第53話「宝箱のアラームを街で鳴らすと来るのはオッサン?」
そして宝箱の罠を再確認して僕はふとした事が気になった、『アラーム』の罠だ。
これは魔物を呼ぶ罠だが、この場所で起動したら魔物が来たりしないのだろうか?
2人は武器もないが……まぁ最悪今の僕は魔法が使えるので、敵次第だがスライムや大蝙蝠くらいなら大丈夫だろう。
…と思い部屋の天井を見上げると入ってきた建物の規模の割には天井が遥か上にある事がわかった。
彼らが罠の種類や危険性を忘れているとは思えないが、念のため質問する。
「所でアラームって罠があると思うのですが、それって魔物を呼ぶ罠ですよね?あの洞窟でうっかり鳴らしてしまったんですが、此処ではどうなるんでしょう?」
「あー確かにあるわな!アレ鳴らしたのか!魔物ワンサカきたりするから面倒くさいけど、経験値稼ぎとか新しい宝箱とか討伐部位稼ぎには持ってこいだぜ?前その箱をギルドのこの部屋に持ち込んで開けたら直後に偶然職員が来て皆で笑ったぞ!アラームは職員呼ぶんだって!」
「ピック……多分それ質問の答えでは無いと思うよ。この部屋で鳴らしたらどうなるかよね?結果から言うとね。魔物は来ないし、そもそも発動はしないわよ?」
「あの罠が魔物を呼ぶのは『ダンジョンの殺意から来るものだから外では鳴らないとされている』と『単純に魔物が自然発生しない外では来ないだけ』と言う説があるわ。」
「魔の森や魔物が徘徊する荒野で試した人はいないけど…少なくともダンジョンから持ち帰れば事故なく開けられるわよ。」
「そしてね、万が一アラーム系の罠をダンジョンから持ち帰ってもギルドのこの部屋以外で開けるのは禁止されているわ。と言うか…言い方がアレね!アラームに関わらず宝箱はギルドのこの部屋のみ開封が許されているのよ。それに違反した場合は冒険者身分の抹消に冒険者危険行為違反で投獄もしくは罰金となるわ。」
「そういえば昨日のロズさんの話では、あなた方はこれから冒険者登録をするのよね?だから冒険者心得を知らなくても当たり前ね!」
「貴族なのに冒険者……と言うかトレジャーハンター?に執着する奇特な人が居るって聴いた事があって…まさか!地位があるのに!…って思ってたけど本当の話だったのね!嫌味じゃ無いのよ?親近感が湧くとても良い貴族って感じで私は大好きよ!そう言うの!」
「前に貴族の家では魔法の才がある子息には、かなり上位の魔導師が教えに来るって聞いた事があるけど…此処まで凄い魔法を使いこなせる貴族様に逢うのは初めてよ。トレジャーハンター目指すより王宮魔術師とか目指す気はなかったの?」
ピックは脳筋に近いのかもしれない…スノウベアーの他のメンバーと同じように質問の答えが実に明後日の方向だった…。
宝箱を大量に机に並べた事もありルーナには…僕はトレジャーハンターを目指す奇特な貴族の子息と思われたようだが、トレジャーハンターも王宮魔術師も目指してない…目指しているのは元の世界への入り口だ。
「はははは…宮廷魔術師は目指しませんね…僕はこの世界を歩き回って、絶対に探さないといけないものがあるんです!今のところ何の手掛かりも無いですが。それに貴族ってわけでも……」
「何だ!何だ!宝の匂いがするな〜まぁ言い難い状況なのは理解した。貴族と言っても訳有りだって沢山いるしな。」
「ちょっとピック!そう言う情報は同じパーティーの仲間以外には知らせないものよ?それに万が一貴族の家に伝わる物だったら尚更よ?」
「でも、もし困ったら相談してね!何か力になれるように頑張ってみるわ!私も…って言っても今はファイアフォックスのギルドメンバーに加えて貰えるように頑張らないとだけどね?お互い。」
「そうだな!手伝うにも同じギルドのメンバーにならないと情報共有もあったもんじゃ無いもんな!お互いファイアフォックスのメンバー目指して頑張ろうぜ!まぁアンタのことなら余裕だろうし、あの魔法でどのギルドでも引っ張りだこだろうけどな!」
「いえいえ!ぜひ力を貸してください!って言うより今も既に宝箱開けたりして貰ってますけどね。」
「「そうだった!」」
3人で笑いながらも今の話から僕は自分の仲間についての欠点に気がついてしまった…今の秘密を守り抜く場合…ヒナミを含めた異世界の5人組で冒険者として必要な全てを賄う必要があり、助けを求める場合は大切な仲間の万が一に備える必要がある…
この世界で仲間になった人を、向こうに連れて行き僕等の様な思いはさせられない…と言うことだ。
僕らの居た世界ではこっちの様な暮らし方ができない…冒険者ランクもなく、魔法もスキルも無く、魔物を倒して生活費を稼ぐ冒険者など向こうには存在しない…ファンタジー世界では無いのだから………
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
