第187話 鑑定の信用性
ワラビの事を確認したけど、俺のお腹が落ち着かないから動きたくない。ウチの子たちはウトウトしてたり、既に夢の中だったりなのでこちらは動けない。
よし、この時間を使って戦利品の確認でもしちゃおうか。
あー......人工キメラから出た肉、ワラビの進化がイケそうと思ったから確認せずに食わせちゃった。どんなものか確認しておけばよかったわ。
そこは反省しないとな......
まぁグダグダ考えてももう遅い......次から気をつけよう。さて、鑑定しよう。
ババアのとこで出た変な角、擂鉢、宝箱。そしてキメラから出た宝箱を取り出す。
どんなんが出てきたんでしょうか。鑑定さんお願いします。
まずは角から行こう......
▼呪物の角
■■■■の角
最上級の供物
君は深淵を覗く覚悟はあるかい?▼
............碌でもないモンだった。説明怖いよ......なんだコレ。何の角なのか読めないし......
さ、次行こう。
▼錬金
調味料を錬金する擂鉢
使う素材は最低でも三種類
どんな物が造られるかは、使用してからのお楽しみ
使う素材によって完成品の品質、レア度、効果が変わる
一生を賭けても終わりの見えない錬金の泥沼へようこそ▼
......あんましコレが使える物とは思えない。調味料ならいくらでも取り寄せられるし?
はい、次行ってみよう!!
ババアの方の宝箱オープン。
こ、これは!? ......薬品かな?
▼中級エリクサー
ケガ、病気、部位欠損などあらゆる物を治すが、同時に治せるのは一度の使用で三箇所まで
死後三分以内の死人の蘇生も可能▼
「ファッ!?」
声出ちゃった。恥ずかしい......
起こしちゃったのは謝るから、眠そうな目で睨まないでほしいの。可愛くてドキドキしちゃう。
......一旦胸のトキメキは置いといて、ほんまダンジョンテメェコノヤロウ。
捜し物は何ですかー見つけにくい物ですかーもっとヤバいダンジョンの中も捜したけれど見つからなかったのに......全然期待していなかったこっちで手に入るとは。
......そんで、エリクサーにも等級があるんだね。知らなかったよ。
俺に効くか実験で気安く使えねぇじゃんかぁぁぁぁ!! ケガや病気を何でも治すってだけでええやんけ!!
......はぁ、次だ次。ラストー。たからばぁこオープゥン......
んー......なんだこれ。ミニチュアの建造物??
▼不可視の東屋
持ち運び可能な東屋
魔力を込めた者、許可された者以外には認識できず、侵入もできない
発動には魔力を注入、解除するには魔力を抜く必要がある
発動させれば大きくなり、解除すれば元の大きさに戻る▼
コレ!! 当たりも当たり!! 大当たりだ!!
「ふぅぅぅぅぅぅ!!」
「「「「............」」」」
「キュウ......」
「あっ......ごめんなさい」
全員起こしてしまいました。悪かったってば......
「敵から発見されない休憩場所になるアイテムだったからテンション上がっちゃったのよ......俺が前に住んでいた所にある建築物だったし」
言い訳をしながら撫で回して、ようやくお許しをもらえた。俺にとってはご褒美ですけど。
「じゃあお披露目するからね」
ダイフク以外を許可設定して発動。ダイフクにはちょっとだけ実験にお付き合い頂きたく御座候。決してハブっているとかではない。
「おぉぉー!」
「「「......!!!」」」
「............」
1Kの部屋くらいの大きさの東屋が出現。
使われている木材は、赤みがかって何か。鑑定しても表示されない。
釘を使っていない古風な建築。中のベンチは石を切り出して作ったと思われる。
これ、すごくカッコイイ!!
時間を浪費してごめん。じゃあ皆入って入って!!
