第29話「奥深い鑑定」

それから、下に降りるなだらかな傾斜まで戻り2階層に降りると、水の精霊の力を借りながら次々と魔物と戦う羽目になった。



 殆どは、ペットボトルサイズのスライムで、鑑定したところ魔物のレベルが4になっていた。





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 スライム (小型種) LV.4 系統進化前個体


       使役前個体 


  ステータスには個体差、系統差あり


  ステータス LV不足により鑑定失敗



     条件により使役可能


 粘体を持ち、身体の中には核があり絶えず

核を動かし身を守る。


 常に動かす核の中に魔石を持つ。



 スライムの粘体は錬金素材として使える。


 スライムの核を別素材(液状、ゲル状)に入れ

る事で系統変化させ素材体積を増加させる事が

できる。

 系統変化先 LV、経験値不足で鑑定不可。


 稀に宝箱を落とす。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 魔物を鑑定しても内容に変化があまり無く、変わってる部分は?と言うとレベルくらいなものだった…駄目元でモンブランと水の精霊に鑑定で変化が無い事の話をする。



 僕は異世界の知識がないので、話す方は途中で挫折して聴く側に回るしか無かったが、結果的には良い方に転んだ。




「へぇ〜じゃあヒロって最初から鑑定持ってるんだ〜。普通は知識の泉の水を使ってそれがきっかけで覚醒するんだけどねー。最初から使える時点でやっぱり規格外だね〜。」



「でも意外だ〜知識を追い求める理の探究者には程遠い感じなのに!人間の身体で追い求めるなんて〜やっぱり規格外だね!水っ子は鑑定は持ってる?」



「私は持ってるはずないよ?聖樹っ子は聖樹だから持ってるの当たり前だけど〜私達水の精霊は水属性魔法にとスキルに決まってるじゃん!」



「聖樹ちゃん鑑定ってさ、属性魔法と違って色々な経験を積まないとレベル上がらないんじゃ無かった?」



「そうそう!同じ物とか魔物を鑑定してもレベルは上がらなくて〜今まで知らない物を知ること……要は知識の総量を増やせば鑑定のレベルが上がるんだよ〜」



「魔物とか草や木まぁこの世界の全てだね〜それが結局全ての事象に繋がる事だからね〜この世界の成り立ちに始まり〜云々…」



 それは唐突に判明した。



 鑑定のレベルの上げ方……それは同じ物を反復鑑定する事ではなく、多くの物や生き物この世の全てを鑑定する事。



 薬師のスキルを覚えたエクシアさんの様に、薬草を延々と磨り潰す様な反復練習が必要なわけでは無いらしい。



 文字が見える部分が共通だったのでもしかしたら?と思ったがそれぞれ条件が違う様だ。



 確かに森で鑑定したのはキノコや草、そしてエクシアさんと自分のステータス、フォレストウルフやホーンラビットにしても可食部位の鑑定だった。



 要は総数をこなす事でレベルが上がり、鑑定内容の情報量が増える仕組みの様だ。



 今までスライムを鑑定した内容が変わらないのは、魔物を鑑定した総数が足らないからで、解ってる部分が変化してるだけだった。



 考えてみれば、魔物はスライムにカエルに蝙蝠の3種類しか鑑定してないのだ。



 あれだけ倒して、お肉やツノそして牙や毛皮にもお世話になったウルフとツノウサギに至っては、エクシアさんの冒険者指導中もあり鑑定するには至らなかった。


 唯一肉としての可食かどうか鑑定しただけで、それ以外は魔物として鑑定さえして無かった。



 なので魔物として鑑定したのは、このダンジョンのスライムが初めてだったので鑑定結果に反映されないのは当たり前だった。



 そしてモンブランに言われて気がついたのは、魔物は倒した後に鑑定しても魔物としてはカウントされず、素材や食用が可能かどうかなどの様に表示され、内容自体が魔物鑑定とは全く異なったのだ。



 既に討伐済みなので、魔物ではなく様々な素材や過食可能部位の素材として鑑定されたのだ。



 だからこそフォレストウルフの各部位や、ホーンラビットの各部位で食感が異なる事までが鑑定で詳しくわかった訳だ。



 結果鑑定で今よりいろいろな情報を得る為には、魔物として鑑定した上で出た素材をさらに鑑定し、魔物・素材・食料など系統別にレベルを上げるしか無い訳だが、その中でも魔物としての鑑定だけは確実に上げないと今後は密接に命に関わってくるだろう。



