第107話 閑話:あの人は今

◇◇◇


~side助けられた女性冒険者~


「ねぇミラ、私たちを助けてくれたあの冒険者様居たじゃない?結局来てくれなかったけれど」


「えぇ、そうね。お礼をちゃんと言えたのはよかったけれど......もっとしっかりしたお礼をしたかったわ」


ミラ――主人公が助けた女性冒険者の一人で、助けた時に精神が無事だった方。


アイリス――主人公が助けた女性冒険者の一人で、精神がヤバかった方。


その二人は、あの後冒険者を辞めて居酒屋っぽい食事処で働いている。

その居酒屋の業務が終わり、テーブルを拭きながら会話をしている。



「今何をしているのかしらね......フードに入っていたわんちゃんも可愛かったし、もう一度会いたい......」


「あんな事があったのに、今こうして真面に生活出来ているのはあの方のお陰ですしね」


普通なら日常生活を送ることも出来なくなりそうな目に遭ったのに、今こうして明るく、そして前と変わらずに生活できているだけでも奇跡。

それなのに、あの時の事を思い出し、振り返れる程まで回復している。


「アイリスは見れていなかったんだろうけど、ヤバかったわよあのお方......」


「ミラが羨ましい......とは言えないけれど、どうヤバかったの?」


「私のスキル【望遠】で見ていたのよ。あの豚が慌てて外に出ていったから気になって」


冒険者のパーティ内で弓で戦い、遠距離攻撃とスカウトを担当していたミラが、話を続けていく。


「よくわからない攻撃をして、あっという間に豚を首だけにしたのよ......あの憎い上位種全てを、一瞬で」


「本当なの?やっぱり凄いのね......あの冒険者様」


パーティ内で回復を担当していたヒーラーのアイリス。豚の好みだったのか、執拗に犯されていてその時の事は覚えていない。


ちなみにこの二人、シアンの名前をギルドで聞いているが、畏れ多く感じてしまい名前を呼べなくなっている。


後片付けを終えて、店を後にする二人。

二人一緒に暮らしているアパートに似た家へと帰っていく。


「ギルドでも大立ち回りしたそうだし、そこは褒められた事ではないけど、ぶっちゃけアイツらの自業自得よね」


「まさか私達の恩人にあんな事をしていたなんて......あーあ、私も中で見たかったわ」


帰り道になってもまだ話は終わらない。

助けてもらえただけでなくアフターケアもされてしまい、普通にファンになってしまっている二人。


倫理観は日本とは違うので、あんな事を仕出かしていても、全肯定とはいかないものの、かなり好意的に受け止められている。

あの時ギルドの中にいた冒険者達も、報酬やお詫びの品を貰えた事と、ギルド職員共の悪行を知らされたせいで、彼に憤りを感じている者はいない。


「それは私もよ。もう一度会いたいわ」


「知っているわ。貴女、毎日寝る時に冒険者様にもらったタオルを抱きしめて寝ているものね」


「アイリスだってそうじゃない!ニヤニヤしながら顔を埋めてるクセに」


言い合いをしながらも、笑い合いながら思い出を語らう二人。

楽しく夜道を歩いていると、最近話題の冒険者クランとすれ違う。


皆同じ武器を装備し、道具屋を営むグループと、冒険者のグループに別れて活動している。

全員が見目麗しく、実力も凄くて有名なのだが......シンボルマークが不思議で奇っ怪な事でも有名なのだ。


その不思議なシンボルマークのお陰か、小さい子ども達に大人気で、シンボルマークの入っているグッズは彼女らの店の主力商品となっている。

大人たちも、老若男女問わずに気さくな対応をしてくれるので、彼女らのファンも多い。

そんな彼女達の事を、誰しもが口を揃えて言う。


「あのシンボルマークは何なのだ......」と。


ミラとアイリスの二人も、きっと鳥なんだと思う......ってぐらいの認識である。


「あの子たちも凄いわね。よくわからないけど、不思議と癖になるマスコットキャラクターを生み出したり、僅か数ヶ月で王都でも指折りの実力者になったり」


「私たちも、あのわんちゃんのグッズとか作って売り出します?あの子たちの店に売り込みましょうか」


「それもいいかもね。さ、家に着いたわ。今日は疲れたから早く休みましょ」


「えぇ、このままだと朝まで語り合っちゃいそうですものね」


そうして彼女達の一日は終わっていく。次の日から、わんこの人形の制作に取り掛かる彼女達。

果たして無事に人形を完成させられらのか、そしてその人形の売り込みは成功するのだろうか......



