第97話 決意新たに

 不毛なやり取りの後に、モチモチ触感の不思議な羽毛に癒されてちょっとだけ興奮してしまった俺がいた。


 うん......ちょっとだけ反省しないとな。


 そう思いながら事後みたいになっている白い子を見下ろす。練乳とかを垂らしておけば事後感が増すなぁ......と馬鹿な事を考える。


 でもまぁ仕方ないよね。

 普段ツンツンな子が、ちょっと怯えた様子で寄り添ってくる感じは卑怯だよ。

 庇護欲をグサグサと、刺殺するレベルで刺激してきやがったから、こうなってしまうのは仕方ない事なのだよ。

 白い子は羽毛が分厚いから丸っこく見えるだけで、中身は結構スリムなんだとわかった。


 正気を保てずにモフりだした俺を威嚇する為に、ブワッと毛を逆立ててまん丸フォルムになっちゃったのは......うん、アレが最大の悪手だったね。


 今後白い子が俺に警戒心を抱かないでくれることを、心から願うばかりだ。

 警戒されまくっていたら悲しいから、警戒しても無駄だよって強引に理解わからせちゃうかもしれない。




 それはそうと、鳥ちゃんズの名前を考えなければと思ってはいるんだけど、どうも黒い子にしっくりくる名前が浮かんでこない。


 白い子はもう大福か団子......そう、モチモチ系のどちらかにすると俺の中でもう決まっている。決定事項だ。


 しかし問題は黒い子だ。


 本当にどうしようか......おはぎにしか見えなくて、それ以外が全然思いつかない。


 あんこと、結果的にピノちゃんも甘味系の名前になったし、白い子もそっち系だから甘味縛りがいいよなぁ。


 さぁどうしよう。


 白い子と黒い子の性別が逆だったら、最初の案で決定だったのに......


 チョコやカカオ、黒ごま、餡子類、黒糖、炭系......



 早めに名前を付けてあげたいけど、一生もんなんだしよく考えてあげないと。


 でもなぁ、見れば見るほどおはぎなんだよな......おはぎの断面図に激似なんだよ。


 ぐぬぬぬぬ......これほどの難敵は久しぶりですよ......





 あーでもない、こーでもないとうんうん唸りながらアレコレ考えていたけれど、結局なーんにも思い浮かばず......

 お出かけしていた御三方が仲良く揃って戻ってきたので、シンキングタイムはここで一度中断。


 戻ってきたばかりのあんことピノちゃんが、ぐったりしている白い子をチラ見して、『こいつ......またアレをやりやがったな......』って感じの冷たい視線を俺に向けてくる。


 悔しい......でもその視線ちょっとクセになりそう。ビクンビクンしちゃう......



 ......嘘ですごめんなさい。スキルでドーピングされてるだけのクソザコメンタルなんで、優しくしてほしいです。



 起きてきた白い子からも恨みの篭った視線をもらい、すぐさま逃げるようにキャットタワーの巣穴へと避難されてしまった。


 一人取り残されて悲しくなっていたけど、黒い子だけがそんな俺に擦り寄ってきてくれたので、まだメンタルは致命傷を負っていない。



 少しの間、黒い子に癒されて気持ちを持ち直し、あんことピノちゃんも普通の目に戻った。冷たい目線はやめてくださいね。


 とりあえず皆が揃ったので夕飯にしましょうか。黒い子を撫でながら皆にご飯だよーと呼びかける。


 ご飯と聞いて巣穴から出てくるが、白い子は警戒心バリバリで俺から離れた位置に位置取り、ピノちゃんは自分もやられやしないかと警戒していて俺とても悲しい。

 でも、あんこと黒い子は隣に座ってくれて嬉しい。



 一応今回は皆に鮭のホイル焼きを配り、無理そうだったらいつものを出すから、無理に食べなくてもいいからねーと説明。さぁどうなるかな。


 銀色で、どう見ても食べ物じゃなさそうなモノを前にして全員が困惑している。

 黒い子とあんこが俺の顔を覗き込んで、何これ?食べ物なの?って訴えかけてきている様子が大変可愛らしい。



「これはねーこうやってから、中の物を食べるんだよー」


 アルミホイルを開けてあげると、中に入っていた物にびっくりしている。ふわーっといい香りが広がる。


 何かに包まれている食べ物を見るのは初めてだもんね。


 味付けはどうすればいいかわからないので、とりあえずそのまま食べさせてみる。俺はバターとポン酢をかけていただきます。



 アルミホイルを開けた時に感じた素材のいい香りが、溶けたバターの香りに蹂躙されていく。あぁ、至福の香り......

