第27話「水の精霊のダンジョン無双」

「スライム如きがなんぼのもんジャー!ワテクシに宝箱貢げーーー!」




 そんな念話が僕の頭に響き渡る、水の精霊の洞窟・2階層掃滅戦



 しかしこの話の前にもひと騒動があった。



 あれから僕らは3本の分岐路の広い空間まで戻って右通路に向かった。若干狭い通路を抜けるとそこは緩やかな下の階層に向かう坂道だった。


 ダンジョンのイメージだったので階段をイメージしたが、ここは見てくれが洞窟なので階層の作りも洞窟のそれだった。



 2階に降りる前に僕は水の精霊に話かける。



「反対側の通路も気になるから先にそっち見に行かないかい?」



「もし階層主に準じる魔物が出たら、宝箱の可能性もありそうだしさ。」



 その内容には満場一致だったので、降りている途中の斜面をまた登り反対側の通路の探索に行くとそこは真ん中の空間の約半分ほどの開けた場所だった。



 近づく前に空間感知で確認すると真ん中に魔物の反応があるが目視できない。



 僕はその事を水の精霊に伝えると…



「多分スライムじゃない?ちっさいスライムでも敵反応だすし〜」



「ちっさいスライムだったら宝箱出ないかも?」



「いや……寧ろブレスレットはピンポン球サイズのスライムから出た宝箱だよ?」



「ピンポンダマ?まぁ小さいって事はわかった!そして出ることもわかった!予備の祭壇絶対取るぞ〜」



 そのピンポン球スライムから出た話を聞いた水精霊は物凄いやる気を漲らせていた。



 近づくがスライムさえ居ない……しかし敵の反応はあるので注意深く周りを観察しながら一歩脚を踏み入れると…




「「あっれー?居ないじゃん!敵が!」」



 モンブランと水精霊の念話がハモる……しかし僕の空間感知の敵シンボルは僕に向かって近づいてきた。


 敵がいたのは地面じゃなく天井だった。僕がウォーター・バレットを撃つよりかなり早く、水の精霊が敵を撃退する。




「なんだ蝙蝠か!そりゃ天井だわね!ウッカリ〜ウッカリ〜」




 精霊には余裕の様だが、僕的には上空から強襲など考えもなかった。心臓の鼓動がやばい…



 あまりにビックリし過ぎて少しの間、動悸が治まらなかった。



 上空から強襲された為鑑定さえする間も無かった。



 しかし水の精霊のお陰で怪我する事も無く倒すことが出来た。



 大きめの数匹の蝙蝠は落ちる途中に消えて、代わりに目の前に蝙蝠の部位が落ちていた。



 魔物のドロップした部位を取りに近づこうとした瞬間……まさかのその素材の真上に宝箱が落ちてきた。



 空襲する敵を倒した場合、宝箱の下敷きになる可能性があることが分かった。



 迂闊に討伐部位を取りに行かずによかった。



 ひとまず、倒した後の流れ作業のようになった鑑定をする。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


    宝箱 (強者の誉) (アラーム)

        (Aランク)


       入手方法


 ダンジョンのネームド個体を倒した場合

 に入手。


 箱にはランクがある。

 ランクが上がる程、良品が詰まっている。


 箱には罠がかかっている場合がある。

 ランクが上がると箱内部は複合罠になる。


 解錠方及び罠の解除方は箱ごとに異なる。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 またもや見たことのない宝箱が出た。


 今度の宝箱ははじめての罠ありだったが、アラームと言うくらいだから音が鳴り魔物が来ると言う感じだろうか?



 水の精霊とモンブランに聞くも宝箱や罠の事は分からないらしい。



 とりあえず勿体無いが危険を回避する為にそのままにする事を選ぶが、後程エクシアに相談して開けてもらえれば御の字だろう。



 …残っていればの話だが…



 問題のそれまでここに宝箱が残っているか?だが…



 エクシアの講習会の説明では、取らなかった宝箱は一定時間でダンジョンに吸収されてしまうことがあるらしい。



 万が一にも危険は冒せないので、そのことを水の精霊に説明しておく。



 下の層に行けばまだ宝箱が出る可能性もあるし、と言う事でさっきの下層に降りる斜面に戻ろうとした矢先、水の精霊が相当悔しかったのだろう水魔法を宝箱にぶっ放す暴挙に出た。



 砕け散る宝箱、あたりに散らばる宝箱の中身……そしてつんざく様に鳴り響く音。



 アラームとは名ばかりだ!アラーム言うくらいだから、もうちょっと敵が来そうな音じゃ無いのか!



