第17話:大陸連合魔術学院理事長
「よく来てくださいました、ノア殿、エラ嬢。
話はハザートン公爵の使い魔から伺っております。
まずはお二人の実力を測らせていただきます」
臭い、恐ろしく醜悪な臭いがする。
眼の前にる大陸連合魔術学院理事長は、オリビア王女に匹敵する悪人だ。
前世で東洋医学を生業にしていたので、患者さんの体臭も重要な診察基準だった。
糖尿病患者さんのアセトン臭、腸チフス患者さんのパン臭、黄熱病患者さんの肉臭、結核患者さんのビール臭、がん患者さん腐敗臭には常に気をつけていた。
その影響なのか、転生してからは善人と悪人を嗅ぎ分ける事ができてしまう。
善人からはお天道様の香りがするのに対して、悪人からは便臭と腐敗臭を混ぜたような強烈な悪臭がするのだ。
理事長からはオリビア王女と同じ極悪臭がする。
エラを護るためにもできるだけ早く殺してしまわなければいけない。
「分かりましたが、ご存じのように私とエラは命を狙われています。
試験といえども護衛は常に側に置きますし、別々になる事もできません。
常に一緒に行動させてもらいます。
それが駄目だと言われるのなら、試験は辞退して他の学校を目指します」
「幾ら何でもそれは失礼ですぞ。
公爵令嬢であろうと学院内は身分差のない実力主義なのだ。
魔力が低く魔術も使えない人間を合格させる事はできん。
まして爵位を剥奪された元公爵公子など……」
理事長と一緒にいた執行導師と名乗った男が怒りだしたが、その執行導師の話を聞いていたエラが本気で怒ってしまった。
「このような無礼な所は早々に出て行きませんこと、ノアお兄様。
ノアお兄様は私のために裏口入学のお金をご用意してくださいましたが、このような所に大金を投じていただくのは申し訳ないです。
それよりは途中でお誘いいただいた王立魔法学園に裏金を使ってくださいな」
エラが理事長と名乗る男を挑発している。
俺は悪臭で悪人を見分けているが、エラは本能で見分けているのだろう。
いや、これくらい分かりやすい言動をする取り巻きがいたら、理事長がどれほど善人を装っても無駄だな。
俺やエラでなくてもこいつらが悪人だと直ぐに分かるだろう。
「いや、いや、いや、今の執行導師の発言はあくまでも指導者の立場の話だよ。
学院の経営を預かる理事会の考え方は全然違うのだよ。
世の中には表もあれば裏もある。
学院を維持運営するには綺麗事だけを言ってはいられませんからな。
エラ嬢とノア殿は、百人を超える超一流の傭兵と冒険者を護衛に雇われていたとう事なのだが、これからも同じだけの護衛を雇われるのかな」
「本当に失礼な事を口にされるのね。
学院の理事長、理事長と偉そうに言われるけれど、貴族らしい上品な探り方もできないとは、成り上がりの守銭奴のみっともないこと。
旅の途中で薄汚い性根が露見した者以外は全員雇い続けまわすわよ。
その程度のお金など、ノアお兄様にとってははした金ですわ」
余り挑発してはいけないよ、エラ。
ここでこいつらがこれ以上エラに乱暴な言葉を吐いたら、我慢できなくてぶち殺してしまうからね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます