第55話「似た者同士レイカとヒナミ」

中で談笑の声が聞こえたので、ギルド職員も今入っても安全と判断して入ってきたようだ。




 ランクDの宝箱は罠のアラームがダンジョンの外で誤作動したようで、職員が入ってきたとピックとルーナは喜んでいた。



 ピックにしてみれば二回目なので、これは確証が得られた!と言い切っていて、今後もアラーム話は増えていくのだろう…この村の『洞窟がダンジョン』とか言わないかが心配だ。




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銅貨袋(100枚) 1袋

捻じ曲がった罠外しの低級鍵 1

+1ショートボウ 1

小波のワンド 1


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 3人で覗き込んで中身を確認する、僕は頭の中で口に出さず鑑定をかけると中身は先ほどとは比べようもない正にDランクと呼べそうな内容だった。


 Dランクだけに当たりは小波のワンドかと思ったが、シーフ的には捻じ曲がった罠外しのの低級鍵だった。




「おお!Dランクにしては良いもの出たな!さっきの箱に比べて数は少ないが当たりだよ。」



「確かにあたりね!でも数的には他のダンジョンに比べればかなり多い方だから気になる程でもないわよ?寧ろ他所より多いから後々少なく感じるんじゃないかしら?」



「Dランクからも捻じれた鍵出るんだな?色的にブロンズだから低級か。でもEとFランクの箱はコレで開けられるからめっけもんだな!色が銀だったらな!D迄は開けられたんだがコレばかりは運だからな。」



「そうね!シーフギルドのFランクの箱しか開けられない初心者用の捻じれた鍵よりは遥かに良いわね。」




「そんな物までシーフギルドには有るんですね!因みに、シーフギルドで買えるのって最高で何ランクの箱の鍵までですか?」




 シーフギルドには宝箱を開ける鍵が存在したようだ。


 それはどのランクまで存在するのか気になったので率直に聞いて見ることにした。




「まぁ、売っているその手の鍵はすぐに買い手がつくから必ずあるわけじゃ無いぞ?運が良ければ出会える程度だが、Aランクまでは売ってるのを見たが、まぁなんせ高いぞ!まぁ貴族様なら金に糸目つけなければ買えるだろうけどな。」



「私もAより上は見たことがないわね。出てもたまたま売れちゃったのかは分からないけど……ピックが言ってたように何にせよ高くて買えないけどね。高ランクはシーフギルド以外にも稀に王都とか帝都のオークションに出てたりの話を聞くわ。Bランクはシーフギルド脚繁く通えばそのうち手に入るはずよ。」



「Bランクの金額は街によって異なるけど、金貨で80枚から150枚くらいかしら?だからかなり高額よ。まぁ宝箱を安全に開ける鍵だから金貨100枚くらいなら命をかけて開けるよりは安いわよね。」



 鍵一つで元の世界換算で80万から150万……僕には大金すぎてとてもじゃないけれど手が出せないと思ったら、僕は既に換算金額で500万以上の金貨を持っていたことの気がついた。



 僕は一通り解錠が終わったので、お礼を言って何か欲しいものあるか聞いたら2人に断られた。



 冒険者として、自分のパーティーで手に入れたものをちゃんと分配するのがまともな冒険者で、おこぼれを貰う様になると終わりらしい。



 貰うことが癖になって努力を怠りそのうち冒険をしなくなり身を持ち崩すらしい。



 なので勘繰られた件についてだけ、当初の貴族効果の発動をしてルーナには飴ちゃん攻撃で口封じをしよう…ピックに口止め料金貨一枚で飯でも食ってと言ったら「俺も飴が欲しいっす!」と言われて飴になった。



