第40話 発狂寸前の精神状態と地獄に天国

 さてと、戦利品をチェック致しましょう。


 まずは......あのクソ乱交ヤギ野郎のから見ていこう。



 ▼バフォメットの角

 粉状にしてからスプーン一杯分を度数の高いアルコールに混ぜて飲めば超強力な精力剤になる

 既に引退してしまった戦士でも24時間戦えるようになります

 服用には細心の注意を払ってください▼


 ▼儀式の錫杖

 とある悪魔が開催する怪しい儀式の時に使われる錫杖

 魔力を注げば催淫効果のある香を発する

 光属性に適正のある者がこの杖に魔力を注ぐと大変な事になるので注意しましょう▼


 ▼傀儡の指輪

 一見凄く綺麗な指輪だがこれを嵌めてしまうと、指輪の所有者の傀儡になる

 解呪不可、鑑定でも認識不能の世に出してはならない類のアイテム

 この指輪が誰かの所有物になると隠蔽され高価な指輪としか認識出来なくなる

 現所有者:シアン▼



 ......はい。あの乱交ヤギクソ野郎のドロップ品全て碌でもないモノでした。

 日本にいた頃だったら使いたいと思ってしまうような物だったけどさ。


 次は牛と馬のを。鑑定さんお願いします。



ㅤ▼激痛の捩れ槍

 とある牛の捩れた角で作られた槍

 この槍で傷付けられると激痛が走る▼


 ▼囚人の首枷

 この枷に囚われた者は全ての能力が封印されて三歳児くらいの身体能力になる

 何をしようが外す事は不可能

 囚われた者が死んだ時にのみ壊れて外れる▼


 ▼反転の薬液

 この薬液を浴びた者は全てが反転する▼



 牛馬からのドロップもやっぱり碌でもないモノじゃないですか!!あの牛野郎!!馬野郎!!


 槍だけは使い道あるだろうけどさ......

 問題は薬液だよ......


 どこでどう使えばいいんだよこんなん!!

 死体に掛ければ生き物になるのか?でも性別も変わるんだろ......

 生者に掛ければ死体になる......のか?それとも動く死体になるのか?

 もうこれについて考えるのはやめよう。考えてもわからなくなるだけだ。


 もうやだこのダンジョン......



 集めたダンジョンの宝箱からは常人目線からすれば良い物が出てきたけど、俺には全く使い所の無いものでした。


 金が必要な時にコイツらを売り捌こう。

 さぁ、多分あと10層だから気を取り直して進んで行きましょう。




 ◇◇◇




 クッッッソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!


 責任者ぁぁぁぁいっぺん出て来いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!







 91~94層はそれはもう地獄でした。えぇ......それはそれは......もう地獄でしたよ。


 森以上に地獄だったと思う。


 ひたすら直進するだけの道。


 ただただおっそろしく長いだけの直線。


【神体強化】を全力発動させてダッシュしても1階層進むのに二日掛かった。

 攻略させるが気ないんでしょうね。常人ならばここ一層進むだけで気が狂うもん。



 揺れが起こらない走法と、衝撃を逃がす膝の使い方をマスターした。マラソン地獄は嫌だよもう......


 よく発狂しなかったなと思う。

 風景は延々と同じ物、敵はわらわら、直進しかしてないのに直進するのが正解なのか?と思えてくる精神状態......


 この子たちが居なかったら、ダンジョンの中でバ〇スをしてましたよ。


 94階層は龍さんにお願いして飛んでもらった。

 94層に降りて、寝る前に刀を拭いてたら龍さんに乗せて飛ぼうか?と言われて、その優しさに涙してしまった。


 贅沢を言えば、あと2階層早く言って欲しかった。



 とまぁこんな感じで攻略してきましたとも!

 93階層のど真ん中に学者共with斧ゴリラを置いて行ってあげたい......と何度思った事か!ちょっと忘れかけてたけど、しっかり思い出したかんなクソ共がっ!!



 そんなこんながありつつも、やっとこさ95層への階段に辿り着き、そこで一泊して今に至る訳ですよ。


 さて、今から95層へ降りるけどボス部屋までの距離がこの階層くらいあった場合には、俺の全力の闇魔法で作ったデス〇ール擬きをボス部屋方面へ向けて撃ち込んでやりますよ。



 降りた先にはすぐボス部屋がありました。

 よかった......ほんっっとによかった。


 この子たちもうんざりしてたし......

 あ、テンション上がってる......可愛いなぁ癒されるよぉ......



 ん?なになに?


 うん、わかった。

 移動中に暇すぎて合体技考えてたもんね。試したいんだね。


 この環境に嫌気がさしてたのは俺だけじゃない。この子たちも苛立っていたのだ。

 正直言えば負の感情は持って欲しくないんだけど、気持ちは痛いほどわかるからなんとも言えない......


