旧姓の印鑑

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。婚姻届をハンコ不要に、という動きがありましたが、結局は押印欄が残る見通しとなったそうです」

「なんでだ?」

「ハンコを押したいという声が一定数あったからです」

「まあ、一生の記念だからなぁ」

「婚姻届が一生の記念? ふふ、はははは、あんなものは薄い紙切れ! 折り紙にして、シカの餌にして、古紙回収に出すのが正解ですぞ!」

「またいつもの発作か、よしよし落ち着け」

「と思いましたが、ハンコはあくまで任意で、義務として強制はしないそうです。欄だけは残しておくから、押したい人は好きに押してね……ということですね」

「確かに、それなら賛成派も反対派も満足だな」

「はい。婚姻届を出す段階になって、ハンコを押す押さないで揉めて、別れるカップルが出てきたらいいですねぇ」

「よくないだろ」

「ところで、仮にハンコを押す場合、名字が変わる側は旧姓の印鑑を使います。最後の出番ですから、綺麗に押したいところですね」

「そっか、結婚後は相手の名字に変わるもんなぁ」

「ところがどっこい、離婚したら再度ガンガン使いますので、旧姓の印鑑は捨てずに取っておきましょう。筆者は捨ててしまったので、買い直すことになりました」

「お、おう……」

「しかも、ちょっと珍しい名字なので、市販品が店頭に売っておらず、旧姓のハンコをわざわざメーカーに特注し直すハメに……とほほ……」

「お疲れさん……」

「というわけで、本日のまとめを申し上げますぞ。

①婚姻届の押印欄は今後も残りますが、押印自体は任意となる見通しです。

②離婚届も同様の取り扱いになる予定。

③結婚後も旧姓のハンコは取っておこうね……」

「なんだか悲哀が漂ってるな……」

「この失敗談を、皆様ぜひ役立ててください。まあ実際は離婚しないのが一番ですけどね。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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