 2人とも飴は宝物とは別で考えている様で、何個でも素直に受け取る様だ。



 結果2人とも喜んでいたので、多めに渡して3人で飴を食べながらその場を後にした。



 ヒナミはその頃、村の武器屋で冒険者が買う初心者セットを購入して居たが、僕等と一緒に居なかったので飴をもらい損ねた事を店を出てばったり会った事で知って悲痛な顔をしたので一個あげたら何故か宿屋に荷物を置きに戻らずそのまま僕等に付いてきた。



 ルーナとピックにヒナミを加えて軟膏と傷薬を買いに村の広場に向かうと、今度は何故か半ベソのレイカがエクシア達に慰められていた…。


 レイカに昨日あげた飴は、既に昨日の夜のうちに食べ終わったらしく僕を探し回っていた様だ。


 見つけられず、たまたま広場にいた結菜と美香とそうまに飴を貰った所に運悪くマッコリーニに遭遇し、それはそれは怒られたそうで現在半ベソ中らしい。


 仕方ないのでレイカが泣き止む様に多めに飴をあげると、どうやらヒナミも昨日食べ終わっていた様で先程と同じくらい悲痛な顔だったので多めにあげた上で、机の上に袋を破いて残りを全て置き皆で食べる分とした。


 レイカとヒナミは似た性格なのだろう……貰った分はしっかりポケットにしまい込んで2人揃って机の上の飴ちゃんを食べていた。


 美香と結菜そしてレイカのお付きとエクシアも軟膏や傷薬を作る中、レイカとヒナミの2人はほのぼの仲良く話して日向ぼっこしている。


 このほのぼの感を見たら決してS級冒険者とは思わないはずだ。



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 水冷祭が終わった翌日、ファイアフォックスと3組のパーティーは昼前にはそれぞれの目的地に向けて村を出発する予定だった。


 本当は朝早くからファイアフォックスを除く3つのパーティーはそれぞれの依頼の目的地に向かう予定だったが、前日に急な水冷祭になり村人に歓迎された為に抜けるわけにもいかず……結果、祭りは深夜まで騒いでいた為に3組とも出る時間を昼前にずらす事になる。


 そもそもこの3つのパーティーがこの街に居合わせた理由だが、3組ともジェムズマインの街営ギルドから依頼を受けているのだ。


 日数に余裕がある依頼だった為にファイアフォックスの集団討伐依頼を受ける為に必要な書類をもらう為に偶然この村に寄ったのだ。


 この事自体はさほど珍しい事ではなく目的が似通ってる以上、割と同じような状態になるパーティーは少なくない。


 村に着いてみると、そのファイアフォックスのメンバーが村に滞在していた為、偶然同じようにそれぞれのパーティーが話し合い、知り合いになるきっかけ作りに滞在数を伸ばそうと決め酒場に入り浸っていたのだった。



 この彼らの行動が運命を左右した…。



 そのファイアフォックスに問題が起きたのだった…コレはチャンスだと思ったそれぞれのパーティーは早速手助けを買って出た結果…そのまさかのチャンスに恵まれて、知り合いだけに留まらずギルドメンバーになるテストまで取り付け現在に至るわけだ。



 しかしながら、彼らの宿泊数は予定より2日ほど押していた…依頼をこなすには問題はないがこの先も問題が起こらないとは限らない…ファイアフォックスのメンバーになる可能性が出来ただけに、『問題を解決せずに去る』などという悪評は避けたいのだ。



 なので少しでも早く目的地の依頼を確実にこなし、ジェムズマインにお互い帰ろう!と言うことで三組のリーダーが決めたのだった。



 その三組のパーティーは、皆早めに旅支度をした後暫しの別れの為に村の食堂で一緒に飯を食っていた。



「皆!ギルドで受けた依頼をちゃんとこなし、ジェムズマインのファイアフォックスのギルドでまた会おう!このファイアフォックスに頂いた素晴らしい一級品装備に恥じない行動をしよう!」



 そう、スノウベアーのリーダーが鑑定が済んだと思われる装備を見せながら飯屋で演説していたときに、僕はお店に入ってしまった様だ…。

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