 きっとこの階層のボスは、俺が予想しているボスなんだと思う。


 そして絶対に可愛くないと思う。


 さぁ行こうか。




 ......はい。正解でしたね。



 ▼ケルベロス

 95階層の番犬▼



 犬の顔ってより熊と狼の中間くらいの顔が3つあり、ムキムキな犬ボディとゴワゴワしてそうな体毛......


 もっとファンシーなケルベロスがよかった。


 さぁ合体技を試す時だよ!魅せておやりなさい!怪我しちゃやだからね!


 ウチの子たちが合体新技の氷弾を撃ち込む。



 見た目にはただの氷の弾。ちょっとキラキラしてるだけの。


 その氷弾が体内に入ると......

 氷の内側に閉じ込めた真空でも水の中でも氷の中でも消えないファンタジーな炎が体内で炸裂し、弾けた氷の破片でズタズタになり、白く輝く炎で内部を灼かれる。


 手榴弾を龍さんの背中から、モンスターの群れに向けて俺が投げていた時に思いついた技らしく、あんこちゃんとピノちゃんで相談しながら作り上げていた。



 消えない白い炎......魔法ってすごいね!としか語れない。消すのはピノちゃんの意思次第。


 あんこの氷も俺のパンチに耐える超合金も真っ青な硬さ。


 無敵なウチの子かわいい。喧嘩だけはしないでね。あと反抗期も。

 ケルベロスの反応消失しました!ピノちゃん炎消していいよー。


 成功!ちゃんと出来たよ!とドヤってるあんことピノちゃんに頬ずりをしながは感動を伝える。......私欲が混ざってるのは仕方ない。

 俺がもっと勉強してれば......特に化学的なのをもっと頑張っていれば色々教えてあげれたのにっっ!!!


 覚えてた事も忘れちゃったし......試験とかは一夜漬けで乗り切っていた事の弊害だ......


 今更過ぎたことを憂いても仕方ないので後悔はするが反省はしない。大切なのは今だ。


 ドロップの大きな毛皮と宝箱を回収して次の階層へと向かう。

 きっと最終エリアだと思うので、広くなかったらいいな。ほんとマジで頼みますよ。




 やったぁぁぁぁ!直線じゃない!直線じゃないんだぁぁぁぁ!!!


 ......でもどうせ仕掛けがあるんでしょ。

 ......きっとへし折られるマイハート。あたい知ってるんだからね。


 気を取り直してドロップ品と宝箱を鑑定や!


 ▼ケルベロスの毛皮

 魔法耐性と物理耐性の高い毛皮

 雷属性だけには弱いので近付けないように▼


ㅤ▼血の池地獄の掘削機

 これで地面を掘ると血にそっくりな色の温泉が湧き出す

 見た目は地獄のようだが泉質、効能共に極上

 疲労回復、肌質向上、各種病に効果があり、傷を少しずつ癒す

 この魔道具は一度使えば消滅する

 魔樹の木材で大きな湯船を作るのがオススメ▼



 95層目にして初の大当たり!!!ゆったりとした余生が潤いますね!!!

 あ、スーツも大当たりだったわ。


 嫌な事、辛い事は多々あったが、コレが出ただけで余裕で負債を回収出来ましたよ。

 俺は歓喜しているが、あんことピノは何コレ??いい事あったの??と不思議そうにしている。


 なので今世紀最大のドヤ顔をキめながら「最上級のお風呂が作れる物だよ」と教えてあげた。


 あんこは歓喜し、ハートマークの氷の結晶を周囲に浮かべて駆け回っている。


 ピノちゃんは花火を打ち上げて喜びを表現し、周囲にハートマークの炎を浮かべている。


 ん?なぜこんな事が出来てるのかだって?94層を踏破中に龍さんの背に乗りながら感情表現を表す方法を教えたのです。


 まぁまんま絵文字を浮かべたようなもんです。

 魔法の練習になりつつ、感情を表現。


 マーベラスですよ! 一大スペクタクルですよ!!

 俺は闇魔法で周囲から光を無くした。暗くなったことで、炎の煌めきを反射する氷の結晶がより一層美しくなり、どんどん打ち上がる花火が闇夜にとても映える。


 俺は長い事その光景を眺めていた。


 地獄にあった天国......はしゃいでる自慢の子たちを写真に収めたのは言うまでもない。

 素晴らしい光景が96層の入口に広がっていたこの日は、俺の中で奇跡の日と呼ばれる一日なった......


 日付が曖昧だけど、今日から何日経過したかきっちりカウントして、外に出たら何月何日か知ろう。


 そして毎年温泉に浸かりながらこの光景を見ようと心に決めた。

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