第17話 すべての人の心に花を-17

 ―――家の人と話をしないと、何もできないの。あなたが家を出たいのなら、それでもいい。独りで暮らすことにあたしは反対しない。あたしが話をつけてあげる。でも、まだ義務教育だから、学校に行かなきゃならないわ。それなら転校も必要だし、何より、身寄りをはっきりさせないといけないの。あなたが、誰かに…家の人たち、お父さんやお母さん以外の人、に身元を保証してもらう必要があるの。

 ―――……。

 ―――心配しないで。あなたが家に帰りたくないなら、帰る必要なんてない。あなたが直接話ができないなら、あたしが替わりに話をしてきてあげる。住む所は心配ないわ。朝夢見ちゃんと同じ所を用意してあげる。朝夢見ちゃんと同じように、出世払いにしてもらうわ。ね?アルバイトも探してあげる。できるだけ独りで生活できるようにしてあげるわ。でも、勉強もするのよ。でないと、編入できないし、他の学校だとこんなこと許されないからね。

 ―――…どうして?

 ―――なにが?

 ―――どうして、この学校は、こんなことが許されてるの?

 ―――許されてる訳じゃないのよ。

 ―――え?

 ―――園長先生とあたしは、お友達でね、それでよぉくお話して、決めるの。誰でもいいっていう訳じゃないのよ。よく調べて、それから提案が出て、先生がみんな相談して、OKが出たら許されるの。でも、提案するのは、あたしばっかりだけどね。

 ―――…あゆみさん?

 ―――そう。朝夢見ちゃん、仙貴君、美生ちゃん。テッちゃんのときは、別の先生だったけど、あたしのクラスに編入してきたわ。そういうと…、なんか、あたしが全部決めてるみたいね。

 ―――ふふ、先生の学校なのね。

 ―――まさか。あなたたちの学校なのよ。

 ―――え?

 ―――学校は、生徒のもの。

 ―――ふ~ん。…いいな、そんなのって。

 ―――どの先生も子供たちを大事にしてるわ。大事にしながら、厳しく、大人扱いしているの。自分たちが、大勢の中の一人ではなく、個々の一人だと、自覚させるようにしてるの。わかる?そういうの。

 ―――ん…、なんとなく。

 ―――だから、活気があるの。まわりの人からは、進学校だお坊っちゃま学校だなんて言われてるけどね、あたしたち教員が目指してるのは、そんなものじゃないのよ。

 ―――…ふ~ん。

 ―――だから、中高一貫教育を排除してるの。

 ―――え?

 ―――あ、知らないんだっけ。うちの学校とね、旭学園高校は姉妹校でね、推薦っていう形にはしてるけどほとんど内部進学できるのよ。でも、違う学校にしてるの。それは、中学生は中学生として、高校生は高校生として、教育したい、っていう理事長の方針なの。

 ―――…ふ~ん。


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