第160話 帰宅
......どうしよう。やっぱり説教不可避な未来しかないのだろうか。
もういっその事、説教が始まる雰囲気になったら皆をトロットロに蕩けさせて、リアルずっと俺のターンをやるか......
【多重思考】さんをフル活用し、脳内で色んなパターンをシュミレートしていく。
......はぁ、ダメだな。ダメダメ。全く勝ち筋が見えない。
ガチであの子たちに嫌われる事はないだろうけど、あの子たちとの関係が恐ろしく拗れる危険性がある。無理だ。
一縷の望みをかけて、腕の中のダイフクとツキミに縋った。
「ねぇ、お説教が回避される未来まで導いて欲しいんだけど......どうにかならないかな」
『無理。諦めて』
『遊んでいたのが悪い』
ダイフクのフォローは期待してなかったけど、ツキミちゃんからも突き放されてしまうとは思わなかったなぁ......
悔しかったのでほんのちょっとだけ、先っちょだけを意識して......例のアレを発動してダイフクを指姦する。このスキルだけは細かい調整が出来ない......熟練度上げにご協力お願いします。
調整の出来なさは、パル〇ンテで絶対にヤバい効果のモノが出てしまう......そんな感じ。
今回もご多分に漏れず、ダイフクをいちげきひっさつしてしまった。
「......なんかごめん」
ぐったりするダイフクに謝りながらも、このあとめちゃくちゃモフモフした。
◇◇◇
息も絶え絶えなダイフクと、普通のモフりをたっぷり味わい御満悦なツキミちゃん。
そんな鳥ちゃんズを膝の上に乗せながら、あちらの話し合いが終わるまで一旦休憩。
ダイフクをモフったせいでモチモチ食感の物を食べたくなってしまった俺。今日のオヤツは、ポンデリングとオールドファッションに決まった。
ミスターなドーナツ屋に行って色々食べた結果、気になる期間限定商品がある時以外はコレばっかりになるという結果に。他のものも美味しいっちゃ美味しいんだけど、何故か最後にはコレらに落ち着く。
あーこの慣れ親しんだモチモチと甘みで心が落ち着く。オールドファッションもこれぞドーナツといった感じ。仄かな甘みとサクサクした外側が美味しい。
テイクアウトしてきたオールドファッションを軽く温めて、夜中にバターを塗りながら食べるのは背徳感も合わさってとても美味しかった記憶がある。
ポンデリングを食べていると、なぜだかわからないけど頭の中にアイツが出てくる。
穴の中心にピノちゃんの頭を通してロアル〇ロスだよーってやってみたい。きっと怒られるけど......今度頼んでみよう。
変な妄想を振り払い、大人しくドーナツを食べていると横から視線を感じた。
一粒って言っていいのかわからないけど、ポンデリングをちぎってツキミちゃんの口に運ぶ。ドーナツのお裾分けを美味しそうに食べてくれて嬉しい。これだよこれ。最近の俺に足りなかったものは!!
俺の最愛の子の方へ視線を向けるも、未だにあんピノとキメラはお話を継続しているようだ。このままなんやかんやあって、お説教の件が有耶無耶になったりしないかなーと淡い期待する。
あ、ヘカトンくんもポンデリングどーぞ。一顔につき一粒ね。
とても穏やかな時間が過ぎていった。途中で意識を取り戻したダイフクにガッツリ突っつかれるも、ポンデリングさんを
同じモチモチ属性同士、何か通じるモノがあったんだろう。即落ち二コマみたいなチョロさを発揮したダイフクが可愛い。このまま俺に都合の悪いこと全て忘れてほしい。この後に控えているお説教は後回しにして、もうこのまま寝かせてくだせぇ。
だが、そうは問屋が卸さなかった。
その後すぐに戻ってきたあんことピノちゃんにダイフクが加わり、めっちゃ説教された。ツキミちゃんだけは説教に加わらなかずに俺の膝でゴロゴロしていて、キメラとヘカトンくんは輪に加わらずに大人しくしている。ちょっとポジション変わってほしい。
一番怒っていたのは何故かダイフク。
詳しく聞くと、黒トカゲのう〇こびちびちプラス拷問女王様のグロ映像を見せられた事に怒っていた。
勝手に見てたのそっちやんけ......と、小声でボソッと言ったら聞こえていたらしく、ダイフクの怒りが再燃して説教時間が伸びた。
超絶理不尽。千里眼で覗くなんて考えもしなかったのに。
あんことピノちゃんは、俺が舐めプってた箇所に怒っていた。
「......やったか!?」からの一連の流れは一度はやってみたいと思うやん。ロマンが通じなくて悲しい。
あんなヤツらの攻撃が効かないのは知っているんだけど、俺が攻撃を受けるのが嫌なんだって。
心配してくれるのはありがたいし嬉しいんだけど、君ら......俺にもっとえげつない攻撃してくるやんけ。
