第19話 もしも立場が違ったのなら

 

 

 アリッサの薄桃色の瞳に映るのは、無数の白色光の槍。アリッサはそのあまりの光景に、そして、自分の能力との歴然の差に思わず一度目を瞑る。流石にアリッサでも、威力の高い魔術を大量に行使すれば、魔力がすぐに底をつく。それに加えて、魔術式を見てすぐわかるが、一つ一つの魔術は、アリッサの『ラピッドショット』とは違い、最適化がされていない。つまるところ、目の前の転生者は、全ての魔術を一斉に、そして単発的に発動しているに過ぎない。しかしそれは、逆説的にいうなれば、それを行うだけの無尽蔵の魔力と、行使できるだけのポテンシャルや能力を持っていることに他ならない。


 そこまでわかっていて、アリッサは再び大きく瞳を見開く。



 両手に持つ、スタンロッドとピッケル型の杖を片手で器用に回転させ、それぞれを逆手に持ち変える。『ブラスト』の発動には時間が足りない。『ショット』でも足りない。しかし、純粋な魔力による拳ならば、発動までに時間を要さない。

 『フィジカルアップ』に加え、レベル70を間近に控えたアリッサの拳は鋼を容易に撃ちぬく。ましてや、防具によりレベルブーストがされているとなれば、床一枚打ち抜くのは造作もない。

 だが、壊したところで回避して落下するのには時間がかかるのは目に見えている。故に、両手に持っている杖でアリッサは同時にベクトルを操作して、自分の周囲の落下速度を加速度的に引き上げ、落下と同時に急減速させる。


 アリッサが階下に降り立つと同時に、地面に潜るモグラを叩くように、アリッサに命中したであろう光の槍が階下の部屋を丸ごと穿ち風穴を大きくしていく。アリッサは最後に自分を狙ったであろう真上から打ち下ろされる光の槍の軌道をベクトル操作で曲げて、壁際の柱もろともに壁を大きく打ち抜く。

 ベクトル操作を大量の対象に行おうとした場合、それなりの魔力消費を伴う。魔力量で負けている現状で、浪費は得策ではない。故にアリッサは回避を選んだのである。


 アリッサは穿たれて夜空が映し出され、壁が取り払われた空間に向けて走り出し、虚空に身を投げ出す。

 そして、ベクトルを再び操作して右足先にかかる重力をほんの一瞬だけ反転させる。それでも他の部位のかかる下向きの力は変わらないため、その一瞬のうちに膝を折り曲げて沈み込み、何もない『つり合い』という名の地面を蹴り上げる。


 空を飛ぶには魔力消費が多いため、こういった工夫を施しながら魔力消費を抑えるのが魔術の神槌であると、アリッサはこの半年間にパラドや他の仲間から教わった。その努力はこういった形でアリッサの生存という現実を掴ませる。



 アリッサは上へと跳ね上げた自分の体を捻りながら、壁に張り付き、どこか入り口はないかと探す。そんなアリッサを追い詰めるように、先ほどと同じように張り付いていた壁から光の槍が突如として射出される。

 それは見えていないにも関わらず、こちらの位置が把握されているようであった。もしも、アリッサに『虫の知らせ』という危機回避の天恵……つまりは転生者としての能力がなければ、これで終わっていたことだろう。


 アリッサは手を離して首をひねることで強引に回避し、壁を蹴り上げながら壁伝いに走り抜ける。ベクトル操作を使わなくても、今現在のアリッサのレベルであれば、適切な角度で壁を蹴ることで壁を走ることもできる。壁を走り出し、ピッケル型の杖を腰の留め具に戻すと同時に、追撃の光の槍が何度も襲い来る。アリッサは、短い悲鳴を上げながらも、それらを走りながら避けていく。


