印鑑レス口座

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。先日、婚姻届が押印不要になった話をしましたが、銀行でも印鑑レス口座を導入する取り組みが始まっています」

「銀行=印鑑ってイメージだけど、世間は変わりつつあるんだな」

「9月にわたくしが口座開設したネット銀行も、印鑑レスでした」

「ネット銀行って、基本的に店舗がないんだよな?」

「ええ。お金が必要な時は、提携コンビニのATMから引き出します。銀行にもよりますが、手数料は無料の場合が多いですね」

「ネットで申し込みできて、対面確認もせず印鑑も不要だったら、なりすまし口座が簡単に作れてしまうんじゃ……」

「わたくしの銀行では、動画による本人認証というのがありましたね」

「動画?」

「画面の指示に従って、上を向いたり左右を向いたりするのです」

「何だそれ」

「おそらく顔の情報を立体的に取得しているのでは? 真正面の静止画だけだと、他人の写真で口座を作れてしまいますので……」

「なるほど」

「その時は日曜日の夜だったので、顔も頭も見事にボロボロで、服装は破れたパジャマでしたが、ちゃんと認証されて口座開設できましたよ」

「顔はともかく、パジャマは縫えよ」

「もう縫いました。わたくし、料理の腕は致命的ですが、裁縫はそれなりに得意ですので」

「結婚するなら逆の方がいいよな」

「そうなんですよね。裁縫が下手でも問題なく生きていけますが、料理は日々の生活のクオリティに直結するもの。苦手では支障があります」

「将来どうするつもりなんだよ」

「難病バツイチ独身のわたくしには将来などない」

「前向きなのか後ろ向きなのかさっぱりわからないな」

「ともかく印鑑レス口座なら、銀行へ行ったのにハンコを忘れて手続できなかった、なんて事態とはさよならです。今後広く浸透するといいですね」

「ああ、そうだな」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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