第45話「回り出す歯車…世界の悪意に苦しめられた女の子」
村の人も何組か来ている様で口々に夕飯を注文する。
「ハンナさん。こっちはキノコ定食頼むよ!嫁はウサギ定食で、娘もウサギ定食の半分飯で!」
「こっちも頼むよ!俺はキノコマシマシ定食にウサギ追加できる?」
「珍し〜ね!アンタ達がここで飯食うなんて!家に飯ないのかい?」
「はいよ!ウサギは残念!品切れだ!そこの旦那で!」
「じゃあ、キノコマシマシマシでいいや!」
「はいよー!飯は大盛りにしておくよ!おまけだ!」
「違うんだよ!女将さん!例の食べ物作ったのが…どうやらあの人らしいんだよ!」
「そうなのさ!今日は何があっても此処で食わないと!乗り遅れちまう!」
「女将さん注文頼むよー」
「なんだって!そうなのかい!早く良いなよそれをアンタ!」
「ちょっと待ってなー!どうせ目的飯じゃないんだろ?」
「ちぃ!バレてやがる!まぁわからない方がヤベェか!ガハハハハハハ」
「なぁ!問題児の冒険お兄さん。実はさっきウルフジャーキーとか言うの頂いたんだけど。あれ美味いねー!作り方教えてくれないかい?」
「ウチの店にも日持ちするものを冒険者に卸せるしね!飯屋だけに!それに冬の間にも使えるだろ?頼むよ〜飲み物サービスするからさ!」
「女将さん飲み物代は私がすでに払ってますよ?飲み放題なはずですが?確か払ったのは……我が商団が…ホッホッホ…流石エクシアさんが育った村だ!商売がうまいなぁ!ホッホッホ」
「おう!もうすぐできるぞ!1番、2番、3番スライム芋煮と雪草サラダにゴブ茸スープ、メインはもうちょっと待ちだ!」
「ハイハイ!はいよー!ちょっと待ってなよ〜今持ってくるからね!」
僕は女将さんの言葉にはて?と思い考えていたら、美香が…
「すいません…あの……ジャーキーをレイカさんが食べたいと言って、ヒロさんを村中捜していたのでつい私が渡してしまったのです。そしたら村中に知れ渡ってしまい…」
「はぅぅう…お!お父様これは!これには訳が!」
モジモジするレイカにいきなり告げられたびっくり情報に驚きを隠せないマッコリー二。
「確かにあれは美味しかったわね!売り物でもおかしくないと思ったわ。」
「あれが酒場に出てた時、美味いから買ってかろうと思ったら、ヒロが作ったって聞いてびっくりしたよ!」
「俺も一回作ったことがあるけど、あそこまで成功しなかったな!これでもアウトドア好きなんだぜ?」
「あら!ヒロと違って見かけ通りの趣味ね〜そうまさんは!」
僕は成る程と思った。
「別に構いませんよ!フォレスト・ウルフを討伐して…若干とは言え肉を捨てるのが忍びなくて作った物ですし、生き物の命を奪うのですから美味しく頂いて供養しないと悪いじゃないですか?なんか食品ロスとかうちの家族煩かったから。」
「日持ちすれば無駄にならないし、小腹が空いたら食べれるじゃないですか?ジャーキー好きなんで。鮭穫れたら鮭とば作りたいですねー」
「よくキャンプとかキャンプエリアに友人といってたし、ボーイスカウト体験で作ったのがこのジャーキー体験だったんです。」
「川で釣った魚と卵とチーズをBBQでスモークしたり、友人と行きましたよ!」
「へぇ珍しいね!ヒロは若いのに食品ロス気にかけるんだね〜偉いと思うよ!」
「確かに!今の若い人だと口に合わずに捨てるとかよくやるからね!うちの会社の若いやつに言ってやりたいよ!」
「それに意外とアウトドア好きなんだね、最近の子みたいにゲームばかりかと思ったよ。」
「良いですね〜友達とBBQ。私は高校で軽音楽部やってたので合宿とか練習であまり行けませんでした」
「「「美香ちゃん軽音楽部なの!」」」
「はい!見えないですよね〜よく言われます」
「なんか…此処に来て一月もまだ経ってないんだよな〜不思議だよなー」
僕らは側にレイカとマッコリー二がいたのにうっかりしてたが、当の二人はと言うと……ジャーキーを食べ過ぎていたことが見つかり言い訳中のレイカと、街中を自由に歩き回るほど回復したレイカに1日どこを歩いたのか、どんな事をしたのかなど聴きまくる馬鹿親マッコリー二のお陰で助かった。
しかし迂闊だった……僕らの会話には現代用語が半端なく使われていた。
注意せねばと皆が思った時、そこに一人の女性が話しかけてきた。
「その話し方に中途半端な服装…も、もしかして…ちょ…ちょっと良いですか。」
