第168話 余波に晒された方々


 ~side???①~


「各地とも混乱している最中、よく時間を作ってくれた。感謝する。

 堅苦しい挨拶は抜きじゃ。あの黒い柱について何かわかった事があったら教えてくれ」


「いや。まだ何も判明しておらぬな......異常な量の魔力が検知された事以外には何も......な」


「儂らも同じじゃ。教国が壊滅的な被害を受けた事と何か関係があるのじゃろうか......白い柱で教国が潰され、今度は黒い柱だからのぅ」


「魔国と亜人国を分断する山脈方面から上がったのは確かじゃが、それ以外何もわからぬ。

 魔力がデカすぎて、儂らでは遠いのか近いのかすらわからんかったのぅ。魔法使い共はこの世の終わりだ等と言っておった」


「......ふむ。こうなってしまえば我らで小競り合いしている場合ではないだろう。各国、国内で一番の冒険者パーティを派遣しあい、あの山脈の調査に当たらせるべきかと思うのだが、お主らはどう思う?」


「ふむ......そうじゃの。儂は賛成じゃ」


「それしかないかのぅ......儂もそれでよい」


「私もそれに賛成だ」


「決まりだな。それではこの件は我がギルドに通達しておこう。他に何かあるか?」


「国境の警備はどうするのだ。厳戒態勢を取るにしても、緊急事態と言っても兵共は協力しあう等納得せぬだろ?」


「そうじゃのぅ......ふむ、なら儂らは物資で援助させてもらおうかの。狸共や馬鹿共の頭がおかしくてのぅ......済まぬが事が起こるまでは儂らは兵は出せん」


「儂もじゃ。教国の末路を見ているクセにヤツらは危機感が足らんくての......儂らは冒険者とは別に調査隊を派遣しよう」


「どこもそんなもんだ。国のトップがマシなだけまだいい。警備の強化は任せてくれ」


「帝国は帝国側、皇国は皇国側の警備の強化。連邦国は物資の支援。王国は調査隊の派遣......これでよいか?」


「あぁそれで頼む......それで............」



 もはや四大国+無法地帯となったとある種族の集まり。未知の脅威シアンと可愛いもふもふ達に対する緊急対策会議は続いていく......

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ◇◆◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ~side???②~



 はぁぁぁぁ......

 ぐすんっ......

 はぁ......

 ふぅ......


 某国某所、ある建物の中に動物を模したぬいぐるみがそこかしこに置かれている煌びやかな部屋があった。


 揃えられている家具や小物は最高級品、そんな部屋の中に居る人物もまた煌びやかな装飾が施されている。


 世の中の少女が一度は夢見るであろう生活をしている人物とその従者達。誰もが羨むような空間のはずが、部屋の空気はお葬式の時の様であった。


 言葉は無く、響くのは溜め息と食器が発する音のみ。

 部屋の雰囲気は暗く、生気の無い影が四つ最小限の動きをするのみであった。



 そんな生活が続く事数ヶ月。人生に絶望したような日々を送っていたある日......




 ガタッッ......!!


 ガタッガタッガタッッ......!!


 スッ(アイコンタクト)


 コクリッ‪‪✕‬3


 グッ(ハンドサイン)


 ビシッ‪‪✕‬3(敬礼)


「今すぐ準備に取り掛かりなさい!! 邪魔する者は殴り倒しても構いません!!」


「「「はっ!!」」」


 動き出した四つの影。果たしてこの者達は何者なのであろうか。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ◆◇◆ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ~side???③~


「ねーねー。アレ見たでしょ? どうしようも無くない? 僕にどうにかしろとか言うけど絶対に無理だよ。瞬殺も瞬殺。話にもならないって。まだ死にたくないから止めようよ。てかヤツらを止めてきて」


