通勤災害
「どうも、浦島太郎です」
「わたくしは講師の亀でございます。浦島殿は、労災にどのようなイメージをお持ちですか?」
「よくわからないけど、仕事が原因で病気や怪我をしたら、労災保険で治療費がもらえるって感じ……かな?」
「それは業務災害ですね。その他に、通勤災害もございます。文字通り、通勤中の交通事故などに適用されます」
「へえー、通勤も対象なのか」
「ここで注意していただきたいのは、途中で経路を逸脱した場合や通勤を中断した場合は、その後の移動は対象外となる点です」
「中断?」
「たとえば、仕事帰りにカラオケに寄るとかですね」
「そうか。確実に労災の適用を受けたければ、まっすぐ帰った方がいいんだな」
「基本的にはそうなります。ただし、厚生労働省令の例外で、どこかへ立ち寄っても中断とみなさないケースもあります。スーパーで日用品を購入する場合、塾や学校で勉強する場合、治療目的で病院へ行く場合などです」
「仮に病院へ寄るとして、帰り道じゃなかったら? 隣りの駅とか」
「その場合は、本来の移動経路へ戻った時点で通勤を再開したことになります」
「なるほど」
「どこまでが労災に該当するかは、個別の判断がとても難しいので、そういう事態になった時はプロに相談なさるのがよろしいでしょうね」
「質問いいか?」
「どうぞ」
「俺、だいぶ前なんだけど、仕事へ行く途中に動物を助けたんだ」
「優しいですね」
「そしたらすごく感謝されて、飼い主の屋敷で歓待を受けたんだけど、帰る時に何の理由もなく呪われたんだよ。これは労災認定おりるかな?」
「おりません」
「何でだよ、通勤中の災害だろ!?」
「屋敷へ行った時点で通勤経路を離れていますし、そもそも当時の浦島殿は、労災保険に加入しておりませんよね?」
「やはり、泣き寝入りするしかないのか……」
「ですが、助けられたその動物は、今も浦島殿が大好きだと思いますよ。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」
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