第40話「エクシア達の宝箱」

素材はすごい数だった。


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  G・オクトパスの吸盤

      素材

     等級:レア


  水棲魔物ジャイアント・

  オクトパスの吸盤。


     素材説明

  刺突攻撃を滑らせる防御

  効果に特化。

  稀にそれ刺突以外も滑ら

  せる場合がある。


    盾素材に使用

  剣撃・刺突・打撃を滑ら

  せ逸らす。


  矢、火矢、水魔法を滑ら

  せ逸らす。


    鎧素材に使用

  剣撃・打撃を逸らす事が

  ある。

  刺突を滑らせ逸らす。


   頭部装備素材に使用

  矢を滑らせ逸らす。



   特殊装備製作可能


 G・オクトパスの吸着ブーツ

  必要特定素材 吸盤2個


  鑑定レベル不足により不明


    製作可能職業

      鍛冶屋

   ブラック・スミス

鑑定レベル不足により不明


    製作可能ランク

 鑑定レベル不足により不明



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 僕はとりあえず部位のひとつだけを内容確認しつつ、エクシアさんの言葉にも耳を傾ける。


「じゃあ穢れた存在の討伐部位はヒロに、オクトパスの部位は各パーティーになるべく均等に渡すが、それは村に帰ってからにさせて貰うよ。」


「この階層で再誕した階層主とまた戦うには用意もできてないしね…」


 するとロズが余計なことを言う。


「まぁヒロ兄貴が居れば時間なんかかからないですよ!あの水魔法で即消滅っすよ!」


 3組のパーティーが向ける目線が痛い…。


 僕はエクシアに呼ばれて酷く穢れた存在の討伐部位を受け取り、他の素材もクロークに何気なくしまう。


 僕は先ほどから気になっていた精霊達に目をやる、今は人間達とは離れて真ん中の突き出た島の様な場所に皆居る。


 勿論モンブランも一緒だ…突き出た島までそこそこ距離があるが同じフロアであれば割と移動ができる様だ。


 僕はエクシアさんにその事を耳打ちして精霊のほうに向かおうとした所呼び止められた。


 エクシア達は自分達の宝箱の鑑定待ちして居た様だ…考えてみれば当然だ。


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金貨大袋(2500枚) 1袋

中級ポーション 3個

高級ポーション 3個

水精霊のショートボウ 1

水龍の斧 1

水鏡のカイトシールド 1

+5捻れた青宝珠の杖 1

+6ロングソード 1

+4スケイルメイル 1

水精霊の下級祭壇アンクレット 2

水精霊の特級祭壇ローブ(女性用) 1


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 日頃の行いだろうか…内容は大当たりもいい所だった。既に見た目で大当たりだと分かるレア装備だった。


「あ!姉さん!こんな!マジっすか!この盾…顔が写るっすよ!カイトシールドですよね?こんなのあるんだ…」


「見たこともない装備じゃ!捻れた杖に…青い宝珠が!」


「待て待て!アンタ達呪いの鑑定が先だ!…なんだこの大きな袋は…金貨袋?大袋か噂の!大袋か!」


「綺麗なショート・ボウ!青みがかって綺麗なショートボウだ!それ欲しい!」


「鎧と剣!鎧と剣!俺今片手の装備にガタが来てるんだよ!鎧と剣!」


 エクシアが興奮の余り(呪いの鑑定が先だ)といった言葉に焦るが運良く他のグループは近くには居なかった。


 しかし直ぐにエクシア達パーティーの興奮具合を見て、今後の予定を話し合ってた3組のパーティーが皆近寄ってくる。


 ファイアフォックスのギルド専用特別任務の許可をもらって大喜びの中、今後の予定を話し合ってたのだが…エクシア達の喜び方が尋常でなかったので気になった様だ。


「どうだい?ヒロ呪いは?」


「女性専用装備って…呪いの類と同系列ですか?それともそのまま専用って意味ですか?」


 そう言って一際煌びやかな、(水精霊の特級祭壇ローブ)を指差す。


「もし良ければ私が、念のため祝福かけましょうか?呪い装備なら…残念ですが消えて無くなるでしょうけど…」


 とても綺麗なローブを見ながら残念そうに言うマウニー。


「頼めるかい?多分女性専用ってだけだろうけど…念の為ね!装備が幾ら良くても命には変えられないよ!それに呪われてたら売るにも売れないしね。」


 詠唱をして祝福をかけるマウニー


 水精霊の特級祭壇ローブは祝福魔法を受けて消えるかと思いきや、ローブの波紋の模様全体が青白く光ながら動き始める。


「コレは…祝福を受け強化されたみたいだね…」


「呪われてはないですね…それどころか普通より力強さを感じます。」


「マウニーありがとうよ!コレは呪われてないわな。あと問題は誰がコレを着るかだな…」


 今ファイアフォックスで遠征に駆り出されている女性といえば、ギルマスのエクシアとレンジャーのベロニカしか居ないのだ。


 エクシア含めて目線がベロニカに集まる。


 接近戦をするエクシアがコレを着ても邪魔でしかない上、女性用のこのローブが似合いそうな…といえばベロニカだろうと目線が集まったが、レンジャーが目立つ上にローブってどうなのか⁉︎とベロニカは思いつつも…実は欲しかった。