 そうやって、何度も打ち抜かれる恐怖に苛まれながらも、アリッサは何度も何度も回避を繰り返して、とあることに気づく。それは、局所的に周囲のマナが枯渇し始めていることである。マナとは魔力の元となるもの……。呼吸や、食事で体内に取り込まれ、魔術を行使すると、大気中に拡散するものである。それが、局所的になくなっていたり、はたまた過剰に存在したりと、ちぐはぐな状況になっていた。数分もすれば元に戻るのだろうが、原因はケンヤが放つ魔術であることは間違いないだろう。


アリッサは攻撃を回避しつつ、城が度重なる戦闘で穴だらけになったが故にできた進入路から体を滑り込ませ、城の中に再侵入する。そして、廊下を走り抜け、一直線に元々いた領主の部屋へと戻っていく。壁や床や天井に穴が開いているため、地図さえ把握していれば階段を使わずとも即座にたどり着くことができる。


 そうして、最後の床の穴に飛び降りると同時に、スタンロッドを振り下ろす。振り下ろした先には当然のことながらケンヤの剣があり、二つの近接武器は衝撃で甲高い音を響かせる。

 アリッサは初激を防がれたのがわかると、即座につば競り合いを止めて追撃に移行する。順手に構えたスタンロッドを警棒のように扱い、もう一度武器をぶつけ、今度はスタンロッドの本来の役割である電撃を流すために、魔術を発動する。魔石に魔力を通し、発動までは至り、断続的なスパーク音は鳴り響いた。


 ——————が、明らかに電流が流れていなかった。


 相手の剣が絶縁体であるわけではない。こちらが故障したわけではない。魔術そのものがまともに発動してないようにすら思える。それは、スタンロッドに施されている強度強化も同様であるようにも思えた。

 このまま何度も打ち合えば、こちらの武器が折れてしまう。


 それを理解して、アリッサが距離を置こうと攻撃を緩めた瞬間、ケンヤの持つ銃剣の刀身が輝きだす。アリッサをそれに反応してスタンロッドで受け止める体勢を取る。


—————冷や汗が背中を伝った



 アリッサは即座に受け止めるモーションを足さばきと腰の動きで変更して受け流す体勢に変更した。そして、同時にスタンロッドとケンヤの銃剣が再びぶつかった。

 その瞬間に、アリッサの持っているスタンロッドがまるで切れ味の鋭い包丁で野菜を切るかのように、瞬く間に切断されてしまう。アリッサが咄嗟にさらなるサイドステップで攻撃を回避していなかったら、胸を袈裟に斬られていたことだろう。


 アリッサは、数歩後ろにさがりながら斬られたスタンロッドの断面を見る。それはまるで、電動ノコギリで切断したかのようにバリが切断方向にできていたため、アリッサは即座に相手の魔術の正体を掴み取る。


 「お、気づいたみたいだね。こうやって、刃を高速振動させれば力を入れずに切ることができるんだ」

 「あーうん……」


 アリッサは思わず、少しだけ笑みを浮かべてしまう。それは、新たなる魔術を見た好奇心ではなく、勝機を見出したことによる笑いである。周囲の魔力を使って、自分の魔力を使わないことでマナが汚染されることを考えなければ半永久的に魔術を行使できる相手に対し、アリッサが勝機を見出したのである。


 「キミは凄いね。転生したときに神様から与えられたのは、『絶対に回避する能力』なのかな?」

 「さぁ? そう思うんならそれで構わないよ」


 アリッサの『虫の知らせ』はそんなに万能な能力ではない。自分の死の危機に比例した警鐘を鳴らしてくれるだけで、命中の有無は感じ取ったアリッサ自身の回避能力に依存する。つまりは、勇者ケンヤが想像したような『絶対回避』などという夢のようなものではない。それでも、そのように勘違いさせるほど、アリッサは回避を成功させ続けている。そこに至るまでは、何度も死にかけるという生と死の境目を分けるような失敗を繰り返し続けたからなのだろう。

