第184話 肉、食わせようか

 71階層に到着して、そこで一泊して、翌日......


 なんと、大雨になりました。昨日到着した時は晴れていたのに。ダンジョン内なのに。


 テントにビッタンビッタンと打ち付けられる雨粒に起こされ、うるさすぎたから空間を隔離してその中に避難する事にした。


 昨日はとても頑張ってくれていたウチの子たちだから、そのまま寝かせておいてあげたい。

 ダンジョンマスターが天候を操って嫌がらせをしているのか、元々この階層がそういう設定をされているのか知らんけど......ウチの子たちの安眠を妨げるのは許さん。ぶっころ。



 昨日は珍しく怒ったりガチ戦闘したりしていたからから、本日は遅めのお目覚め。眠そうにしていたけど、用意しておいたご飯を食べ始めた。


 食いしん坊なウイちゃんは眠気と空腹の仁義なき争いが起こり、どうやら空腹が勝ったらしい。

 寝ぼけまなこでフラフラしながら俺のお腹をぺちぺちしながらキュウキュウ鳴いてる。おめめは九割方閉じていて可愛い。




 だからご飯をあげたんだけど......バケツに色が付いてるから中の様子が見れなくて困っている。ウイちゃんが全く動いていないっぽいから寝ちゃったのかな?

 ......大量の魚の中に顔を突っ込みながらよく寝れるなー。これ、バケツから引っこ抜いた方がいいのか?


 ............どうしよ。



 抜くか。


 息が出来なくなってたらヤバいよね。

 引っこ抜いてからマットの上に寝かせておいた。今後は目が醒めていない時はご飯おあずけね。


 俺とウイちゃんの様子を物陰に隠れて見ていた、食後のあんことツキミちゃんを発見。


 その様子がすっごい可愛かったから手招きすると、すぐにこちらへやってきてめっちゃ甘えてきた。


 しっかりお姉ちゃんをやってるけど、あんこもツキミちゃんも本質は甘えんぼさんだもんねー。匂い付けなのかなー。体を擦り付けてきてくれて嬉しい。


「我慢せずにいつでも甘えてきていいんだからね。俺はあんことツキミちゃんが自重せずに甘えてきてくれた方が嬉しいよ。周囲の警戒とかはダイフクやワラビがしてくれると思うからね」


 この言葉が嬉しかったらしく、箍が外れたあんことツキミちゃん。服の中に潜り込んできて、襟元から顔を出してぺろぺろしてくる。

 嬉しいんだけど、ツキミちゃんよ......服の中で羽ばたくのは止めて。


「あんこもツキミちゃんも大好きだからね。ずっとくっ付いてくれてもいいんだよ」


 ストッパーが存在しないイチャラブが続いた。甘えてきてくれるのって幸せだよね。好き。




 ◇◇◇




 心做しか俺の肌ツヤも良くなった気がする。

 あんこをブラッシングし、ツキミちゃんの羽を繕ったりしていただけなのに。



 さて、皆が起きてご飯も食べ終えたので作戦会議。

 議題は......雨だけど進むか否かだ。


 ・今日は休んでゆっくりしていてもいいと思う一票(俺)

 ・ゆっくりしてもいいけど、もっといい場所があるから移動しよう二票

 ・したいようにしていいんだよ一票

 ・ススム一票

 ・キュウキュウ一票


 進む系が多いという事で、先に進む事と相成りました。


 あんこにはまたアマガエルの合羽を着てもらい、ツキミちゃんとダイフクは傘を差す俺の肩に止まってもらう。

 ウイちゃんはワラビの首にぶら下げたハンモックに乗って御機嫌だ。濡れるのは問題ないらしく、合羽を着ることをとても嫌がって着てくれなかった。


 抱っこしたあんこをゆらゆらさせながらワラビの後を着いていく。



 ワラビはウイちゃんをびっくりさせてしまう事を恐れたらしく、いつの間にか音がほとんどしないカミナリ攻撃を完成させていた。扉を開けようとした時の静電気くらいの音量。


 敵を感知した瞬間に電撃を放って殺している姿は流石としか言いようがない。

 71階層は遮蔽物の多い湿原的なエリアになっている。

 物陰に潜んだり、虎視眈々とこちらの隙を狙っている敵が多いのに、一匹たりとも見逃さず、更に一発も外していない......流石ウチの最強スナイパーの直弟子だ。


 雨だと必中になるよねカミナリって。あ、違う......はい。ただのPSですね。



 ......うん、おわかりでしょうか。ワラビがかなり成長しているわ。めっちゃ頼りになる。


 早く最終形態にまでなってくれたらいいのに、全く進化する気配が見えないんだよなぁ......多分あの劇物は必要な量は食べていると思うんだけど。



 うーん......何がイケないんだろうか......あの子はキメラ。キメラかぁ......


