ライバル撃退法

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。忘れもしませぬ、あれはわたくしがウサギと駆けくらべをした時……」

「待て、何の話だ」

「おや、ご存知ない? ウサギと亀の駆けくらべの話」

「いや、知ってるけど、お前がその亀だったのか……?」

「実は、ええ。ですが、あのウサギは大変感じが悪く、ことあるごとにわたくしをバカにしました」

「どんな風に?」

「『お前って世界一グズだよな? どうしてそんなにグズなのか教えてくれる?』」

「質問を装ったディス……腹が立つな」

「しかし、動きが遅いのは事実なので、何も言い返すことができません。色々考えた結果、わたくしはウサギに勝負を挑みました」

「駆けくらべ、だな」

「はい」

「そもそも勝算はあったのか?」

「最初は、正直厳しいと思いました。あのレースの最大のポイントは、終盤のヘアピンカーブの攻略です」

「失礼だけど、お前、ヘアピンカーブで苦労するほどスピード出るのか……?」

「出ませんね。ですが、人生のヘアピンカーブは曲がり切れずに激突しました」

「お見舞い申し上げます」

「というわけで、勝算ゼロのわたくしでしたが、ウサギが油断してレース中に寝てしまったため、結果的には勝つことができました!」

「めでたし、めでたし……だな」

「ありがとうございます。試合直前に、差し入れを装って睡眠薬を盛った甲斐がありました」

「待て」

「この通り、まともに挑んでも勝てない相手は、戦う前に潰してしまえばよろしいのです。駆けくらべでも、ビジネスでも、もちろん恋愛でも……ふふふ」

「やめろ! あの童謡のブラック改変はやめるんだ!」

「そうですね、不正は一切ありませんでした。ウサギが途中で寝てしまったのはただの怠慢。わたくしがグズならば、あちらはクズでございましょう」

「どちらにしろスーパーブラック……」

「以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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