「色々わかっていてそう言うのなら、今すぐ動いて馬鹿者共をどうにかすればいいじゃないですか。私たちが言ってもどうせ聞き入れられませんから。

 それすらしたくないのなら黙って死地に赴いてください」


「......疲れるから嫌だよ......というか副官や直属の部下達、それに近衛とかって、こういう時に率先して動き回るモノなんじゃないの?」


「いやですよ面倒くさい」

「頑張ってください」

「応援してます」

「そもそも私たちにどうしろと? 皆、貴方様の眷属なのですから性質も同じなんですよ」


「......皆ひどぉい......というかそもそもこんなヤツがトップになるとか頭オカシイと思わない? もうこのままヤツらだけ出撃させて、残った僕達だけで平穏に、そして怠惰に過ごしていこうよ」


「それはとても魅力的な提案ですが、ヤツらは目標と接触したら絶対に名乗り上げると思いますよ。貴方様が何も命じていなくとも、配下が勝手にしたとしても、武装した兵が集まって武器を向けられたら相手はどう対応するか......わかりますよね?」


「............(プクー)」


「はぁ......ムクれないでくださいよ。運んであげますから、頑張って対処してください」


「はぁい......」


 魔物の領域にあるとある国での一幕。

 君が誰か知らないけど、国の命運は貴方に託されているぞ。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ◆◇◆ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ~side???④~


 シアン達の棲み家から一番近い場所に位置する......と言っても相当な距離はあるが、不運にも一番のご近所さんであり、亜人の中でも相当な強さのある亜人達の集落での一幕。


「皆さぁぁぁぁん!! 落ち着いてっ......落ち着いてくださいっ!!」


 もはや悪夢とも思われる魔力の暴威に晒された集落は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。


「嫌だぁぁぁぁぁぁ」

「イヤァァァァァァ」

「終わりじゃ......もう終わりじゃ......」

「貴方......死ぬ時は一緒ですよ......」


 どこか既視感のある光景。

 こんな状況に陥れた張本人がコレを見ていたら大爆笑した後に、ドン引いていたであろう。


「大丈夫です!! もう収まりましたから!! 一旦落ち着いてくださぁぁぁぁぁぁいっ!!」


 失禁者多数、失神者も多数。恐慌状態になった者......数知れず。


 このような状況でも冷静に対処していると思われる集落の長も、立ち直るのが比較的早かっただけで一度着替えを済ませている。


「これから近場にいる集落の者達と合流し、今後の対策を考えます!! なので皆さん一度落ち着いてくださいっ!!」


「オギャァァァァァァ」

「ふぇぇぇぇぇん」

「ママァァァァァァ」


「私だって泣き叫んで取り乱したいのを我慢しているんですから......」


 一向に終わる気配を見せない状況に、遂に集落の長の精神が限界に達した。


「......いい加減落ち着けやゴラァァァァ!!」


 人間の数十倍はあろうかと思われる魔力を用いて威圧を放つも、あんなモノを浴びた直後の彼らには無風もいい所。


「なんでよぉぉぉぉ!! 私だってそれなりに魔力あるのにぃぃぃ......」


 陽光に晒されて煌めく美しい髪とスレンダーなボディ。誰もが見蕩れるような顔に特徴的な尖った耳を持つ彼女たち。

 これからどのような行動を取るのだろうか......

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ~その頃の元凶①~


「温泉きもちいいねー」

「シャァァァ」

「ぐすん......」



 ~その頃の元凶②~


「あんこが鹿に夢中......だと......!?」


「なぜだ......なぜ俺にはッ角がッ生エテイナインダッ!!」


 ワラビめ......あんこが乗ってくれているからっていい気になるんじゃないわよ......ギリギリギリギリ......(タオルを限界まで絞る音)



 ~その頃の元凶③~


「ねぇ......ダイフクさんダイフクさん」


『なに?』


「角って移植したらどうにかなるかな?」


『知らん』


「これは死活問題なんだ......頼む、真面目に聞いてくれよぉ」


『真面目な思考になったら聞いてあげる』


「ぐすん......」



 ~その頃の元凶④~


 キュッキュッキュ......


「ここに書いたことを実行してほしい。報酬はいつものを振り込めばいいかな?」


 グッ!


「おーけー交渉成立だ。頼むよ」


 グッ!


 こうして俺はスイス銀k......ではなく、収納袋に報酬を先払いで振り込み、最強のスナイパーを雇った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る