ギザ10

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。職場の若い子がギザ10を知らなくてショックを受けた話をしていいですか?」

「ギザ10か。そういや昔あったなぁ、ギザギザした10円玉」

「その反応、意外とオッサンなのでは……」

「しっ、失礼だな! 俺は今時のナウいヤングだぜ!」

「完全にオッサンですな。ところで、この機会に調べたのですが、ギザ10は昭和26年から昭和33年に製造されていたそうです」

「7年しか作られなかったのか」

「ふちをギザギザにした理由ですが、かつて硬貨を発行した際、金貨の周囲を削り取る輩がいたため、その対策で装飾されたそうですよ。ギザギザがなかったら削られた証拠、というわけですね」

「金貨ならともかく、10円玉って青銅だし、削ってもそこまで価値ないよな?」

「はい。その後、昭和30年に50円硬貨が、昭和32年に100円硬貨が登場し、そちらにギザギザがついたので、手触りの混乱を避けるため10円硬貨のギザギザは廃止されました。さしずめギザ10は、10円玉が高額硬貨だった頃の名残と言えましょう」

「昔はたまに見たけど、最近はほとんど見ないから、お前の後輩が知らなかったのも無理ないんじゃないか?」

「確かに。ギザ10はレアですが、自販機で使えない時があって、場合によっては不便でしたからね。ギザなしの10円玉より少し軽いことが原因らしいですが」

「なるほど、ギザ部分が削られてる分軽いのか」

「他には五円の表記が楷書体の『フデ5』や、わずか7日間しかなかった昭和64年発行の硬貨をコレクションする人もいます。発行数は意外と多いので、そこまで高額に化けるわけではないですが、偶然見つけたらちょっとラッキーですね」

「よーし、俺も財布をチェックしてみよう」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る