 もしも、もっと扱いやすい『転生者特典』なるものを得られていたらと思うことは何度もあったが故に、アリッサは目の前の規格外の存在に笑って対処することができる。


 「あなたのその武器……魔術無効化でも施しているの? というか、その時点で魔術ではないと思うけど……」

 「よくわかったね。けど、それだけじゃないよ」


 今度は爆発的に加速してケンヤがアリッサに肉薄する。アリッサは冷静に対処をしながら、切断された武器を握ったまま離さない。


 振り下ろされるお手本のような大振りの斬撃を最低限の足さばきで回避しつつ、反撃の機会を待つ。斬撃に次ぐ斬撃、そして刺突。それらすべてをアリッサは己の直感と経験による動きのみで回避していく。


 数週間前ならば回避できずに斬られていたことだろう。だが、その数週間で、何度も何度も何度も死線を潜り抜け、生き残ってきたが故に、体がどうするべきかを常に答えを出し続ける。それはまるで、相手の動きを予測し、なんども手合わせを重ねたかのようなイメージの集大成……つまりは、一回の打ち合いの中に何百何千というパターンを思い描き、最適を掴み続ける作業。『マインドエンハンス』を使ってなければ遠に頭が焼き切れている。それでも、戦闘中に物理演算を行うベクトル操作に比べれば随分と楽なものだとアリッサは言う。



 迫りくる猛攻に対し、アリッサはサイドステップやバックステップを繰り返し、距離を取りつつ対応する。たまに飛んでくる魔術に関しても予測の範疇であるため、それすらも軽くいなす。


 「はぁ……しつこいなぁ、全く……」

 「しつこくてごめんね。対して、あなたは本当に強いね……。チート級だよ……でも、これだけはわかるよ————」


 アリッサは会話によりほんの少しできた隙を活かして、マジックバックから新たな武器を左手で抜き取る。それは鞘にすら納められていない細身のワンハンドソード……。

 アリッサはそれを相手の動きに合わせて、ケンヤのガンブレードにぶつけてはじき返す。


 「今のあなたより、ゴブリンの方がよっぽど手ごわかった—————」

 「何を言って……」


 二度目の打ち合い————

 ケンヤの武器が高速振動しているのにも関わらずアリッサが取り出した剣は切断されない。それどころか、相手の力任せの動きを受け流し、いなし始める。

 振りかぶり、完全に空を切ったケンヤのガンブレードの次なる動きを封じるために、左手で逆手に持ったスタンロッドの残り部分を、アリッサは相手の鍔部分に引っかけて一時的に動きを抑え込む。僅かな時間だけ、アリッサとケンヤの顔がほんの数センチの距離まで重なり、2人の瞳が重なる。


 アリッサはその状態から、右手の剣をいったん手放して相手の胸元に向けて右こぶしを叩きつける。だが、その拳は何か柔らかいものでも触れているかのようにはじき返され、ケンヤの服が軽やかになびくだけで終わってしまう。

 その違和感に、アリッサは即座に投げ捨てた剣を手に取ると、相手の武器を一度叩いて動きを封じて、距離を取りなおした。


 「驚いた……。服とかにも付与しているんだね」

 「さすがだね。そうさ……物理衝撃無効、魔術攻撃無効、自動回復、破損自動修復まで全部をエンチャントしてある」

 「だから余裕だったんだね」

 「わかったかい。わかったなら降参してくれ、キミのようなかわいい子を殺したくはない」

 「キモい—————」


 アリッサはそれ以上を何も言わずに床を蹴り上げて再び距離を詰める。会話中に、切断されたスタンロッドは腰の留め具に入れ直したため、今の手元の武器はワンハンドソードしかない。だが、それはむしろ、アリッサの動きの自由度が増したということに他ならない。そして、相手がどんな防具を持っていようと、アリッサが託された防具もそれと十分に張り合えるほどの性能を有している。