 そこにポン酢をチョロっと垂らして刻みネギを散らす。


 さぁ食うぞー!と意気込んだ所で袖をクイクイっと引かれる。

 あんこが袖口を咥えていて、黒い子は服の裾をくちばしで引っ張っている。何これ萌える。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 どうやらあんこと黒い子は、俺と同じ食べ方がしたいらしい。

 ピノちゃんも寄ってきてバターと醤油をかけてとおねだり。この子は醤油大好きだね。

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 白い子はそのままでガツガツ食べていた。そのまま食べてもおいしいよねー。

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 バターの香りは暴力的だもん......惹かれるのも無理はない。バターとポン酢、醤油をかけてあげると嬉しそうに食べ始めた。

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 美味しい?って聞くまでもないですね。

 全員が美味しそうに食べているのを見て大満足。この様子ならちゃんちゃん焼きもハマりそう。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 さぁ俺も一口。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 身がピンクじゃないのに味がサーモンなのは違和感だけど、これは美味しいサーモン。

 キノコの旨味と玉ねぎの甘みが、蒸し焼きにされる事によって存分に引き出されている。

 そこにバターとポン酢......鉄板ですねぇ!!

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 日本酒がサイコーに合うんだろうけど、まずはビールだ。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 黒いラベルの瓶ビールを手酌で注いで一気に呷る。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ビールはいつ飲んでも美味しいけど、最初の一杯だけはガチで格別なのはなんでだろうね。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 あぁ素晴らしき食事風景。

 これだよこれ......自分の作ったモノをガツガツ食ってもらえる幸せ。

 おかわりもあるからねー!遠慮しないで食べてねー!!ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 うん。それにしてもこのサーモンもどき美味いな。脂はノっているけどクドくなく、旨味がかなり濃い。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 こうなってくると異世界の海の幸が気になる......いつか海に行けたら乱獲しよう。

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 全員が一回ずつおかわりをしてくれて、皆が皆大満足で夕飯を終える。

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 食べ終わったあんこは膝の上に、ピノちゃんは胸ポケット、黒い子が左肩に。

 白い子だけは美味しかったとボソッと呟いてからキャットタワーへ戻っていった。ツンデレさんめ......ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 食後は日本酒を飲みながら、ちまちまとサーモンをつつく。

 衣、食はいつでも万全だから、残りの住の部分を充実させられればパーフェクトな異世界ライフ。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 俺、頑張るよ......絶対に皆で幸せな家庭を築こうね!!ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 膝の上を占領して寝転んでいるあんこを撫でながら晩酌を続ける。川の音と澄んだ空気、秋を感じさせる風が気持ちいい。

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 この山の中の居心地は最初のジャングル以外はかなり良いので、最大の目的である牛をどうこうしながら、この山中で一冬を過ごしてもいい気がしてきた。

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 冬の猛威がキツかったのなら、トレーラーハウスかキャンピングカーを取り寄せて、その中で生活しながら冬を越してもいい。

 そこまで冬が厳しくなかったら、遊牧民みたいなテントを張って、そこで生活をしながら美味牛の肉質向上実験をしてみてもよさそうだな。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 詳しくは明日この子たちと相談しながら決めようか。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 あぁ、とても幸せな時間だわ。

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 胸ポケットから出てきたピノちゃんと一緒に晩酌を続けていたら、黒い子は俺の肩に乗りながら器用に寝始めてしまった。

 あんこは既にぐっすりすやすや夢の中で、スピスピと寝息を立てている。

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 黒い子も白い子も夜行性とかではないのかね?野性味も全然感じない。

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 一度中断してあんこと黒い子をテントの中の寝床へと運び、ピノちゃんとまったり秋のひんやりした空気の中で晩酌を楽しんだ。

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 晩酌の最中に黒い子の名前も思い浮かんだし、今日の夜はとても有意義で良い夜だ......。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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