落ち込んだ俺が体育座りでいじけていますよ感を全開にしながら、思った事をボヤくとスッと目を逸らした。
ねぇ、なんで目を背けるのかなー。
やりすぎていた自覚があったみたいで挙動不審になったあんこたち。
眠いからもうここで終わらせよう。
意図せず形勢逆転できそうな状況が整った。こっからは俺のターンだ。
「ヒョウの時は悪かったと思ってるけど、黒トカゲの時はちゃんと意味があった行動なのですよ。
自分がこの世で一番強いと勘違いして、大正義トカゲ軍って思い込んでいた黒トカゲのプライドをへし折る為にやったんだよ。ダイフクは見てたならわかるだろうけど、俺が無傷だったと知った時の黒トカゲと取り巻きの表情......面白かったでしょ?」
早口で言った俺の言葉になんともいえない表情を浮かべるモチモチオウル。
こういう時には正論とかで言いくるめるんじゃなく、反論させる隙を与えずになんとなくでも確かにそうだったかもって思わせる事が出来れば......後はどうとでもなる。都合の悪い部分は知らん。
これでモチモチは無効化出来たはず。
残るはらぶりーなわんこときゅーとなスネイク。先にチョロめなお嬢様から攻め堕とそう。
「この際だから言うけど、あんこはあの時怒っていたからそんなでもなかっただろう。だけど、俺は......俺はっっ......!!
この世界にきてからずーっと一緒にいた大好きなあんこと離れ離れになってしまって、とても寂しくて悲しかったんだよ......やっと再会できたのに......こんなのってないよ......」
The情に訴える作戦。
こう言えばきっとっていう思惑はあるが、言っている事は本心を丸々晒け出しただけなので、この子らの超鋭敏な悪意センサーみたいなのには引っ掛からないと思う。
何の説明にもなっていないし、冷静な状況なら絶対に通じない。勢いで押し切る。
あんこはどっちかって言うと甘えんぼで、ここまで取り乱した俺を見捨てるなんて事はできない優しい子。
俺はそう思っているからこその作戦。
さぁ......一緒に堕ちようじゃないか。
「くぅん......」
悲しそうな鳴き声と共に俺に飛び込んできたお嬢様。ラスボスのピノちゃんが後ろに控えていなければ、このまま初夜ばりの甘い雰囲気になれたのに。残念。
チーム甘えんぼは堕ちて両手が幸せ。さぁ一騎打ちだピノちゃん。
「ピノちゃん......よーく考えてごらん。今回の件、全ての出来事......俺はただ巻き込まれただけなんだよ。それを頑張って終わらせてきたんだから、もういい加減許してほしいな」
無反応。悲しい。
「アホの策略に嵌って衝撃映像を君たちに見せてしまった事は、全面的に俺が悪いと思った。だから大好きな皆と離れてこの件を終わらせる為に寝る間も押しんで頑張ったの。終わったら甘やかしてくれるって信じて頑張ってきたんだよ」
もう何言ってるのか自分でもよくわからない。頭が働かぬ......
ずっと我慢していたけど眠気と疲れが無視出来ないレベルにまできていて、二度目のお説教が始まる前にはもう張り詰めていた糸はもうプッツンしてる。
「だからもう水に流して抱きしめさせて。ピノちゃん先生......ギューして寝たいです......」
めっちゃ渋々といった様子で溜め息を吐いたピノちゃん。頭の上までスルスル登ってきてペタンと寝そべった。これは......お許しが出たと思っていいのかな。
頭頂部に陣取ったピノちゃんの尻尾がビタンビタンと叩きつけられている。
『お家に帰りたいから運んで』
どういう意味なんだろうと不思議がる俺に向けて指示が飛んできた。
肩に止まるダイフクと、抱っこされたあんことツキミちゃん、頭の上のピノちゃんを連れて久しぶりの我が家へと向かった。
足りなかったエンジェル成分を過剰摂取してやると意気込んでいた俺だったけど、ハイクオリティな布団とエンジェルたちの反則すぎるタッグの寝技により、秒殺で寝かしつけられた。
◇◆◇
自宅であるキャンピングカーに向かっていくシアン御一行を見送ったキメラは、この場に留まっているヘカトンくんに向けて話しかけた。
『ワレハ、ドウスレバ、イイノカ』
どうしようもないと思いつつも、シアンが連れてきた者を真冬の屋外に放置するのは悪いと思ったヘカトンくん。
『かなり狭くなるけど、今日は私の家に来るといい。主人はかなり疲れていたから明日まで起きないだろうし』
『オネガイスル』
シアンに忘れられていたキメラを、自分の寝床に誘った優しいヘカトンくんであった。
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