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二回目の仕事で仲間が一人増えた。連語加盟国の一つ、エスタンシャ王国に船籍を置く8000トン級貨物船を襲った時だ。
前回同様、ジョユスが獲物の船の船橋でマッキーン11と手榴弾で乗員を脅している時だ。
鬚もじゃの柄の悪そうな船長が不意に。
「この船を襲っても、お前らが欲しがるようなもんは何も無ぇよ」
と、半笑いで言うので不思議に思っていると、アルネスが前とは違い眉間に皺を寄せた困り顔でやってきて。
「船長、この船の積み荷なんだけど、これだった」
そして手を引いて連れて来たのは、全身に灰色の毛を生やし、頭の両方に尖った耳を生やした、青い瞳の二足歩行の生き物だった。
顔も口の周りが犬の吻の様に突き出し鼻も黒く濡れている。オオカミ人間か犬人間と言った所か?
厳密に言えば獣人、多毛人とも呼ばれる南方大陸の南部に暮らす原住民だ。
しっかり言語を操り、北方人種や角や尻尾を生やす他の南方人種と変わらぬ知性を持つ立派な『人間』ではあるが、容姿をあげつらい動物並みの扱いをする者も少なくはない。
多分、ジョユスが目の当たりにしている者もそういう扱いを受けている一人だろう。美しく輝く毛の間に寝藁と思しき藁くずが絡みついている。
「知恵の有るちょっと上等な獣人を選んで本国に連れてゆく途中だ。向こうの鉄道やトンネル工事の現場で使うんだと、人間の労働者が事故で死んじまうと補償やなんじゃかんじゃで面倒らしいからな。獣人なら死んでも誰も文句は言わねぇし、何時でも補充できる。まぁ、言葉をしゃべる牛や馬さ」
何て言い草だと思いながらも、これはババを引いたなとも思いつつ「邪魔をした。安全な航行を」と言い残し立ち去ろうとすると。
「俺を連れてってくれ!」
と犬人間が言い出した。声の高さからして少年の様だ。
「あっちに行ったら、一年もたたないうちに死んじまう。それよかあんたらの仲間に成った方がマシだ!」
さらにそう言うので、しばらく考えてジョユスは船長に。
「本人が連れてゆけって言うから連れてゆくぞ、まだ二回目の空賊行為なんでね、手ぶらって言うのも締まりがない。送り先には病気で死んだんで空に捨てたとかでも言っとけ」
と、言う事でこの少年を仲間に引き入れることにした。
名前はヌーナク、歳は15。南方大陸の凍土地帯の生まれらしい。いまは栄養状態が良くないからか痩せているが、骨格はしっかりして丈夫そうな少年だ。
ディリックは「俺がしっかり空賊家業を教えてやるぜ」といきなり先輩風を吹かせ、アルネスは「給料は月給制が良いか年俸制が良いか?」と聞き、ダラルとアバルは男手が増えてよかったと喜んだ。
そしてアマンデは、前にディリックが来ていた洗いざらしの造船所の作業服を持って来ると。
「あなた、それ裸と一緒でしょ?お古だけどしばらくはこれで我慢してちょうだい」
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