよ?」
「「「「……………」」」」
笑いを堪えるユイナとミクにカナミ……ソウマはもう『ブフ』ともらしている……
しかしその空気をいっぺんにぶち壊したのがこの男だった……
「その通りです!ヒロ様は我が店の『裏料理長』であり『幹部』です!!その座は絶対に揺らぐ事はありません!!」
「エクシア様〜1日にめでたいことが2件!!コレはお祝いですよ!我がホーンラビット亭最高の料理で祝福させて頂きます!もちろん全て此方持ちで。」
「私ことビラッツはヒロさんの銅級冒険者昇格試験を全力で応援させて頂きたい!腹一杯肉を食べて!明日に備えていただきましょう!そしてタバサさんの昇格祝い!銅級冒険者タバサ爆誕の祝いを!!」
「今すぐホーンラビット亭に戻りまして用意致しますので!ファイアフォックスの皆様にヒロ様パーティーの皆様!そしてタバサ様と連動パーティーを組んだお仲間様!是非是非いらしてください!今日は全部我が店持ちでお祝いさせて頂きます!」
「支配人として料理長に用意させますから!木の20刻にはお店へいらして下さいね!
これに喜んだタバサのパーティーは勿論、連合を組んだレベッカのパーティーガッツポーズで喜んでいた。タダ飯が食えるエクシアは飛んでギルドに帰っていった多分ロズ達を全員連れて行くのだろう……タバサを祝いたいと言っていたので元々何かを考えてここに来たはずだ。
そして僕は世話になっているミオさんとメイフィさんを誘う事をビラッツに言うと、二人は抱き合って喜んでいたがサブマスターに怒られてシュンとしていた……タバサの二の舞だ……。
ビラッツはできる男なのは一目瞭然だ、ミオとメイフィが来やすいように『お祝いお膳』をギルド職員分持ち込むと言い始めて周りの受付嬢が大騒ぎになりサブマスターは多数決で絶対敗者になった。
ゴリ押ししたのはなんとバラスだった……多分見返りに家族分をビラッツへ請求するのだろう。
なので一番のやり手はバラスと言うことになる。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「タバサの銅級冒険者昇格にヒロの最速銅級昇格試験おめでとーーーー!かんぱ〜い!」
エクシアの乾杯の音頭で始まったが僕の昇格試験はこのジェムズマインの街始まって以来最速だったらしい。
これについては銅級冒険者の中でも話題になり凄く目立ってしまった……。
なるべくこの街で目立たない様にするつもりが、最速昇格試験の時点で無理でしか無いワザと失敗するのはどうだろうとエクシアに相談したが、既に意味が無いだろうと言われた。
受かれば祝いになり、失敗すればそれは本番に弱い力のない冒険者として話題になる。
後者の場合は、ギルドからの依頼や周りの印象に大きく関係するするだけマイナス面が大きすぎるだろうとの事だった。
ただ言ったところで銅級に最速で上がるだけなので、その後大人しくすれば結構早く忘れられるとの事だった。
それなりに実力をつければ結果目立つ事は避けられない上、僕たちがやろうとしている元の世界に戻る方法を探す時点で注視するものがいれば隠せないだろうとは思っていた。
それに僕達をこの世界に連れ込んだ『誰か』はそのうち僕らを『訪ねて』くるはずだ……
その時どうにかなる力を少しでも付けておかなければならない。
最低でもあの『狭間』と呼ばれた場所にいる女性の魔法位はかわすか防げなければダメなはずだ。
「まぁ……思うところはあるにしても今は喜べ!一歩前進じゃ無いか!」
「だな!あまり目立つなよ?」
「なんで目立っちゃダメなんすか?ロズ師匠!」
「そりゃ簡単な話だ!目立てば敵対心を煽るだろう?俺たちの敵は『人間』じゃない!魔物だろう?」
「「「「「うぉぉぉぉカッコいい!!」」」」
「ロズ師匠!俺も頑張ってその言葉が言える冒険者になります!」