はい。わかってます。
......すんげー鋭い目付きでこちらを見ないでほしい。モチモチさんよ。
「いや......あのね、別に意地悪をしてこうなったって訳じゃないのさ。この魔道具の発動に俺の魔力を使ったでしょ? だから外から見てコレがどうなっているか、外から中やコレが見えなかった場合、この中を【千里眼】で覗けるかを確認してほしかったの。
【千里眼】の熟練度についてはダイフクには到底及ばないし、しっかりしてるから問題点があればちゃんと教えてくれそうだったから適任かなーって」
早口で言ったせいで胡散臭いモノを見るような視線を向けられてしまった。だけど今回のコレは悪ふざけ一切無しやねん。
『見えない、急に皆消えた、なんか壁があって【千里眼】じゃ覗けない......よく見ると何かがソコにあるのは、なんとなくだけどわかる』
簡潔にだけど、気になっていた所をしっかり教えてくれた。
「まじか......今ツキミちゃんがダイフクに向けて早くこっちに来なよって言ってるけど、全く見えないし聞こえない?」
『わからない』
「そっか......なるほど。付き合わせてごめんね。ありがとう」
許可されないと全く見えない聞こえないマジックミラー号だね。これなら安心だ。
説明を見る限り、これは俺らが中からどうにかする以外では絶対に壊されないだろう。
じゃあダイフクを許可しまーす。お待たせー。
『あっ......こうなってるんだ』
急に見えるようになった東屋にポカーンとするダイフク可愛い。ちょっとホーって鳴き声が漏れたのがポイント高い。
「これからも頼りにしてるよ。驚いた時のダイフク可愛い」
ハイキングの時とか、途中や休憩場所に東屋があったりすると嬉しかったなぁ。
さぁ俺も入ろう。
石のベンチも座布団とか布を敷けば十分休めるし、木も温かみがあっていい。
屋根のある休憩所を確保できたのがなにより嬉しい。雨の日が楽になったぞー!!!
◇◇◇
あれからたっぷり三時間休憩を取って、皆とてもスッキリした顔になった。まるで腸内で長期間熟成されいたブツが、遂にこの世に生まれ落とされた瞬間のようなお顔をしている......
そういう俺も、今......ヤバいくらいスッキリしている。体も心も闘争心も。
この東屋には、鑑定でも見えない隠蔽されている特殊効果があるのかもしれない。
雨宿りスポット兼、癒しスポット兼、パワースポットだと思っていた物が、まさかの人をダメにするスポットだった。
超便利アイテムかと思ったら実は呪いのアイテム。
不思議な効果により、牙を抜かれてしまったウチの子たちが動く気配すらみせず、声を掛けても生返事しかしない。
「はいはーい!! 休憩はもう終わり!! 先に進みますよー。これ以上この中に居ると、俺ですらここから動きたくなくなってしまうからね。今日中に82階層まで行っちゃおう」
やっぱり返事をしないウチの子を抱っこして強引に外に出る。ワラビは......ごめんね、持てないから引き摺るわ。
「解除」
外に出てすぐ草原に寝かせ、速攻でアイテムを解除。
何事もなく元のサイズに戻ってよかった......無事元のミニチュアサイズに戻った東屋を収納にしまう。これ、封印決定。二度と使わない。
無事外に出られたものの、皆がリラックスしている状態は変わらない。
仕事をしてくれている事が久しぶりに実感できた最強の精神耐性さん。俺だけだとしても腑抜けにならなくてよかったと思おう。
ミニチュア東屋を鑑定で何度確認しても結果は先程までと何も変わらない。だが、コイツは鑑定に表記されない謎の効果があるアイテムと判っている。
「うん、これはそういう事でしょう」
長らくお世話になっているこの鑑定スキルさんだけど、これよりも上のスキルがあると認識できた。
詳細鑑定、完全鑑定、鑑定極、看破、etc......まぁスっと浮かんできただけでもこれくらいか。
鑑定スキルはこのまま使っていれば進化するのだろうか......今後どうなるかはわからないけど、これからは鑑定の結果をただただ信じるのはダメだと教わった。授業料はしっかり払いに行くから覚悟していてくれ。
「モンスターや人を相手をする分にはウチの子たちは無敵だろうけど、ファンタジーなアイテムに対しては無敵ではない。俺の油断でもあるけど、こんな物を出すダンジョンマスターは許さない。この子たちをこんな目に合わせたクソは絶対に許さない......絶対にだ」
急いでテントを張ってテントの中に皆を寝かせていく。
「どうなるかわからないけど、今日はこのまま寝かせておくしかないか......もし目が覚めてもこのままだったら一度お家に戻って皆をピノちゃんたちに預けよう。その後はソロでダンジョンマスターぶっ殺RTAだ......」
今回のダンジョン探索によって浮き彫りになった問題が重くのしかかる。
何も無かったかのようにすやすや眠っていたり、ボーッとしながら焦点の合わない目でどこかを見ていたりするあんこたちを撫でながら、今後どうすればこんな事にならないか......それだけを考えながら眠れぬ夜を過ごした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます