第12話 すべての人の心に花を-12
「あたし、お母さんと二人暮らしだったの。お父さんが小さい頃、事故で亡くなってね。うちは、小さい飲み屋やっててね、あたしも手伝ってたの。結構、はやってたのよ。美女が二人もいたからね、なんて(テヘペロ)。でも、お母さんが、急に倒れて、そのまま、亡くなったの。…あとから聞いたことだけど、若い頃、体力を使うようなことばかりしてた反動だったんだって…。それで、父方のおばあちゃんが引き取りに来たんだけど、実は、ほとんど絶縁状態だったから、初めて会ったのよね。それで、今日から一緒に暮らしましょう、なんて言われて…、何か変な感じだったの。それでも、まぁ、いいか、って一緒に暮らしてたんだけど、なんか、もひとつ、馴染めなくてね。それで、荒れてた時期でもあったんだけど、由起子先生が担任でね、あたしを、更生、ってのかな、させてくれたの。それでも、由起子先生が転勤になってから、また荒れてね、どうしようもなくなって…、きっとそれは、家にも馴染めなかったからでもあったと思うんだけど、それで、由起子先生が引き取ってくれたの。
そのときに、言われたのよ。いっそのこと、独りで生活しなさい、って。甘える余地のない、独りの生活をしてみなさい、って。それで、ここ、由起子先生の親戚の家がやってるマンションなんだけど、出世払い、ってことで入れてもらったの。いつか働けるようになったら、そこから少しずつ支払えばいい、って。今のバイト代は、当面の生活費にしなさいって。一応、お母さんの遺産もあるから、生活に不自由はないし、部屋代も払えないことないんだ。おばあちゃんも払ってあげるって言ってくれてたから。でも、それだと、独りで生きてることにならないじゃない。だから、あたしは、自分で働いて払うことにしてるの。……きっと、甘え、なんだろうね。あたしが、荒れてたのは。それを、由起子先生は、見抜いてたの。だから、独りで生活しなさい、って言ったんだと思う。…それでよかったと思ってる。だから、タダ、っていう訳でもないのよ」
*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます