第137話「タバサの災難」

そうしてると少しばかり空気のようになっていたミオが……


「オッホン!!えーーーヒロ様!!!レガント様!各自報告お願いします!ヒ・ロ・様から!お願いします。」


 エクシアと話していたら突然ミオさんが力強く言ってきたのですぐに受付に向かい報告処理をする…魔石は依頼クリアの最低数の報告なのでかなりミオさんから聞き直されたが僕から報告したので早い者勝ちだ!


 ギルドで目立ってはならないので、後でレガントに謝ろう。


 少なくとも銅級冒険者が集まっている今現状では、とてもじゃないが今日の討伐内容は全てレガントに押し付けるしかない!


 ミオはその報告を何度も聞き直すが、サブマスターがそれを見て何やら耳元で話すとそこからは聞き直すことは無くなった。


 僕は報告が終わったはその足でバラスさんの解体窓口に行って引き取りの蜘蛛素材の個数を聞くと、レガントと話した件を使えると蜘蛛素材は僕のパーティー全員が大嫌いだと理解してくれた。


「分かったぞぃ…蜘蛛はリーバスに譲るんじゃな?他のは折半でいいんじゃな?……ほう…薬草払い!面白い事を思いつくな……と言うことはお前さんのパーティーは安定型じゃな!レガントにはワシから伝えておくから安心せい。」


 そんな話をバラスとして戻るとレガントがミオさんに呼ばれた様で説明にしどろもどろだった……暫くはレガントがミオさんに聞き直す羽目になりその都度僕の方に向き直っては頭を下げていた……。


 レガントの報告は結構長かった…理由はゴブリンの群れ2つ分の討伐報告を伴ったので仕方ないが、それを押し付けたのは僕なので申し訳ないとしか言えなかった。


 そうこうしているとタバサが5人の仲間を伴いギルドに戻ってくる……もちろんタバサが一番後ろなのは言うまでもない。


「報告させていただきます!初心者迷宮であるトレンチ(溝)のダンジョンの階層チェックに関して、パーティーメンバー全員分完了したので報告させていただきます!」


 結構な大声で初心者丸出しの冒険者だが真っ直ぐ感が伝わってくる。


「3名2連合パーティーにて連合リーダーのタバサと、第二パーティーリーダーのレベッカにて各チェックポイントを通過後5F階層フロアボスのホブゴブリン及びゴブリンウォリアー18匹の討伐に成功しました!」


 銅級冒険者からざわめきが起こる…


「また出たよ…5F討伐…これは減点確定だな…」


「毎年出るよな……でも飽きさせない定例会みたいで俺は好きだぜ!あんな真っ直ぐな馬鹿だったらお前のパーティーにいいだろう?」


「馬鹿言うなよ!嘘吐きは身を滅ぼすんだぜ!でも面白いから好きだがな……割とこの手の嘘つく奴は受け入れやすい馬鹿だからな…」


 そんな言葉が銅級冒険者から上がるが……報告している男の内容を聞いた次の瞬間歓声に変わる。


「コレが5F討伐時のフロアボスドロップの宝箱です!『ダンジョンで開けてしまうと証拠がなくなるのでギルドで開けてもらうことで証拠になる』とリーダーの発言で!持ち帰りました!」


 男性冒険者その発言で一瞬静まり返ったが……一斉に窓口に押し寄せる銅級冒険者たち…


「マジか!お前たち!とうとう偉業を成し遂げたな。報告してたお前〜確か名前が……タバサだったか?冒険者として有能だぞ!よくやった!」



「駆け出しが5Fフロアボス撃破か!おい戦士だよな!タバサと言ったな。お前さん俺のパーティーに遊びに来い!一緒に潜ろうぜ!」


 全員報告者がタバサだと勘違いしているが、一番後ろの小さくなっているのがタバサなのだが…何故あんなに小さくなっているのだろうか?


「タバサさん?後ろで口を挟まないようですが……総合リーダーなんですよね?何故自分で報告しないのですか?」


 ミオの発言でタバサが報告者だと思っている銅級冒険者全員が頭に?マークが浮かぶ………


「あのぉ……私達の最初のリーダーはガジュさんなのです……でも途中で皆さんが何故か私にリーダーを……と言われて……でもダンジョン入場時のリーダーがガジュさんなので報告はガジュさんなのです……」


 エクシア含めて銅級冒険者は皆合点がいった……銅級冒険者になれば理由が分かるのだが、初心者ダンジョンはトレンチ(溝)のダンジョンと言うのだが、冒険者が入る前に登録が必要なのだ。


 万が一帰ってこない場合、誰がダンジョンで命を落としたのかそれを確認する為にも絶対必要な項目なのだ……唯一の例外は未確認のダンジョンでたまたま発見したダンジョン以外はギルドで入場が管理される。


 今まで知られていない未確認のダンジョン以外はこうやって中に入る人間を事細かく確認しているのだが、命知らずの冒険者は未確認ダンジョンに平気で入り帰ってこない……理由は簡単で未開のダンジョンはそれなりの報酬があるからだ。


 タバサの発言を聞いた冒険者からは声が上がらなかった…ミオが訪ねた『タバサと言う冒険者』は一番後ろでモジモジしていた女の子だとは全員が思ってなかったからだ。


「自分が代わりに報告します!タバサ様は素晴らしい盾捌きで皆を救い、的確な指示で魔物を駆除しました!誰よりも早く戦闘の最前線に立ち攻撃をいなして我々戦士に闘い方を教えてくれました!」


「実戦に勝る物はなし!その都度剣の使い方に盾の使い方、有効に後ろに流す方法!リーダー以外の何者でもないです!彼女こそ戦女神バルキリーです!」



「怪我をするたびに塗り薬ですぐに癒すように指示を出し、無駄に突っ込まないように自分に戦闘の基礎を教えてくれました!」



「自分が5Fのフロアボスのトドメを刺せたのはタバサ様の教えがあった為です!」



「ふえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!違いますーーーーーーー全てヒロさんとソウマさんの受け売りなんですってーーーーー何度言えばわかるんですかぁぁぁぁぁ」


 原因はソウマさんだった……

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