 動きをサポートし、瞬間的加速による補助や、細かい傷を防ぐ魔術を発動してくれる。そして何より、レベル差による腕力の差を埋めてくれている。


 その補助の恩恵を受けながら、アリッサは距離を詰めるために、もう一度ケンヤへと疾駆する。突っ込んでくる動作に反応して放たれるアリッサの胴体を分かつような横薙ぎの攻撃に対し、アリッサは直前で体を再加速させて、振り回そうとする前……つまりは腰の位置で振り回そうとした瞬間に相手の柄頭を右手で掴んで引いて、先に逆向きに振り回させることでキャンセルさせ、よろめく僅かな隙に、左手に持ち直したワンハンドソードを下から上へと切り上げる。

 本来であれば、先ほどと同じように衝撃が吸収されて終わるはずであった。だが、不思議なことにアリッサの剣は、まるで相手の能力がなかったかのように布を切り裂き、その奥にある肉や骨すらも一瞬のうちに断ち切る。


 ケンヤの右腕が宙を舞い、数秒後に穴だらけの床に叩きつけられる—————



 その一瞬の出来事に空間全てが一時的に停止したかのような錯覚に陥る。


 「なんで……なんで! ヒール! ヒール!」


 ケンヤは驚きながらも逃げるようにアリッサか一瞬で距離を取り、自分の腕を修復し始める。高レベルであるが故なのか、無尽蔵の魔力のおかげなのか、斬り落とされた腕だけは元のように戻り、何事もなかったかのように修復していた。

 アリッサはその再生力にため息を吐きつつも、自らの剣についた相手の血糊を振り払った。


 「なんでって……私の武器にあなたの高速振動だっけ? それが効かなかったことに疑問を思わなかったの? というか、この剣に見覚えはないの?」

 「知らない……なんのアーティファクトだ……」

 「あなた……少し前に武器を山中にでも捨てなかった? もしくは売ったとか?」

 「待て……まさかあの失敗作か! だとしたら、卑しくも盗んで来たってことじゃないか」

 「はぁ!? 大体、あなたがこれを捨てなければ、あの村の人たちは……」


 アリッサはダベルズ村でのゴブリンたちの所業を思い出し、少しだけ憤る。すべての責任が目の前にいる少年にないとしても、あそこで見た地獄は脳裏に焼き付いたまま離れていない。そんなほんの少しの出来事のせいでこうなっているということを自覚しながら、会話が成立しないことを理解しているが故にそれ以上を続けない。


 「またそれか……。たとえボクがそれを手放したとして、それに何の責任があるんだ……」

 「ないよ……あなたを罰する法律なんてこの世界にありはしない……」

 「ほら、やっぱりそうじゃないか。正しいのは—————」

 「だから私が裁く——————。正しいか正しくなかったかは後の歴史が決めること」


 アリッサは、ケンヤの腕を一度は斬り落としたワンハンドソードの剣先を相手の喉元に向ける。十数メートルという離れた距離は、今の二人にとってあまり意味をなさない。割れたステンドグラスから差し込む星明りに煌めくアリッサの薄桃色の瞳に迷いはなく、見るものを恐怖させたことだろう。

 そんなアリッサに対し、ケンヤは少しだけ微笑みながらアリッサに応答する。


 「勝った方が正しいねぇ……。でも残念ながらボクの勝ちだ。キミとの勝負の最中で、もう、魔術の構築は完了した」

 「そう……遂にか……」

 「なにをそんなに諦めている……死ぬんだぞ! もう降参しろ!」

 「死ぬ? 降参? なんのこと? かかって来なよ、阿呆が!」

 「そうか……だったら、もうなにも言わない!」


 ケンヤがを天にかざす。虹色の巨大な魔方陣が膨大な魔力を伴って荒れ狂っているのがアリッサにはわかった。おそらく、ここにいるアリッサという存在は数十秒後には蒸発して消えてしまうことだろう。

 しかし、その事実を抱えているのにも関わらず、アリッサは汗と泥で乱れた茶色の髪をわずかに揺らして不敵な笑みを浮かべた。


 「キミと出会えたこと……。もしもこんな出会いじゃなければ……」

 「私は、あなたとは出会いたくないと思ったよ—————」


 最後の会話を終えて、虹色の光の雨がアリッサの周囲に降り注いだ。アリッサは無防備に両手を降ろした状態で静かにその光を見上げた——————




 


