第15話 雄叫び!
「おおおおおおおおおおおおお!!!」
オリハルコンを加工してもらうため、テッラに話したら見せて欲しいとせっつかれた。
それで【
「おおおおおおおおおおおおおお!!!」
手にしたインゴットを両手で頭上に抱え上げ、テッラの雄叫びが続く。
その目はキラキラと輝いており、彼女の感動が此方にまで伝わってきそうな程だ。
「おおおおおおおお!オリハルコンゲットだべぇ!!!」
「いや、ゲットじゃないから」
別に上げた訳ではない。
加工してもらう為に手渡しただけだ。
「冗談だべ!感動してちょっと言ってしまっただけだべ!」
「ほんとですかぁ?持ち逃げしないで下さいよぉ」
「そんな事しないべ!ドワーフの誇りに賭けて誓うべ!」
相変わらずリリアは嫌な事を言う奴だ。
まあ確かにその可能性が0とは言い切れないが、万一テッラが持ち逃げを試みたとしても逃げきられる心配はなかった。
何故なら、貴重なアイテムにはリリアの魔法による
マーキングをつけられたアイテムの位置は常にリリアが把握しており、更にアイテムを中心に遠隔から結界を張る事も出来た。
そのため、アイテムを盗むには強力な結界を破壊する必要があるのだ。
いくらテッラが怪力とは言え、リリアの結界を壊す事はまず無理だろう。
以前アミュンに貴重なアイテムを盗まれてえらい目にあっているからな。
流石に俺も学習している。
「それにしても入ってそうそうオリハルコンを拝めるなんて、信じて正解だったべ!」
「信じて?何を?」
「ああ、いや。気にしないで欲しいべ。ちょっとした願かけの話だべ」
テッラが気まずそうに言葉を濁す。
その態度が少し気にはなったが、まあ追及する様な事ではないだろう。
「それで、オリハルコンは加工できそうか?」
「大丈夫だべ!大船に乗った気で任せるべ!」
テッラが右手で自分の胸元を叩く。
その衝撃で豪快にブルンと揺れる。
何がとは言わないが。
「なんです?嫌がらせですか?それは」
「何がだべ?」
「ああ、気にしないでやってくれ」
リリアが不機嫌そうに舌打ちする。
どうやら、彼女は自分の胸元の絶壁を気にしている様だ。
まあ子供の頃のフィーナを元にデザインされているからな、ぺったんこなのは仕方がない。
大人になったフィーナの姿を見てはいないので、実はそのままという可能性もあるが……
「それじゃあ早速、剣を一本頼むよ」
「わかったべ!すぐに取り掛かるべ!……と言いたい所だべが、剣を作るには工房がいるべ」
「ああ、そうか」
言われてみればその通りだ。
設備もないのに武器を作れと言うのは無理がある。
「うーむ……」
工房に伝手などはない。
いきなり設備を貸してくれと言っても断られるだろう。
「とりあえず、ゲンリュウさんに相談してみるか」
武具の店を営んでいるあの人なら、どこかに口利きしてくれるかもしれない。
まあダメだったら、その時はその時で別の案を考えるとしよう。
別段新しい武器を、急いで手に入れなきゃならない訳ではないからな。
「所で、剣を作ってもかなりの量があまるべ。余ったオリハルコンでワタスの槌を作ってもいいべか?」
「ああ、構わないぞ」
パーティーメンバーの武器は強力な方がいいからな。
一瞬レアの分もと考えたが、彼女は彼女で伝説級の武器を手にしているので、まあわざわざ新しく作る必要はないだろう。
「本当だべか!感謝するべ!」
オッケーを出すと、テッラが喜んで俺に抱き着いてくる。
うん、素晴らしい破壊力だ。
「マスター。ちびっこだけずるいですよぉ。私にもオリハルコンの装備を下さい」
「リリアの装備……まあ確かにあった方がいいか」
リリアは基本後方待機ではある。
だが常に安全とは限らない。
万一に備えて、防具類を身に着けておいても損はないだろう。
「流石はマスター。じゃ、私のはオリハルコンのティアラでお願いします」
「いや、ティアラってお前……」
ティアラとは、お姫様などが頭に付けている豪華なあれだ。
世間一般的には装飾品であって、装備とはいわんのだが。
「リリアちゃんの可愛らしさと、高級品感がぐっと増しますよぉ」
それが増す事にいったい何の意味があると言うのか?
「まあ100歩譲ってティアラを付けるにしてだ。そんなもん、別にオリハルコンで作る必要ないだろ」
もったいないにも程がある。
正に無駄遣いだ。
「乙女心が分かってませんねぇ、マスターは。伝説の金属を無意味な装備として身に着ける。これ程の贅沢なセレブ感はありませんよぉ」
「そんなもんはいらん。却下だ」
「えぇー」
「じゃあ街へ戻るか」
不満そうなリリアを無視し、俺はゲンリュウさんの店に向かうのだった。
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