安さ自慢

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。普段着はしまむらです」

「唐突なカミングアウト」

「今のは嘘です。本当は外出着もしまむらです」

「お前はしまむらの営業マンか?」

「そうではありませんが、世の中にはブランドファッションでマウントを取る人間がいると聞いたので、あえて逆をと思いまして」

「なんで伝聞なんだ? そういう人間に会ったことないのか?」

「ないですね。逆バージョンは日常的に遭遇しますが」

「逆バージョン?」

「『この服いくらやと思う?』『5,000円くらい?』『ブッブー、980円!』『ホンマに? うわー、ええ買い物したねぇ』」

「完全に大阪のおばちゃん」

「でも実際、高さ自慢をするよりも、安さ自慢で節約上手をアピールした方がいいと思いません? 先日のクーポンの話にも通じますが」

「確かに、おばちゃん同士ならそうだろうが、恋人の前では見栄をはりたいもんじゃないか? 貧乏だって思われたくないし」

「ふむ、なるほど。たくさんお金を使うことによって、経済力をアピールするわけですね。それも一理あります」

「練習ついでに、俺にマウントしてもいいぜ?」

「ふっ、わたくし、カジノで100万円負けましてございます。帰りのフェリー代も失いました」

「節子それマウントやない、ただの黒歴史や」

「クレジットカードでキャッシングしたら、翌月から限度額が大幅に上がりました。ふふふ、カード会社に上客だと思われたのでしょうね。ですが、さすがに懲りましたので、それ以降は一度もカジノへ行っておりません。どうでしょうか? わたくしの印象、今ので上がりましたか?」

「リアルに下がったよ」

「ほら見なさい、浪費アピールなどロクな結果になりません」

「まあ確かに、マウントする方はともかく、される方は気持ちのいいもんじゃないからな。しないのが正解かも」

「わたくしの黒歴史と引き換えに、良い結論が出ましたね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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