隠し子

「どうも、浦島太郎です」

「わたくしは講師の亀でございます。浦島殿が竜宮城で過ごした期間は、諸説あるものの、話によっては年単位でございますな。その間、乙姫とは本当に何もなかったのでしょうか?」

「何もって?」

「だって浦島殿、ありとあらゆる歓待を受けたのでしょう? 中にはそういう種類の歓待もあったのでは? なんなら隠し子の1人くらいいたのでは?」

「いてたまるか! 悲しいほど何もないわ!」

「本当ですか? だったら、帰る時に呪われるの不自然じゃないですか」

「俺も心底そう思うよ……だからあの話イヤなんだよ……」

「ところで、もし仮に隠し子がいたとした場合、親が亡くなったらその子に相続権はあると思いますか?」

「ないと思うが、お前がそういう質問をするってことは、ひょっとするとあるんだろうか?」

「実はそうなのです。正確に言うと、親の性別によって扱いが異なりますぞ。被相続人(死んだ人)が女性で、愛人が男性だった場合、隠し子にも通常通り相続権が発生します。本人が産んだことが確実ですからな」

「なるほど」

「一方、被相続人が男性で、愛人女性が子どもを産んだ場合、認知していれば相続権が発生し、認知していなければ発生しません」

「認知……泥沼の世界だな……」

「非嫡出子の相続分は、昔は嫡出子の半分だったのですが、平成25年に最高裁が違憲の判断を出したことによって民法が改正されました。よって現在の相続分は同等でございます。何故このような話をしているかと言うと、相続税の試験で意外と頻繁に出てくるからです。まあ残された家族の側からすれば、愛人の子どもに財産が渡るというのは、あまり気持ちのいいものではないと思いますが……」

「複雑な問題だよな。愛人を作ること自体はどうかと思うけど、とはいえ、生まれた子どもの側に罪はないだろうし」

「はい、相続というのは難しいものですな。以上、亀と浦島の恋愛講座でした」

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