尻割れパンツ

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。以前北京に住んでいたと申しましたが、中国には『開褲子(カイクゥズ)』という、赤ん坊向けの特殊な衣類がございます。日本語で言うと『尻割れパンツ』です」

「尻割れパンツ……だと?」

「事件の予感がするネーミングですよね」

「ど、どんな衣類なんだ?」

「その名の通り、お尻の部分に布がないズボンです。今は使い捨て紙オムツなんて代物がありますが、昔はそんな便利なアイテムなかったので、赤ん坊が排泄するたびにオシメを取り替えて洗っておりました」

「なかなか大変な作業だよな」

「尻割れパンツはその解決策として登場しました。最初からお尻が出ていれば排泄が簡単だし、そもそも布がなければ服を汚す可能性もなし。尻割れパンツは、まさに子育てママの救世主なのです」

「しかし、その服を着せると、尻が見えてしまうじゃないか」

「見えますね」

「あ、家の中限定とか? それならまあ多少は……」

「普通に外出します」

「待て」

「地球の歩き方に載っていたので、事前にその存在は知っていたのですが、初めて現物を見た際はわたくし大変動揺しました。そもそも我々は、尻を隠すためにパンツをはきます。では、尻を隠さないパンツがあったとして、それは果たしてパンツの定義を満たすのでしょうか?」

「突然の哲学」

「前ご紹介したニーハオトイレは、トイレに行かない限り目にしませんが、尻割れパンツは街で突然出会ってしまうので、精神的な衝撃が大きかったです」

「心の準備が……ってやつだな」

「何にせよ、郷に入れば郷に従えと申しますし、異文化を尊重しつつ貴重な体験を楽しむ心の余裕を持ちたいですね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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