ニーハオトイレ

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。わたくし、2年ほど北京に住んだ経験があるのですが、あちらにはドアのないトイレが存在します。いわゆるニーハオトイレです」

「噂には聞くけど、それって本当の話なのか?」

「都市部ではあまり見ませんが、ちょっと田舎に行くと普通に存在しますよ」

「俺、人の目はあまり気にしないけど、ドアがないのは抵抗があるなぁ……」

「と、思うでしょう? わたくしも、最初はかなり抵抗がありました。ですが、すぐに慣れました。人間とは不思議なもので、周囲が気にしていないと、自分もそんなに気にならないというか」

「そうかぁ?」

「では、逆に質問しますぞ。友達と温泉に行きますよね? そしたら裸になりますよね? その時恥ずかしいですか?」

「いや、全然」

「お互い全裸なのに?」

「だって、そもそも温泉ってそういうもんだし、男の裸なんて誰も気にしちゃいないだろ」

「我々は当然そう思いますよね。ですが、日本へ来られた外国人の方々は、温泉で裸になることに抵抗があるとおっしゃいます。ニーハオトイレも、ある意味その感覚に似ているかなと」

「なるほど。最初から当然そういうものだと思っていたら、特に気にならないってわけか」

「ええ。自分にとっては慣れない習慣でも、頭ごなしに否定するのではなく、珍しい体験を楽しむ余裕を持ちたいですよね。郷に入っては郷に従え、です」

「大事なことだな」

「なおわたくし、ドアのないトイレには慣れましたが、もっと田舎に行くと横の仕切り壁がないトイレも存在します」

「つまり……?」

「穴が並んでいるだけで、個室が存在しないということです。わたくし、そこまで上級者にはなれず、そうこうしているうちに帰国の日が来てしまい……」

「さすがに抵抗があったわけか」

「はい。また行く機会があれば、是非リベンジしたいですね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

「恋愛とは」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る