第50話:移民募集

 俺は捕らえたトレーシー城伯一味とローガンとハリーの一味を支配した。

 魅了と支配と従属と奴隷の魔術を四重にかけた。

 なにがどう違うのかは説明が面倒だから語らない。

 だがそれぞれ微妙に意味と効果が違う別の魔術だ。

 しかし俺の命令を利くという点は同じだ。


「あの者たちは上手く王女たちを殺してくれるでしょうか」


 エラが心配そうに聞いてくる。

 俺と同じように面倒ごとから解放されたいと思っているのかな。

 少なくともエラも俺と同じように王女の事が大嫌いなのだろう。


「まあ成功しても失敗してもどちらでもいいよ。

 失敗したとしてもいい警告になる。

 国王も流石に王女を幽閉するかもしれない。

 俺はそんなことより畑の方が気になるよ。

 これが成功すれば、大陸から飢餓をなくせるかもしれないからね」


「はい、ノアお兄様、素晴らしい研究ですわ。

 何といってもノアお兄様しかっできないと言うのが素晴らしいですわ。

 これで大陸中の人々がノアお兄様の素晴らしさを知ることになります」


「いや、俺はこの魔術を誰でも使えるモノにしたいのだよ。

 今のままではあまりに貴重な素材が必要で、ほぼ再現不可能だからね」


「それはいくらなんでも無理ではありませんか。

 属性竜の素材など、ノアお兄様以外には集められませんわ」


「いや、俺以外にも属性竜を斃せる者はいるだろう。

 だが貴重で高価な属性竜素材を、農業に回してくれるとは思えない。

 強力な回復魔術や攻撃魔術の素材に使われてしまうだろう。

 属性竜をもっと簡単に狩れるようにするか、属性竜以外の素材でも穀物を大量に促成栽培させられるようにするかなんだが、正直難しい」


「それは仕方がない事ですわ。

 いくらノアお兄様でも、大陸連合魔術学院が長年研究しても成果が出ない、とても難しい研究ではありませんか。

 ノアお兄様がそのよう哀し気な表情をなさる事ではありませんわ」


 エラはとても優しいな。

 心から俺の事を心配して気遣ってくれる。

 だが、大陸連合魔術学院が長年かけて研究して成果のないものであろうと、諦めるわけにはいかないのだ。

 だが、その気持ちをそのままエラに伝えるわけにはいかない。


「俺の事を気遣ってくれてありがとう。

 自分の理想を諦める気はないが、悩むのは止めるよ。

 もうエラに心配させるような事はしないから安心してくれ。

 まずは今俺ができる事からやるよ。

 せっかく莫大な穀物を収穫できるようになったのだ。

 飢えに苦しんでいる大陸の民を移民募集する事から始めるよ」


「まあ、それはとても素晴らしい事ですわ。

 これでのノアお兄様のお優しさが大陸中に広まりますわ」

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