第136話「サブマスター・デーガン感激!ミオの激怒」

しかし実際はミクが話し始めるより早く話し出す人がいた。



「確かに『クラスやスキル』に関しては必要に応じて開示するのは当然ですが、ミクさんの言う通りギルド内や街中で言われるのは評価の減点対象ですよ?皆さん」



「自分が意図しないところで、知られてはいけない人に伝わるものですから……そう言う話は……万が一薬師を必要としている人が『冒険者』としてでは無い場合ミーナさんはどうしますか?言葉巧みに連れ出して『軟禁』と言うことも考えられますよ?」



「過去に薬師の駆け出し冒険者に朝から晩まで傷薬を作らせると言う事例もあります。その方は残念ですが足の腱が切断されており冒険者としてはもう活躍できない状態でした。冒険に欠かせない回復役の希少役職の方は特に注意してください」



「リーバスさんが多分今欲しがっているジャイアントスパイダーの全装備を手に入れた場合、万が一それを狙う輩に冒険を持ちかけられ一緒に行動した場合……言いずらいですがダンジョンや魔の森から五体満足に帰って来れるとは限らないでしょう?悪漢に襲われた上に傷付いた身体で魔物とも戦うんですよ?」



「初心者講習で話しましたが、『必要に応じて』と言うのは『パーティー』を組む場合であり、その知りうる対象は『絞って』下さいね」



「冒険者ギルド窓口はパーティー募集も出来る窓口でもあるんです。個人で集めるのも一つの手ですが基本はギルドに頼る様にして下さいね。万が一『採用した冒険者が嘘をついている場合』もあるんですから」



「ギルド窓口に来た冒険者は、細かく以前の活躍を調べます。以前問題を起こしてないか、冒険にでた場合の死傷率、クラスに開示可能なスキル、他にも様々です。その中から相応しい冒険者を紹介するんです。なのでクラスやスキルの情報がが安全に保たれます」



「上級の冒険者を目指す言うことはそう言う事です……と言うわけで皆様お待たせ致しました。」



 僕はミオさんの説明を聞いて『ギルドの番犬』を思い出した……仲間の一人が魔の森でアンデッドになったギルドで、その原因が裏切りだった……ギルドの仲間も持ち得ないスキルを登録したりと滅茶苦茶だったのだ。



 その所為で、男爵は娘を危険に晒し、男爵夫人は危うく死にかけた。



 その事を思い出した僕はつい言葉に出していた。




「皆さん!クラスとスキルは要注意なんです!つい先日とあるギルドが問題を起こしました……その結果苦しんだ人間が沢山いるんです!」



「冒険者が今この街に少なくなって居ない事を悪用している輩も居るんです。自己防衛が出来なくなった依頼人や冒険者から狙われます……特に傷を癒す事ができる役職者はいつ何があっても不思議ではないんです。」



「僕達はまだ駆け出しですが……狙う側には関係ないはずです。大切な人を守るために……故郷に帰るために……失った家族の弔いの為……理由はそれぞれですが、それ以前に危険に晒されてる人を守るのが冒険者なはずです。」



「その為にはまず自分を守れる力を養う!悪い奴に絶対に利用なんかされない!絶対に死んでなんかやらない!!その為に……」



 誰にも負けない力……共に歩いていく仲間を手に入れる事…と言いかけた時にサブマスターが大声で………


「素晴らしい!!そうだ!安全に確実に!!何があってもに生き残れ!死んでなんかやるな!駆け出し諸君!!何があっても死なない事!見捨てない事!!それが冒険者だ!!!」



「デーガン・サブマスター!!何拍手してるんですか!メイフィィ手伝って!このダメサブマスターを後ろに下げて!!すぐに部屋に放り込んで!ギルドの恥よ!」



 言いたい事をすり替えられた………



 すごい拍手喝采で周りの冒険者も拍手する始末…突然沸き起こった拍手に銅級冒険者の区画にある2つの扉からも人が続々と覗きに来た…



「どうした?何があったんだ?」



「なんか聞いた話だと、あそこのミオ受付嬢の側にいる駆け出し冒険者が熱弁して、それに感動したデーガンさんが拍手喝采だってさ……」



 そんな会話がそこかしこで行われるなかエクシアが入ってくる。



「なんだ?どうした?なんで銅級冒険者がわざわざ駆け出し窓口に来てんだ?何があったんだ?……ってかなんでデーガンさん……泣きながら拍手してんだよ?」



「アレってばどうしたんだ?ヒロ?」



「あ!エクシアさん……今さっき僕……なんか熱弁しちゃって……そしたらサブマスターが感動してこうなっちゃって……デーガンさんって言うんですね……」



「エ……エクシアさん!なんでこんな所に!自分はリーバスと言います!エクシアさんに憧れて戦士になりました!」



 僕は一斉に銅級冒険者と周りの冒険者の視線を浴びる。



 すぐそばに居たレガントとリーバスが凄く緊張した顔で僕とエクシアさんの話に耳を傾けていたが、周りの銅級冒険者も興味津々で近寄ってくる。



「そろそろタバサがギルドに帰ってくる頃だろう?だからさ!1番におめでとうって言いたくてね…だから来てみたんだ……そしたらこの様だろ?気になるじゃんか……」



「んで……まだタバサ帰ってないのか?もう帰ってきてもいい頃だがねぇ?アイツなら一人ソロでも4Fくらいなら平気なんじゃね?」



「もしかして物足りなくて5Fのフロアボスに挑んでたりな……タバサなら一人で倒せると思うけどな…5Fのボス程度なら」



 問題発言を連発するエクシアに周りの駆け出しは顔が青ざめている……タバサを『オーク娘』呼ばわりしてたのに実はエクシアの知り合いで、その上初心者迷宮の5Fフロアボスを単独撃破なんか容易い……などと言われれば青くもなるのだろう。



 初心者がダンジョンの5Fクリアの事例など今まで一度もないのだから。



 しかしあの異常な回復薬が大量に生成できるタバサならゴリ押しで倒せるかも……とか思ってしまう。



「エクシアさん自分はゼロイックと言います。最近ヒロさんと一緒に狩りをさせて頂いてるんですが……その……タバサさんは単独で初心者迷宮の5Fフロアボスを倒せるんですか?」




「あん?ゼロイック?お前のことはタバサから聞いてるよ!レガントと同じパーティーだろう?さん付けなんか要らないよ…うちのタバサと仲良くしてくれてるんだ、タバサと同じ『姉さん』で良いよ!ちなみに彼女なら5Fくらい楽勝だ多分ソロで7Fまでは余裕だよ。」



 ちなみにタバサは『ねぇさん』などとは読んでない…お弁当事件からだいぶ遠慮した『エクシア姉さん』ではあるがだいぶ端折った感がある……

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