第80話 朝のアレコレとザ・手
顔面に冷たさを感じて目を覚ます。
ローブに隠れていない場所は、気温調整してくれないのは不便だな......
でもこれ以上のスペックを求めるのもアレだし、ローブを魔改造してもらうのは我慢しよう。
すっかり朝晩が秋めいてきて心地がいい。
夏が終わりさえすれば、後は気持ちよく過ごせる気候の秋だから楽しみだ。
秋といえば芋、栗、秋刀魚、ナス、キノコなどが美味しくなる一番好きな季節。
普通の物はお取り寄せ出来るのは知ってるけど、ガチで旬な物をお取り寄せ出来るのかは今後検証をしないと。
秋の夜長に七輪で秋刀魚や秋茄子、キノコを焼きながら、月見酒。
焼きあがった物に醤油かポン酢をチョロっと垂らして、ハフハフしながら食べる......
そして追い討ちをかけるように日本酒をキュッと。
もちろん、ポン酒だけが正義ではない。
白米を食べてもヤバい事になる。焼きたてキノコのバター醤油、焼きたて秋刀魚なんてエンドレス白米だ。
......あ、朝っぱらから考える事じゃなかった。悲しくなってきちゃった。
一ヶ月後くらいに旬を迎えると思うから、そこら辺を目安にお取り寄せを試してみよう。
脂がノってる秋刀魚が取り寄せられたのなら成功だろう。
脂のノリが少ないパサついた秋刀魚もそれはそれで美味しいんだけど。
朝からそんな事を考えていると、当然のように日本食の舌になってしまった。
なので、今日の朝食は和食にします!
だし巻き玉子......を作るスキルは無いので、だしオムレツを作る。
四角いフライパンみたいなアレは上手く操れる気がしない。
ちょっとオサレに中央に明太子を入れた物を作った。
シャケを焼き、作り置きの豚汁、お新香を用意した。
......うん、完璧だ。納豆が欲しいけど、お嬢様が嫌がりそうだから止めておく。
お嬢様たちは......まだ寝ているな。
早く食べたいけどあの子たちが起きてくるまでは、久しぶりに素振りをして時間を潰そう。
..................ヒィッ。
......最近全然出番の無かった骨喰さんが怒りの波動を出している。
明王さんと龍さんからも、なんか不機嫌なオーラがブワッと溢れ出している。
......ごめんなさい。
今日は思いっきり振り回させて頂くので、どうにかお気を鎮めてくださりませんか?
拭いている時とか大人しくしていたから、大丈夫なのかと思っていたのに......
いえ、文句などあろうはずがございません!!
はい......これからは鍛練をしっかりと致しますので。
説教から始まった鍛練だったけど、一時間ほどみっちり頑張った。
途中で上空を飛んでいる生物を斬ったり、木を切り倒したりもした。
とりあえず何かを斬りたいって思う日があるらしいから、使えって言われる。
そうだった、この刀って妖刀だもんね......でもね、なかなか敵が出てこないのよ。
ゴミクズみたいなヤツがいたり、モンスターがいたらお願いするから......その時はお願いします。
汗をかいたので、軽くシャワーを浴びてから戻ったけど......まだ眠り姫たちは起きていなかった。
チューしたら起きるかもしれないけど、そこまで急いでいないのでタバコを吸いながら待つ。
疲れた身体にニコチンが染み渡る......
きっと有害物質も無効化されてるから、染み渡るって表現は正確ではないんだろうけども。
今日はお寝坊さんだったみたい。俺が起きてから二時間ほど経過して、ようやく起きてきた。
おはようと挨拶をして、もふもふとすべすべを楽しんでから朝ごはんを食べた。
起きてから時間が経過していてお腹がかなり空いていた俺は、ご飯をおかわりして大満足な朝食。
日本食は基本的に塩分多めだから、白飯が進む進む。止まらなくなるよね。
塩っぱさと旨味が、銀シャリとタッグを組んでノーガードの殴り合いを挑んでくる。
このマイボディは、呪いの胴装備を受け付けないから、その気になればダイエットしてる人が真顔でぶん殴ってくるくらいの量をカロリー気にせずに食べられる。
......あの頃の名残りで、罪悪感は感じるんだけどね。
謎の言い訳をしながら、後片付けと移動の準備を進めていった。
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◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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さて、お嬢様の穴掘りをしっかりと見るのは、スキルをゲットしてから今日が初めてだ。
スキル無しの時の掘り掘りは可愛かったなぁ。
子犬が短いアンヨで必死に地面と格闘してるの。永遠に見ていられる。
あの時のイメージが残っているから......スキル有りだとどうなるのか楽しみでございます。
今日はずっと可愛い姿を観察できると思うと、もうね、テンションが爆上がりなんですよ。
ワクワクが止まらない!