 虹色の光の雨が降り注ぐ。その圧倒的な速さからして、アリッサは逃げる事ができない。前みたいに下層に行こうとも、それすら貫いて光が迫るだろう。何よりも、アリッサの動きに合わせて光が折れ曲がり、追尾ミサイルのように追ってきていることが動かずともわかる。

 そんな状況下で、アリッサは静かに微笑み、最初に落とされた光の柱を手に持ったワンハンドソードで叩き伏せる。


 だが、そのあまりの高密度な魔力のせいなのか、はたまた魔術に込められた概念魔法のせいなのか、アリッサの持つ剣と相殺する形で一射目が弾け飛んだ。地響きと爆風が吹き荒れ、手に持っていた剣が砕け散ったが、アリッサはそれらを位にかえさずに二発目に対処する。


 もしも、相手がアリッサの魔術を理解していたのならば勝機はなかっただろう—————


 相手の魔術に込められているであろうものは『魔術防壁無効』などと言ったものでしかない。つまりは、防壁ですらなく、単純に方向を変えているだけのアリッサの『ベクトル操作』には干渉しない。もしも、『魔術無効』であるならば、そのものが魔術である自身も打ち消してしまう矛盾が発生するが故の制限なのだろう。

 故にアリッサは二発目の虹色の光の柱を踊るようにステップを踏みながら右の裏拳で弾き飛ばす。無属性の魔方陣の起動した輝きが放たれ、純粋な魔力の塊であろうその光は簡単にねじ曲がり、部屋の柱をへし折りながら斜め下へと床や壁を抉りとっていく。


 三発目、アリッサは左手をかざして同じように左側へと弾き飛ばす。四発目は迫りくる後続射に向かって投げ返し、発射される前や、発射された後の虹色の光の柱を次々に叩き落としていく。

 そのあまりの非常識な光景に、魔術を発動させて勝利を確信していたケンヤは思わず息を飲む。ほんの刹那の間に、何が発動しているのかもわからないまま、自分の魔術が通用しなかったためか、呆気にとられるような放心が彼を襲っていた。


 それを成したアリッサは自分の魔力がゴリゴリと圧倒的な速度で削られていく感覚に歯噛みしながらも、土煙の中でゆっくりと顔を上げて、再びケンヤの方へと不敵な笑みを浮かべてみせる。


 「そんな……なら……これで—————」

 「止めなよ……いや、もう遅いか……」


 アリッサがその言葉を言うと同時に、アリッサとケンヤの立っている床が揺れ始め、残されている柱や壁に亀裂が走り始める。


 「逃げているときに気になってたんだけど、たぶんあなたには私の位置情報を把握する術があって……3Dマップのように的確に味方と敵を区別してたんだよね」

 「なぜそれを?」

 「味方に当たりそうなときに撃たなかったら……。だから、こうも考えた。あなたが発動した魔術で仲間が傷ついたら、あなたはどんな顔をするのかって——————」

 「なに……を……」

 「あなたには3Dマップに見えても、私の頭の中にあるのは建築図面—————。どこをどう壊せば、この城が壊れるのかっていう……」

 「まさか、キミは—————」

 「もう遅いよ。この城で眠っているあなたのお仲間はあなたのせいで生き埋めにされて死に至る——————」


 アリッサは冷ややかな目をしながらケンヤを見つめる。それを最後に二人の視界を遮るように、瓦礫が崩れ落ち、直後に雪崩が起きるような破裂音や衝撃の連続が大地を揺らす。それはまるでジェンガを崩すかのように土台から崩れ、下の階にぶつかった衝撃でさらにレンガ質の壁や床がバラバラに崩れ落ちていく。

 最後に崩れ落ちた全ての質量が地面についたことによる音と衝撃が数キロも離れている山の向こうまで轟き、領民の象徴たる建物は跡形もなく消え去った。


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