「いやコイツまだ銅級だから……お前達が頑張れば追い抜けるぞ?」
「ちょっと!エク姉さん!今くらいはカッコつけさせて下さいよ!!」
ファイアフォックスのメンバーは酒を飲んでいるが酔わない様に気を遣っているのは一目で分かった。
状況知っているホーンラビット亭の支配人も給仕も酒を勧めるのは銅級冒険者に上がった『新人冒険者』をメインに進めていた。
そんな中エクシアだけががぱがぱ飲んでいた。
「メッチャ美味い肉に酒!タバサ様のおかげです!」
「「「「「あざまーーーす」」」」」
「なぁなんでタバサがタバサ様なんだ?」
「凄かったんです!俺がゴブリン2匹を支えられない状態になった時シールドでゴブリンの顔面叩いた後前蹴りで1匹を蹴り飛ばし、振り向きざまにゴブリンの首チョンパ!起き上がってくるゴブリン目掛けて持ってたショートソード投げて頭に一撃」
「あれは凄かったわー!マジ惚れた!タバサが男だったらもう絶対猛アタックする!」
「ワテクシはロズさんとベンさんの特訓で教えてもらったことをしただけですーーーー!!」
「タバサ!シールドバッシュ決めたのか!盾講師として鼻が高いぞ!」
「タバサ!ショートソード投擲でゴブリン仕留めたか!ちゃんと予備の剣は構えたか?」
「ハイであります!ちゃんとすぐに腰にあったダガーを構えました!」
「うむ!敵が他にいない事を確認してからちゃんと投げるんだぞ?じゃないと怪我じゃ済まんからな!お前さんは俺と違って二本持ちじゃ無いからな!」
途中からタバサを鍛えたロズとベンの自慢話になったが新人にしてみればファイアフォックスのメンバーは憧れだったので同じ銅級でも他の冒険者とは格が違う様だ。
宴会は料理長の作るホーンラビット生姜焼きと柔らか焼きが飛ぶ様に無くなった。ここの料理を食べることなど彼等的には夢のまた夢だった様で、食べては『うーーまーーい』と絶叫する姿が料理長とコック達の心をチクチクしたらしく、どんどん追加肉を皿に盛られていた。
彼等は蛸部屋に宿泊しているらしく、お互いの存在は知っていたが今日まで話した事がなかったらしい。しかし今日の冒険でお互いの距離感も完全に無くなった、昇格試験でずっと面倒見てくれたタバサに感謝してこれから常にこのメンバーでパーティーを組むそうだ。
彼等はパーティーを自分から今まで組んだことがなく、タバサの『銅級試験に為に一緒にダンジョン潜る人募集します〜!5人前衛多めでお願いします〜』のエクシアのやった様な大声募集で彼等は集まったらしい。
皆が5名?と思ったが自分から相手を探せない5人はタバサに話しかけるしかなかった様で、話した結果タバサは『やらかしタイプ』だと全員が思ったらしい。
皆の、昇格試験は3人1グループのはずだと言われた事でミオの説明を思い出したタバサは、あわあわしながら『連合で前衛戦士をチェンジさせよう何時も連合でヒロさんがやってます!』とタバサが言ったらしく……皆は試験でそんな事やっていいのか?と話になったが、タバサがトレンチのダンジョン前に控えてるギルド職員に急に突撃して直接聞いたらしい。
ギルド職員は『連合を組む事で違反は無い。よく思いついたな?そこの子が言い出した事はさっきから聴いていた。名前を聞いても?』と言う感じになってタバサが答えたところ『君は素直でよろしい!よく気がついたね!今のそれは加点対象だ。君たち頑張りたまえ』と褒められたらしい。
この時点で彼等はタバサに感謝しかなかったらしいが、当のタバサはリーダー決定の報告でモジモジしているのでガジュ♂とレベッカ♀はこれ以上負担を掛けまいとリーダーを買って出たらしい。
これが彼等の集まった流れだ。そして、これから自分たちが目指すは僕達だとあの熱い報告をしたガジュが言っていた。
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