ワクワク補強がもう一度見たかったです!
まぁそんな事はさておき、準備が出来たので移動開始。
砦っぽい所で見張っていると思われる監視役に見つからないような場所までコソコソと進んでいく。
いい感じに隠れられる木が生い茂った場所を見つけたので、そこから地下通路開通ミッションをスタートさせる。
じゃあお願いね!と伝えると、任せてっ!頼もしいお返事をしたお嬢様。
はい?ちょっ......えぇぇ......
お嬢様が今までに見た事ないサイズに変わってメ〇パニを食らった俺。
今までやらなかったサイズになっちゃったお嬢様......どうしたのか聞いてみると、新しく覚えたスキルの効果でカサ増しできたとの事。
ふむ、でもこれはこれでいいな。
............もふもふに包まれながら寝れる。今夜頼んでみよう!!
水を差してしまったが、お嬢様は気にせずに穴を掘り始めた。
―――穴掘りスキルってすげぇ!!そう思いました。
みるみるうちに俺も通れるサイズの穴が出来上がり、地下二階くらいの距離まで掘り進められた。
手に入れた当初は、可愛いスキルを手に入れられてよかったねぇ♪とほんわかした気持ちになっていたけど......このスキルがあれば、一夜で地下帝国の土台を作れるわ。
チンチロをやったりして稼いで、地上に出て本能のままに行動しているハンチョウさんの仕事が無くなってしまう。
そしてこの地下通路の床が、きんっきんに冷えてやがるよぉぉぉぉ!!
この空間ひんやりして気持ちいいんだけど!!何これ!?お嬢様の穴掘りによる副次効果ですか??
快適で素晴らしいので、家を建てる時に地下を作ってもらおうと決意。
彫った後の土がどうなってるのかわからないけど、全然出ない。
削り取ってるとしか表現できない状態である......
頭の出来が悪いヤンキーから出てる幽霊みたいなモノが、ガオンッて効果音を出しながら右手を振るうアレみたいなモノっぽい。
現実は可愛くしっぽをフリフリしながら地下通路を作成しているハートフルな光景なのに、なんかゾクゾクしてしまう......
人を掘ったらどうなるんだろうと一瞬考えて、すぐに考えるのをやめた。
思考放棄した俺は、即座に隠蔽工作を開始。
あの時の山で手に入れた岩で穴を塞ぎ、糸で空気穴を視認できないサイズで開けておく。
これでバレないだろうし、どかそうとしてもなかなか大変な労力を必要とするだろう。
みんなのいる方に戻ると、急に離れた俺を待っていてくれたお嬢様と、床が気持ちいいのか動き回っているピノちゃんがいた。
待っててくれてありがとねーとお礼を言うと、作業を再開したお嬢様。
もしこの地下通路がバレたら、きっとヤバい事になる。
魔族側から攻め込むなんて事は無いだろうけど、きっと人間側は喜び勇んでココを活用するだろう。
お嬢様はウッキウキで穴掘りしてるし、ピノちゃんも楽しそうに動き回っているので邪魔しちゃダメだよな。
一応お嬢様に声を掛ける。
ここを使われるのは嫌だから、トラップを設置してから向かう......と伝えて、お嬢様にはそのまま穴掘りを続けてもらう。
十階建てのビルがすっぽり納まるくらいの深さくらいまで、穴を掘る。
絶対に飛び越えられない距離で。
目標の深さまで掘ったら、掘っている魔法の形状を変えて、地面から棘が生えている風に仕上げた。
穴の途中にカエシを数箇所作成して登れないように、日本人らしい気の利いた配慮をする。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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穴の入口は、◣◢←こんな感じに滑らかさを出しながら削っていった。
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仕上げに相当な量の魔力を使った幻影を出し、床が続いているように見せて完成だ。
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完璧な仕上がりだと思う!
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かなりの魔力を練りこんだ幻影だから、数十年は継続して偽床を演じてくれると思う。
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さぁて、早くお嬢様とピノちゃんの所に戻って、おっきい後ろ姿を存分に眺めないとな!!ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
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