 クレームを出したかったが、コレをやったのは水の精霊だった。



 まだ契約していないので……本気で考えるべきだろうか……気持ちはわからないでもないが。



 そんな考えをしていると、空間感知に幾つかの魔物の存在が見て取れた。



 地上に居ない以上……上しかない。



 敵の数は全部で3匹、わずかな時間しか無いが敵の数を把握する。



 そして先ほど襲いかかって来た魔物も上空から強襲だったのだ……出現する魔物が同一でもおかしくない。



 僕は魔物へ鑑定かけてからワンテンポ送らせて放射型のウォーター・バレットを上空に放ちすぐさま入口付近に走り込む。



 万が一宝箱が落ちて来ても下敷きにならない様に走ったのだが…結果は戦闘後にしか分からない。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


   ジャイアント・フィアー・バット

        (中型種)


    LV.5 第一次系統進化個体


       使役前個体


  

  ステータスには個体差、系統差あり


  ステータス 鑑定LV不足により失敗


     一般個体のみ使役可能


  鋭い牙で空中から強襲する。

  群れで活動し、時には馬さえも襲って

  食べる。肉食蝙蝠


  大きな羽を羽ばたかせ、自在にホバリ

  ングする。


  腹部を切り裂いた場合稀に巨大寄生虫

  (レッサーワーム)がいる場合があるの

  で注意。


  仲間との意思疎通は超音波を使って行

  っており、群れで狩りをする場合連携

  がうまい。


  鋭い牙、大きな飛膜、巨大蝙蝠の脚

  巨大寄生虫の大顎、蝙蝠の眼球、etc

  は様々な用途に使用される。


  肉は独特な臭みがあり食用が可能


  上記部位は武器、防具、etcの素材に

  使用可能。


 系統変化先 LV、経験値不足で鑑定不可。


 一般個体は稀に宝箱を落とす。


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 今は鑑定内容確認云々より、倒す事を優先で個体情報は後で情報を纏めておくとしよう。



 僕の合計3回分と多めに放った放射状のウォーター・バレットは、全ての巨大蝙蝠の飛膜を突き破り落下させる。



 2匹は頭と腹部に当たり既に致命傷だが、地面にぶつかった時点の衝撃もあり結構な高さがあったので地面との激突のそれだけでも確実に倒していた。



 飛膜だけ破き落下した巨大蝙蝠は、落ちる直前ホバリングを何度かしたので、致命傷までは行かないが、体勢を直す時に水の精霊がウォーター・スフィアで全体を爆散させて倒していた。



 三匹共にゆっくり消えていき、そこには討伐部位が落ちていた。



 勿論其々に念の為に鑑定するのを忘れない。



◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇


  鉄貨  50枚

  鋭い牙、3

  大きな飛膜、2

  巨大蝙蝠の脚 3

  蝙蝠の眼球、 2

  巨大寄生虫の大顎、2

  中型魔石 3


◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇ ◆◇



 三匹分の追加の魔物討伐部位全部は、結構な数だった。



 水の精霊が水魔法で爆散させた宝箱のアイテムを確認に行く。


 宝箱が爆散したおかげで下敷きになった討伐部位も無事?回収出来たが、正直結果オーライとは言い難い。



 一先ずこれらのアイテムも個別に鑑定をするのを忘れずにやる……収納時に万が一何かがあっても困るので、それだけは欠かさない。



 飛び散った事もあり鑑定を駆け回るのが大変だったが、意外と数が多く破損した物などは取り敢えず無かった。



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  金貨袋 (100枚) 1

  中級精霊の腕輪  1

  +3ダガー    1

  +2怪力の指輪  1

  フレアーモリア・ダガー 1

  レッド・ローブ 1

  フレアーモリアの結晶 1

  フレアーモリアの心臓 1

  フレアーモリアの鉤爪 1

  フレアーモリアの飛膜 1

  炎の魔石 1


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 どうやらネームド個体と呼ばれる魔物の名前は「フレアーモリア」と言うらしい。


 今更鑑定をかける事はできないが、討伐部位から名前くらいはわかった。

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