 もしかしてこういう事か?


 ・ステータスが規定に達していない

 ・素材が規定量に達していない

 ・レベルが足りていない

 ・どれも足りていない


 ......これのどれかだって事なんだろうか。


 ステータス的なアレは多分大丈夫なはず。魔力は大台に乗っている。

 レベルは......まだまだ上げる余地がある。

 素材的な事は、収納にある肉類を片っ端から食わせてみればいいのかな?


 今のレベルはっと......262か。多いのか少ないのかわからん!!



 とりあえず500まで上げてみて、肉食わせまくっていれば何か変化があるような気がしなくもない。


「ワラビ頑張ってるねー。今日からしばらくご飯はお肉が多くなる予定だけど、皆はそれでもいい? なるべく要望は聞くよー」


 そうあんことツキミちゃんとダイフクに言うと......


『美味しいの作って』

『食べられないようなものじゃなければ』

『生はいやー』


 こう返答が来た。

 なるべく美味しいの作って飽きさせないようにするよ。俺、がんばるからね!!


「ありがと。今日はワラビが張り切っているし、俺らはもしもの時の警戒だけすればいいかね。あ、濡れたりしてない?」


 肩に止まってる鳥ちゃんズはその問い掛けに何も言わなかった。


 スルーされたかと思っていたら、ほっぺたにモフッとした感触が。

 言葉は無く、ただ寄り添うだけとか......なんかちょっとときめいちゃったじゃん!


「濡れちゃうかもしれないからもっと密着していいからね。さぁ張り切っていこう!!」


 俺の進行スピードが少しだけ上がった。


 ゴロピカスナイパーとエコーアザラシのおかげで、何事もなく湿気ムンムンエリアをクリアした。


 次の72階層はカエルばっかり出てきた。ドロップに複数のカエル肉が出てきた。ワラビの強化用素材として一種類ずつ回収......ヌメヌメが追加されないことを祈る。


 73階層もカエルだった。ただ毒々しい色のカエルや、鮮やかな色のカエルのみ。一応コイツらの肉も回収。


 74階層はナメクジとカタツムリだけ。何故かカミナリを弾いたので、俺が収納から海水を撃ち込んだ。

 やばい寄生虫や菌の温床って記憶があるのでドロップした物は全て放置。鑑定で食えるとか出ているけど、絶対に信用しない。これを食うとかリームー。


 75階層、確かジジィのダンジョンだとボス部屋だったような記憶があったけど、ボスはいなかった。

 敵はヘビオンリー。蛇革乱獲のボーナスエリアとだけ言っておこう。ピノちゃんが居ないのを思い出して寂しくなった。


 76階層、出てくるヘビがデカいヘビに変わった。それだけ。

 ワラビがぶち抜いて終わり。蛇革大量でウハウハです......あざーっす!!



 ヘビを多く見て、殺して......なんかとても心がザワつく。

 白蛇が恋しい。あのスベスベな蛇肌が触りたい。たまに見せてくれるデレが見たい。ダメだ......完全にヘービシック。


 早く会いたい。スリスリしたい。


 召喚能力を使ってみたら、ピノちゃんをここに喚べたりするのかな......でも、テイムしている状態だから召喚とは違いそう......別の白蛇が来たら居た堪れない。

 もし本物のピノちゃんが喚べたら喚べたで、『なんで喚ぶのさ......』とか、『作業の邪魔をしないで』って怒られそう......

 むしろ、怒られるのがデフォだろうなぁ。そして『一目見れたから満足したでしょ。早く送還して』って言うよな。


 ヘカトンくんも元気にしてるのかなぁ......






 寂しくなりつつ辿り着いた77階層。

 階段を下りたら何故か......ボス部屋と思しきデカい扉が目の前に鎮座していた。なんでこんな中途半端な位置にボス部屋あんねん。

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