第2話:婚約破棄追放

 オリビア第一王女付きの近衛騎士と側近を、全員ぶちのめすの使った時間は、前世の時間で十分ほどだった。

 問題は騒ぎを聞きつけてやってきた王城警備の近衛騎士や近衛徒士の扱いだが、俺の言い分を聞いて攻撃を手控えてくれた。

 まあ、オリビア王女は半狂乱になって俺を殺せと命じ続けていたが、普段からオリビア王女の言動に困っていた王城警備の者達は、攻撃するフリをするだけだった。

 もちろん俺は逃げるだけで反撃は一切しなかった。


「オリビアが愚かな事をしでかしたようだな、悪かったな、ノア」


「なんで父王陛下が家臣に謝るのよ。

 それに私は何も悪い事などしていないわよ。

 王族の命令には何でもあろうと家臣は従うものでしょ、父王陛下」


「黙っていなさい、オリビア。

 お前は王家と家臣の関係を全く分かっていない。

 お前の命令に唯々諾々と従うのは誇りを持たない下級貴族だけだ。

 誇り高い上級貴族はお前に媚を売ったりはしない。

 特にハザートン公爵家はカンリフ王家の分家だ。

 お前が臣籍降嫁すれば、お前よりもハザートン公爵の方が上位になる」


「そんな心配は不要ですわ、父王陛下。

 私は女王になって全ての貴族を統べるのですから」


 駄目だな、これは、救いようがない身勝手さだ。

 こんな女が女王になってしまったら、カンリフ王国は内乱で隣国の餌食になる。

 そうなる前に殺してしまうべきなのだが、国王陛下の唯一の欠点が異常なほど子煩悩な所だから、どうにもならないだろうな。


「ふう、ノアには悪いが余にはオリビアを罰することができない。

 オリビアの望むことはできるだけかなえてやりたい。

 だが王家とハザートン公爵家の戦争も望んではいない。

 ここはノアから婚約を辞退して国を出て行ってくれないか」


「駄目よ父王陛下、そんな事をしたら私が悪かったことになっちゃうじゃない。

 ノアは婚約を破棄されて国外追放にされるのよ。

 そうでなければ私、ここで大泣きして暴れるわよ」


 全く躾されなかった粗暴王女が大人になると始末に負えないな。

 国王苦心の収拾策、家臣に頭を下げて提案している事を全部ぶち壊しにする。

 まあ、その王女の言い分に逆らわない国王がいるのが全ての元凶なのだけれどね。

 それに俺も婚約破棄や追放が嫌なわけじゃない。

 家族に迷惑が及ばないなら婚約破棄も追放も受け入れる。


「ではこういう条件ではいかがでしょうか、国王陛下、王女殿下。

 やってもいない国有財産の横領ではなく、王城内での乱闘で喧嘩両成敗では。

 私とウェストウッド男爵家の兄弟が王城内で私闘を行った事を罪として、私は婚約破棄、兄弟は爵位の剥奪、そして三人とも国外追放にするのです。

 兄弟は王女殿下が直ぐに恩赦をだされれば戻って来れますし」


「あんな役立たずの壊れたオモチャ、もういらないわ。

 もっときれいで丈夫な新しいおもちゃを探すわよ。

 あんなの、どこで野垂れ死にしても知った事ではないわ」


 さようですか、貴女らしい言い草ですね。

 その醜悪な言動が私には耐えられない悪臭になって感じられるのですよ。

 ほんと、もう今直ぐここから出てきたいです。

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