京都の住所
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。一般的に、京都人はプライドが高く、他県民に厳しいと言われております」
「俺は京都人と付き合ったことないから知らないけど、そうなのか?」
「断言はできませんが、そういう傾向は多少あるように思います。経験談を1つご紹介しましょう。ある日わたくしは、京都人の先輩と京都でタクシーに乗りました。目的地は三条京阪でした」
「ああ」
「基本的に、京都で場所を説明する時は、縦の通りと横の通りを組み合わせて表現します。二条堀川とか、四条河原町とか、そんな感じですね。三条京阪は駅名ですが、とにかく言えばすぐわかります。ところが、その先輩は運転手に告げました。『法林寺門前町お願いします』」
「町名?」
「いや、三条京阪で良くないですか!? 京都の町名って範囲が狭くてめちゃくちゃ複雑なんですよ!? どう考えても目的地は三条京阪なのに……」
「で、その後どうなったんだ?」
「特に問題なく辿り着けました」
「良かったな」
「良かったですが、目に見えぬ京都人バトルを感じましたね。『あなた当然、法林寺門前町くらい知ってるわよね?』みたいな。運転手もまた運転手で、『それって三条京阪ですよね?』なんて聞き返さないし、カーナビには触れもしません」
「知ってて当たり前、っていう前提なんだな」
「その時わたくしは感じました。京都人は、京都の話題になると、他県人だけでなく京都人同士でも厳しいのだと」
「なるほど」
「あと、京都人は住所が長すぎて、高確率で年賀状の宛名欄に入りません。その先輩曰く、少し省略しても届くそうですが、どこを省略すればいいのか素人にはわからないという」
「難しいな……」
「ですがそういう、他県と事情が違う難しさも、京都の魅力の1つですよね。世間が落ち着いたら、浦島殿も是非お越しください。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
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