◇◇◇


~side助けられた女性達~


「ねぇリーダー、アタシ達もようやく認められてきたね!あのおにーさんに、頑張ったんだねって褒めてもらいたいなぁ」


一際元気なこの少女はレーナ。助けられた女性達の中で一番若く、そして小柄であるが、戦闘の才能が女性達の中で一番あったらしく、メキメキと実力を伸ばしているクランの特攻隊長。


「そうね、貴女はいつもそう言って頑張っているもの。いつかまたフラッと現れてくれるわ」


そう答えるリーダー。

あの時にシアンとやり取りをしていた女性で、名前はエルザ。

幸か不幸か......あの時のやり取りのお陰で、すんなりと女性達のリーダーに任命される。リーダーシップもあり割と適任なのだが、本人は他に適任がいると思っている。


「それにしても......あの御方からもらった装備......異常......戦うの楽しい......」


結構ヤバい領域までヤク漬けにされていた女性のマーニャ。元々は大人しく、店舗経営組に居るような子だったが、バトルジャンキーになってしまった。

狂気に染まったような戦い方をするので、見た目の可愛らしさの割に、他の冒険者達から恐れられている。

この三人を中心メンバーに据え、冒険者組は王都で一目置かれるまでに成長した。


可憐な女性達が、訳の分からん生物を旗印にして活躍するという異色さも、大いに影響している。


既にピンときた方も多いだろう。訳の分からん生物とは、シアンの扮していた“某畜生なペンギンツバメ”である。


この顔にピンと来たら異世界転移者、転生者。

きっとソレを見てしまった異世界転移者の先輩も後輩も、同じ事を言うだろう。


「「なんでつば〇郎がシンボルマークになってんだよ!!」」......と。



経営組の女性の中に、絵の上手い女性が居て、完璧に書き上げたペンギンの絵。

それを元にして、裁縫の得意な女性が、シアンに貰ったマントに装飾を施していった。

手先の器用な女性が、キーホルダーっぽい物を作成して、貰った剣鉈に付けられるアクセサリーを開発。モデルはもちろんペンギン。

ちなみに、彼の絵もその際に描かれており、彼女達のアジトに大切に飾られている。



◇◇◇



~side経営組~



「ありがとうございました!また立ち寄ってくださいね!!」


「はい、今日もお疲れ様です!連日大盛況で嬉しいけど、結構疲れるね」


「はいはい、さっさと閉めちゃうわよ。もうすぐ肉体労働者達が帰ってくるはずだから、それまでに終わらせちゃうわよ」



元気いっぱい、小柄で愛らしい看板娘のアム。庇護欲を刺激されたおじさん達のアイドルになっている。

しっかり者で経営組のリーダーのリーリャ。冒険者組よりも纏めやすくて、経営組でよかったと思っているクールビューティ。

皆のオカン......そう呼ばれている事を、大変遺憾に思っている二十代前半のエイル。

母性が溢れまくっている笑顔と、とある部位で世の疲れた野郎共のオアシスになっている。しかし言動は結構サバサバしていて、そのギャップにヤられた特殊性癖持ちの野郎を、生み出しているとかいないとか。


「はーい!今日のご飯は何かな?楽しみだねー♪」


「こっちはもう終わるわよ。早くやっちゃいなさい」


そんな事をしていると、外からガヤガヤと声が聞こえてくる。


「アムはもう終わる?あっちも帰ってきたから早くしちゃいなさい」


「はーい」



合計三十人程の、女性のみのグループ。

良からぬことを企むアホも居ないわけではないが、尽く潰されていく。

ダンジョンの中層以降に出るような武器、それとマント。これだけでも十分な戦力であるが、それに加えてあの劇物......もとい果物を食べているので、些か過剰戦力でもある。


実は経営組もしっかりと戦闘訓練、実戦も経験しているので、舐め腐ったアホはいとも簡単に撃退されている。



もう騎士団と争っても余裕で勝てるような彼女達。今日も沢山の女達がキャーキャーと騒ぐ、あの頃からは考えられない幸福な夜がやってくる。




そんな彼女達のクラン名は『謎の生き物ミステリアスクリーチャー』なんの捻りもないその名前。経営している道具屋も同じ名前である。


辛い経験をした彼女達だが、いつの日かこの名前がシアンに届くといいな......そう思って生活している。

彼にその想い名前が届いた日には、きっと彼は頭を抱えてしまうだろう。


頑張れ女の子達よ!ヤツにその名前が届くまで......!







さーて来週の〇〇〇ピーーーーさんは......


・元冒険者、あんこ人形を作る

・元冒険者、人形の売り込みに行く

・元冒険者、経営組と意気投合

......の三本です。


それでは来週も見てくださいねー!じゃんけんぽん!



チョキ



ウフフフフフフ。



※続きません。



───────────────────────────────────


かなり遅いですが、50万PV突破記念、無事に三ヶ月も続けられたセルフ祝い、読んで下さっている皆様へ、感謝の閑話です。

人に救いの無い物語......たまには人間が救われたっていいじゃないと言う思いで書きました。



すいません嘘です。


ペンギンが王都に広がってしまっているってのを描きたかったんです。すいません。

純度100%の悪ふざけです。


これからもどうか、この作品をよろしくお願いします。読んでくださり、ありがとうございます。

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