僕の後ろから急に声をかけられてビックリして振り返ると、そこには美香ちゃんくらいの歳の可愛らしい女性が座って芋の煮付けを食べていた。
「それにしても……4人?も?皆さんは何処であったの?偶然出会ったの?いつ頃どこで逢えたの?」
「すいません急に話しかけて……変すぎますよね……警戒しますよね。でも聞いてください!」
「多分同じ出身地なんです……私はその……トウキョウと言えばわかりますか?」
「危害を加える気はないんです……ただ聴きたくて……向こうは今西暦何年なんですか?」
僕らは言葉を失った……僕の真後ろにまさかの『流れ』がいたのだ。
「僕は2020年11月にあなたと同じ東京から来ました。」
「私も同じです…」
「私も…」
「俺もだ…」
「えっ?………………2020年?」
あまりの驚き様に持っていた箸を落とす女性…そして僕はその驚きの意味がわからない。
「あなたは、いつ此処に?」
「私は…2020年…10月…どう言う事なの?本当に…2020年11月?…………2030じゃなくて?」
「なんだい!アンタら同郷だったのかい!なら一緒に飯食えば良いのに!」
そう言って丁度そこへ持ってきた料理を並べる女将さん。
そこに、村長を誘って飯屋にきたエクシアが到着した…
◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇
「お待たせーお待たせ!結局村長連れてこっちきた方が、積もる話もできるしって事で〜そんちょも連れてきたよ。」
「あたしの席は……っと向こうか!村長あっちだよ!」
「オオ!村長殿!良ければ私がどきましょう!此方にどうぞ!」
「いえいえ!マッコリー二さんが退かずとも私は端で結構ですよ!今日の主役を持て成すのはマッコリー二商団でございましょう?チャンスは掴む物ですぞ!」
「女将さん!私はキノコマシマシとスライム芋煮の小鉢、あと温かいお茶を頂けますか?」
「流石!エクシアさんの育った村だ!飯屋の女将も村長も!只者ではないですな!ホッホッホ」
「嫌だねーマッコリー二さん!今後ともご贔屓して貰うために冗談で盛り上げただけさね!」
「おや!エールが空だね!すぐ新しいの持ってくるよ!エクシアちゃんもエールだよね?まさか水ってこともないわね!メイメイ〜こっちにエール2杯大急ぎ!!」
「はーい!女将さん!いーまーすーぐー!」
「んで、何話してたんだいアンタら!まだ乾杯すんなよ!アタシのエールがきてないんだよ!」
話しながらも席につくとき、女性の顔を見てガタンっと飛び退くエクシア
「ちょい待ちな……アンタ……なんで此処に?」
エクシアの尋常じゃない素振りに一瞬で戦闘態勢に移るギルドメンバーに、村長とマッコリー二に庇われる様にレイカが机から剥がされる。
「ごめんなさい……ちょっと待ってもらって良いですか?銀級ギルド、ファイアフォックスのギルドマスター……エクシア・フレンジャーさん…」
「本当に今は……、ちょっと混乱していて……本当に申し訳ないです…」
「……」
女の子の言葉に黙るエクシア…その女の子はボソボソと呟いて顔は真っ青だ。
「10年よ!確かに10年……魔物を倒して……死ぬ思いをして10年………2020年?11月?1月しか経ってない?嘘でしょ!な……何………なんで…」
僕は徐にクロークから携帯電話を出してコッソリ電源を入れ、他の者には見えない様に僕の体を盾にしながら女の子に時計と日付の画面を見せる。
「ヒロ…何をして!」
エクシアが静止に入ろうとするが、僕は片手でそれを止める。
「な!なんでなの!嘘よ!誰か………嘘って言って!わたしは!私はこのクソッタレな世界を10年も彷徨ったのに!あっちは1月しか経ってない………そんな………パパ……ママ……うううう……」
僕を見てすがりつく女の子の悲痛な声が飯屋にこだまする。
僕は女の子にそっと耳打ちをして外で話すことにした…彼女は黙ってうなずき外に出る。
「そうまさん、エクシアさん、ちょっと…結菜さんと美香さんは皆を鎮めて飯にしてください。」
「ああ!わかった!、結菜さんと美香ちゃん、悪いが頼む!」
「わかったよ!ロズ!ベロニカ、マッコリー二さん!村長!すまないがこの場を頼むよ!」
「うん!大丈夫!こっちは任せて!」
「その子に!!気を落とさないでって言ってあげてください!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。