第19話 すべての人の心に花を-19
*
穏やかな陽射しの射し込む教室で、昼食後のひとときを楽しんでいるしのぶ。眩しい日は、机に反射して天井を照らし、暑くさえ感じられる。目の前の和美やまゆみは楽しげに話している。
―――本当に、自分はここにいていいのだろうか?
そんな疑念を抱きながら、その場の雰囲気に身を任せている。ふと目線を向けると、朝夢見は、楽しげな二人を見ながら笑んでいる。そんな朝夢見を見ながら、独りで暮らすことに憧れを抱いた。もし、独りで暮らすようになったら、朝夢見のようになれるだろうか、と思いながら、朝夢見に視線を向けていた。
「ね、しのぶちゃん」
不意に問い掛けられてしのぶは驚いた。
「なに?」
「しのぶちゃんのお弁当って、由起子先生が作ってるの?」
「うん、そう」
「いいなぁ。由起子先生のお料理が食べれるなんて」
「あたし、手伝うって言っても、由起子先生の方が早起きだから」
「普段も、由起子先生の料理食べてるの?」
「うん。でも、夕飯は手伝うよ」
「えぇ、しのぶちゃん料理できるの?」
「できるわよ。そのくらい」
「え、和美ちゃんできる?」
「少し…ほんの少しね」
「あたしできない。朝夢見ちゃんは?」
「だって、あたし独り暮らしだもん。できるわよ」
「やだぁ、あたしだけなんだぁ」
そう言って身を捩るまゆみを見て、しのぶは笑ってしまった。
「でも、あたし、家でも結構料理してたよ。だから、いまでも、できるの」
「へぇ、そうなんだ」
「でも、どうして、家出したの?」
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