 乙女である…当たり前だ。


「わ、私がレンジャーだってこと皆知ってるはずだよ!こんなひらひらで綺麗なの着てたら目立つでしょ!レンジャーなのに!」


 それを聞いた皆がワイワイ笑いながら話している間に、僕はベロニカさんに名称と水精霊の祭壇の意味をコッソリ耳打ちすると、凄い速さで(水精霊の特級祭壇ローブ)を抱え込んだので、あまりの転身ぶりに皆びっくりだった。


「こ、これは今この討伐部隊に居る女性では私がふさわしいわよね!エクシア姉さんは近接職種だし!レンジャーローブの話も聞いたことがあるので!だ…だから私が貰います!」


「エ…エクシア姉さんは、その龍のアクセントが入った斧が良いと思います!近接職だし!」


「ふーん…素直じゃないなー…私に斧勧めなくても〜欲しいなら欲しいといえばいいのに!このショートボウなんかアタシ貰っちゃおうかなー」


「ちょっと!エク姉さん!意地悪ですよ!弓とローブ両方欲しいです!」


「仕方ないな!持ってけ!泥棒!」


 何故かそう言ってロズがショートボウを投げて渡すと、ファイアフォックスメンバーは皆大爆笑だった。


 エクシア達は一先ず宝物の分配をするとのことで、他の3組も地上に上がってから一度エクシアと街に戻るか、今受けている依頼の為ひとつ先の村で依頼をこなしてから急いで街に戻るか話していたので、4組共にしばらくかかる様だった。


 僕は水精霊の達のところへ行こうと歩き出す。


 僕らが酷く穢れた存在と闘っていたのは、ちゃんとした足場が確保できる階段間近の場所だったので、地底湖の奥まで突き出した場所まで行くのにはちょっと歩く必要があった。


 僕がそちらに向かうと、美香と結菜とそうまが一緒に来たので、理由とここまでの経緯を説明する。


「実は…(かくかくしかじか)な事があって、その話の決着がまだどうなったか分からないんですよね。だから直接行こうかと思って。」


「水って消防士と深く関わりがあるから、俺かと思ったんだけどなー。それにしても、大ガエルとか巨大蝙蝠と激闘って…カエル戦闘は痺れてたら終わりだったじゃないか!」


「びっくりですよ!魔物は感知とか頼りすぎずに、結構離れてないと危ないですよ!多分あれは目視されて襲われたんだと思います。」


 男同士、戦闘話は割と華が咲くが、普通の女の子の美香と結菜にしてみれば怖い体験以外の何者でもない様だ。


 美香が…


「本当に無事で良かったです!それにしても凄い魔法でしたね!教えてもらった魔法…異世界!って感じですね。それに比べて私なんて今だに何も出来ず…私達本当に全員で無事に元の世界に帰れるのでしょうか?」


「美香ちゃん!ヒロシくんがその帰り方を調べるために、水の上級精霊と話をしに行くのよ。私達もいずれヒロシくんと同じ様に契約しないといけないかもだし!一緒に頑張りましょう!薬師の技術磨いて手伝わないと!」


 励ました結菜に美香が頷いて返す。


「美香さん大丈夫だよ、1人残したりしないから全員で無事帰って!そうまさんにモスデナルド奢ってもらいましょう!」


「マジか!俺が3人分か!じゃあBIGカエルマックを奢ってやる!」


「カエルはもう良いです…逆に食われそうなので!」


 僕たちのおふざけで美香に笑顔が戻る。


「皆さんと一緒に来て良かった!結菜さんにあの時…教えて貰わなかったらゾッとします。」


 そう…あの2人は今どうなっているのか…今の僕らでは想像すら出来なかった。


 でも僕は…


「あのサラリーマン自己中だし、似た者同士のオバさんも案外うまくやってるかもですよ?喧嘩しながら!」


「「それ思ってた!」」


 結菜とそうまの声が被りさらに僕と美香が笑い出す。


 そんな話をしていたら、精霊達まであと僅かと言う場所まで近づいていた…

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