 出会った魔物の詳細が解れば、対処法にも繋がり必要以上に危険を冒す可能性も減るので、より安全に冒険ができるだろうし……生きてさえいれば元の世界に戻る手段がいつか見つかるかもしれない。



 鑑定については思った以上の収穫で、思わず心の底からモンブランと水の精霊にお礼を言うと、びっくりした事に水の精霊が瞬いたかと思うと何故か外見が少し変わっていた。



 具体的には、ショートヘアだった水の中級精霊は髪がミディアムボブになり、着ていた服の紋様が水の綾の様な紋様になっていた。



 当の水の精霊はと言うと……ガッツポーズで言葉にならない喜びを噛み締めていたので、僕はそっとしておく。




 それはそうと、2階層は上の階と若干変わりゴツゴツした岩の壁と土壁が入り混じった階層になった。



 この階層は1Fから傾斜を降りた後すぐにそこそこ広い場所になっていて、そこから一本道が続く作りだった。



 僕は空間感知を使いながら道なりに奥に進むと、時々ひらけた場所があるが一本道以外は他に道がない為、そのまま道なりに進むしか無かった。



 開けた場所には、大概スライムが4〜5匹程度おり連戦を強いられたが、相手はせいぜい500mmペットボトルサイズのスライムなので魔法を使うこともなく危なげなく戦えた。



 スライムの2匹程は、暇を持て余した水の精霊が感謝の言葉を求めて倒してくれるので実質3匹程が僕のノルマだ。



 そうしながら奥へ歩くと、先程迄とは遥かに違う大きさの開けた場所に辿り着いたが、僕の空間感知には敵性反応が見られない。



 入り口から少し離れた場所で、モンブランと水の精霊にその事を伝える。



「この先、そこそこ広い空間が広がっているけどさっきまでと違い敵の反応が一切無いんだよね。何でかな?何かわかる?」



「普通に休憩場所じゃ無い?ダンジョンには稀にあるよ?」



「うん、この先はこの階の安全に休息が取れる場所だね〜別に珍しい場所でも無いけど?まぁ広いって事以外は何処のダンジョンとも変わらないかな?」



「水っ子の話だと、このダンジョンは水の上級精霊が深化を防いでるから、そのせいもあって休憩場所が広いのかもだけどね。」



「まぁ何にせよ、この先は綺麗な水場のある休憩場所だよ〜。上の階の泉があった場所の真下だよ〜。」




 そう言われて僕は、念の為用心深く中に足を踏み入れると上の階の様な、少し大きめの泉がある空間になっていた。




 「因みに〜ここの水は下級精霊が祝福の練習場所にしてるから〜飲料水にも出来る位に清んでるよ。」



 精霊のいう通り水辺は、洞窟内なのに淀む事なくすごく清らかで奥に行くに従って深い構造の様だが、底迄の透明度が尋常では無かった。



 元の世界でもここまで綺麗な泉など、ネットの写真以外見たことが無い位に綺麗だった。



◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆



「おっそい!何があってもこんな遅いはずがない。ちょっとあたしが行って見てくるよ!」



「エク姉さん!落ち着いてくださいって!初めての洞窟だし、スライムと戦うのがそれなりに楽しいんだと思いますよ!兄貴は!」



 それはエクシアとロズの声だった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



==登場人物・用語集==


『精霊』


モンブラン(性別不明) (聖樹の精霊)

水っ娘ノーネーム(水の精霊)


『ギルド』


ギルド・ファイアフォックス  ギルド等級 銀3級


紅蓮のエクシア R「ギルドマスター」♀ (銀級2位)

ロズ(戦士・タンク)♂銅級3

ベン(戦士)♂銅級3

ベロニカ(弓使い)♀銀級3

ゲオル(魔法使い)♂銀級3


ザッハ「サブマスター」♂

リープ(事務員)♀

フィーナ(販売員)♀

ゴップ(解体担当)♂



マッコリーニ商団


パーム(妻)♀(店長)

レイカ♀(娘)

ハンス(執事)

御付き1♀

御付き2♀


売り子A♀

売り子B♀

売り子C♂

売り子D♂


水精霊の洞窟村


レン爺 (村長)♂

バフゥ (武器屋の親父)♂


飯屋の女将 ムイムイ♀

飯屋の料理人 ドムドン♂

飯屋の娘 メイメイ♀

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