僕らは世間話を一通り終えていよいよ解錠にかかる。
ガチャリ…ギギギギギギ…
石造りの部屋に響く宝箱が開く音…今開けているのはA+ランクの宝箱で毒矢がかかってる(階層主からの褒賞) だった。
ただし箱については今解錠しているピックには告げていない、エクシアに前聞いた話では鑑定の巻物で鑑定した場合箱名までは分からないそうだ。
ピックの腕は銅級だが、確実に罠を見抜き開け方も的確だった。
「シーフギルドだったらもっと簡単に開けられるシーフ道具が常備されてるんだがな…まぁシーフギルドは街位の規模じゃ無いとないからな…まぁ毒矢ぐらい何とも無いが流石に人の箱だと緊張したな。」
「呪物の見分けが効くんだよな?呪われていないか見るか?ギルドに頼めば呪いも含めて鑑定してくれるぞ?金はかかるけどなー。マッコリー二さんに頼めば安く鑑定してくれるんじゃないか?お気に入りって感じがするしなオマエさん!」
そう言われて開けた物を覗き込み片っ端から鑑定をかける。
下に埋もれているものは鑑定後のものを退かしつつ鑑定をかけていくが、急に僕が手を入れて物を掴んでは出すのでとてもピックがビックリする。
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
金貨袋(150枚) 1袋
高級ポーション 2
小鬼族の金棒(回数3) 1
小人族の靴(回数5) 1
水夫の釣竿 1
水眷属の祭器(回数3) 1
龍木 3
テンテン草 3
転身の指輪(回数5) 1
+4イヤリング
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
机に並べるとなかなかの内容物だった様で、2人が声を上げる。
「鑑定しないと分からないがなかなか良い物っぽいな!少なくとも金貨袋とポーションは大当たりだしな!ポーションは買取額も高いし、なかなかな宝箱だったな!」
「ポーションって高く売れるんですか?」
僕はポーション類はRPGゲームの安い消耗品のイメージがあり、異世界でも同じだろうと思いあまり金額は期待していなかった。
「あ!そうか!初心者講習受けてなかったんだったな!貴族だとお抱えの入手ルートがあるんだろう?多分今までは高級だって入手なんて気にならないだろうけど、これからは覚えといた方がいいぜ!」
「ポーションは普通のポーションは店売りでたまに並ぶくらいで、中級は一月に数個並べば御の字、高級まぁ売りに出ないな…万が一売った場合は地方に小さな家が買える位の金額になるぜ。ポーション5個もあればそれなりに大きい街でも小さいながらも4〜5人程度なら何とか暮らせる拠点になる場所が買えるくらいだからな。だからこそ手に入れるのも至難の技だけどな。」
「ポーションの売値は金貨100枚はざらだ!戦争で品薄の時は150まで上がったの見たぜ!」
僕の知っている世界の金額に換算すれば、金貨500枚で5百万円…それで4〜5人が暮らせる部屋が買えるらしい、この村だと幾らくらいだろうか?
そして何より、ポーションは一個100万から高い時で150万で買ってくれるらしい…確かに長閑な地方なら家も買えそうな気もする。
この世界は異世界で道路の舗装さえされていない…田舎の土地はそれはそれは安いのだろう。
==登場人物・用語集==
『精霊』
モンブラン(性別不明) (聖樹の精霊)
水っ娘ノーネーム(水の精霊)
『ギルド』
ギルド・ファイアフォックス ギルド等級 銀3級
紅蓮のエクシア R「ギルドマスター」♀ (銀級2位)
ロズ(戦士・タンク)♂銅級3
ベン(戦士)♂銅級3
ベロニカ(弓使い)♀銀級3
ゲオル(魔法使い)♂銀級3
ザッハ「サブマスター」♂
リープ(事務員)♀
フィーナ(販売員)♀
ゴップ(解体担当)♂
マッコリーニ商団
パーム(妻)♀(店長)
レイカ♀(娘)
ハンス(執事)
御付き1♀
御付き2♀
売り子A♀
売り子B♀
売り子C♂
売り子D♂
水精霊の洞窟村
レン爺 (村長)♂
バフゥ (武器屋の親父)♂
飯屋の女将 ムイムイ♀
飯屋の料理人 ドムドン♂
飯屋の娘 メイメイ♀
冒険者パーティー
スノウ・ベアー
銅級4人組冒険者、R戦士(ショウ3位)、タンク(ペタ3位)、シーフ(ピック3位)、レンジャー(ゼム3位)
男4人標準パーティー
レッド・アイズ
銅級5人組冒険者、R戦士(ルーム3位)、タンク(バウ3位)、魔法使い(ゼムド3位)、回復師(ルーナ3位)、薬師(ミミ4位)
男3人、女性2人の回復特化パーティー
アイアン・タンク
銅級4人組冒険者、Rタンク(ダウ3位)、タンク(ガウ3位)、回復師(マウニー2位)、シーフ(ルーナ3位)
男2、女性2の重装型パーティー
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