本と図鑑と時々チート

ありすの鏡

一冊目

最近同じ夢をずっと見続けている気がする




誰かが消える夢、体の形も朧気で大体消えるのは足元から頭にかけて砂のように落ちていくように消えていくがそこには砂のような物質も落ちることなく消えていく、存在自体が消えたかのようにだ




消えたと同時に自分の目も覚める、大概は家族に起こされて起きる。




最初は不気味に思えたこの夢も一週間もすれば自然と心地よく感じる、自分だけなのかな?




朝は決まって白米の上に卵と醤油を少々、そしてごま油を数滴垂らす




そして白米が上のほうを軽くかき混ぜてそこから一気に口の中に頬張る。




味を上層と下層に分け時々絡めながら口に運ぶ、かれこれ10年近く朝はこの生活を続けてはいるものの飽きが全く来ない、一種の中毒症状だと考えてもいる。




朝食を食べ終えた後はスマホを弄り日課のゲームのログインボーナスを素早くもらう、スタミナを消化しながら学校に行く準備をする、ドロップしない武器を求めながら




だいたいちょうどいい時間に家を出ることができる、片耳にイヤホンを付け自転車を最寄りの駅までもこぎ続けるが事故が怖いせ


生もあってせいぜい自転車のこぐ速さは大体人がランニングで走るときの速さとさほど変わらない。




聞く大体決まってる、最近流行りのバーチャルライバーオリジナル楽曲




これを聞けば大体は気分が乗ってくる




電車の中は乗り換えが少ない分寝れる、電車の中だとあの夢は絶対に見ないし、電車の揺れを感じると本能が眠たがるせいで時々目的地の駅を通りすぎて寝過ごすときがたまにある。




学校では親しい間柄の知人と話すことが多い、話す内容は自虐ネタが多いのはなぜなのだろうか




今日は特に教室内が騒がしい、喧騒とは違った騒がしさ




明日から夏の長期休暇である、旅行に行きたい、海に行きたいとかだったり話してる内容は至って普通、高2の夏は始まったばかりなのである




「終夜は休みの間にどっか行くところあるのか?」


 話しかけてきた男の名は足立、高校に入学して初めてできた友人の一人




「時にその予定はないな、団イベで忙しいし」




「でた、いつもの口癖のゲーム、お前引退するとか言ってなかったっけ?」


そう、いまやっているゲームは足立には引退すると宣言したゲームである




「確かにそういったな・・・でもさ、ソシャゲの引退宣言より信用できない言葉って数少ないと思うんだよね」




「お、そうだな」




「だいたい押しキャラの最高レアリティが実装されてないのにまだ引退できるかってんだ」




「でもお前の推してるキャラってさ・・・イベント産だよね?」




「・・・か、過去に何回もイベント産キャラ最高レアで出てるから大丈夫・・・大丈夫なはず」


大丈夫なはず・・・きっと




「そうなるといいな・・・」




そんな他愛もない会話をするのが俺の日常、かわってほしくない日常




でも冒険とかにも少しだけ憧れを持っている、あまり通らない道を通ったりとか、地図なしで都会を散策したり地下街ダンジョンで遭難したり




そんなことにあこがれる、今の自分から一歩踏み出したい、そんな勇気が欲しい








「にしても今日は日の差し込みが強いな、若干目を開けにくい」




確かに、それは言えているカーテンを閉めよう




「これでなんとかなるだろ、すっごい隙間から神々しいぐらいの光が差し込んでるけどな」




「太陽が近づいてきてんじゃね?」


 そんなことがあったこの教室どころの騒ぎじゃない




 なんか教室が騒がしいな、扉が開かない?うそぉ?・・・ん?窓も開かないの?まじ?




「誰か溶接でもしたかってぐらい動かねぇな」




「突然教室内にある人間以外の物質が突然光始めるやいなやあたりには不吉な雰囲気を漂わせる」




「何を突然言い放つと思ったら説明口調お疲れ様です」




 クラス内が本当に節操もないぐらい騒がしくなってきたところで一人がある発言をする




「異世界転移・・・?」




その言葉に驚いた、周りの数人がその言葉に反応していることに驚いた




「・・・それは本当なのか?ウェブ小説博士」


 ウェブ小説の話をしすぎたためにそんな悲しいあだ名がついてしまった悲しい人間が放った一言はクラスを凍らせるには十分すぎた


「いや、みんな固まる必要ないでしょ・・・まるで去年あったあれみたいだね、突如としてクラスの全員が消えた失踪事件」




「博士、その話今関係あるのか?確かに警察側もあれに関して集団失踪として片づけたけどよ・・・もし今起こってる現象が一年前の現象と関係してるってなら、教師たちはこのことをわかってて俺たちに黙ってたってことなのかよ!」




「その可能性はある・・・あるけどその話を追求する余地もないさ」




「じゃあどうするんだよ!どうやってここから脱出するってんだ!」


 クラスの一人がそう叫ぶ、もちろん俺、イベントほったらかして異世界なんて行けるか!!




「出る方法は・・・ない」




 その一言で教室は無慈悲に時間が流れていく、刻一刻とタイムリミットは近づいている




「光が強くなってきたな・・・?とりあえず後のことは向こうに行ってから考えよう」




「・・・考えたくはないけど、とりあえずそうしよう・・・決意しようか」




さっきよりも光が強くなってきている、これは間違いない、この世界にいるのももう最後なのかもしれない




さらば安全に食べれる生卵かけごはん・・・お前との日々は忘れないよ・・・




そしてあたりは一斉に光が包んだ










一人を包み込むようにして










「・・・あれ、教室にいるじゃん・・・なんだよー博士、びっくりさせんじゃねーよ!なぁ終夜・・・終夜?」






 この日を境に秋月終夜という男は姿を消した

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