スキル【幸運】無双~装備が揃ったパーティーから俺は追放されてしまう。幸運の揺れ戻しでドロップがノーマル固定になって資金繰りが厳しい?しるか!俺は自由にやってるんだ!今更あやまってももう遅い!

まんじ

第一章 追放

第1話 追放

スキル【幸運】とは、ダンジョン内に生息する魔物のレアドロップ率が上昇するスキルである。

俺はそのスキルをユニークスキルとして生まれ持っていた。

当然俺はその特殊な力を生かすべく、冒険者になってあるパーティーに所属していたのだが……


「アドル。お前は首だ」


「は?」


突然の一言。

俺はリーダーのギャンが言った言葉の意味を理解できなかった。


「聞こえなかったのか?俺達のパーティーに、てめーみてーな寄生虫はいらねーってんだよ」


「いやいやいや!何言ってんだよ!?ここまで資金が潤沢なのは俺のお陰だろ!」


緋色の剣。

それが5年前から俺の所属するパーティーの名前だ。

元々は弱小だったが、俺のレアドロップ率が上がる【幸運】のスキルによって、今では大きなホームを持つまでに急成長している。


入った当初は全員鉄製のボロイ装備だった物が、今ではミスリル級で――超高額――固められ、レアリティ―の高いマジックアイテムも大量に所持している。

ここまで装備が揃ってくれば当然強力な魔物の討伐にも成功しており、今やこの近辺で俺達のパーティーの名を知らない者達はいない程だ。


「ああ、だから今までは我慢してお荷物のお前を抱えてやってきたんだ。だがもう装備や資金は十分そろった。もうお前はこのパーティーに必要ねーんだよ」


「はぁ?ふざけんなよ!」


人の恩恵を受けるだけ受けておいて、いらないから出て行けだと?

そんな自分勝手が通るわけがない。


皆がそんな横暴を許す筈が――


「アドル。こう言っちゃなんだけどさ。いくらレアドロップ率が上がるって言っても、弱い人間がパーティーにいたら上を目指せないんだよ。スキルの6人制限てのもあるし」


俺の予想とは裏腹に、僧侶のアババがギャンに同調する様な事を言う。

アババだけじゃない。

周囲を見渡すと、仲間たち全員が俺に冷たい眼差しを向けてくる。


「冗談だろ?今までずっと一緒にやって来たじゃないか?」


「一緒?冗談でしょ?あんたずっと後ろにいただけじゃん?」


シーフのアミュンが、吐き捨てた。

彼女が俺の事をあまり良く思っていないのは知っていたが、ここまであからさまな行動は初めてだ。


「それはスキル効果を上げるためだろ!」


俺のスキル【幸運】には効果が二段階ある。

パーティーメンバーの効果を上げる一段階めと、そして俺自身のドロップ率を上げる二段階めだ。


効果は一段階目より二段階面の方が高く。

俺がスキルに集中する事で、パーティーメンバーにも二段階目の効果を付与する事が出来る様になっていた。

当然その間、スキルに集中している俺は戦闘に一切参加できない。


だがアミュンもそれは分かっているはずだ。


「そんなもん!倒す時に使えばいいだけでしょ!」


「最後だけやっても意味ないって説明しただろ!」


倒す時だけではなく、戦闘開始時からも二段階目の幸運を帯びていなければ、最終的に一段階目の判定が下されてしまう。

だから俺は戦闘中、最初っから最後までスキルを発動させていたのだ。


「ふん!どうせ自分だけ危ない目にあいたくなかっただけでしょ!」


「そんな訳ないだろ!」


それもちゃんと説明していたのだが、どうやら彼女は信じていなかったらしい。

5年も一緒にやってきた仲間が、ずっとそんな風に思ってきたなんてショックだ。


「アドル。全員一致の決定だ。もう諦めろ」


魔法使いのケネスが淡々と俺にそう告げる。

彼とは上手くやってきたつもりだったのだが、俺の思い過ごしだった様だ。


「くっ……分かったよ」


誰も俺の味方をする者はいなかった。

腹は立つが、ここでしがみ付いても惨めなだけだと諦める。

さっさと荷物を纏めて出ていく事にする。


「おい!装備は置いて行けよ!」


「はぁ!?」


ギャンが意味不明な事を言ってくる。

何を言ってるんだこいつは?


「それは俺達が倒して魔物が落とした装備だ。何もしてねぇテメーにくれてやるいわれはねぇ」


「ザッケンなよ!俺がいたからこそのドロップだろうがよ!」


レアドロップなんて早々する物ではない。

あれだけポンポン出たのは、完全に俺のスキルのお陰だ。

むしろお前たちの装備こそ、俺のおかげなんだからこっちに寄越せと言いたいぐらいだ。


「魔物を倒さなきゃ手に入んねーだろうがよ!」


「が……ぁ……」


ギャンが暴言と共にお俺の腹を蹴る。

強烈な衝撃に俺は成すすべなく吹き飛ばされ、背中を壁に打ち付けて痛みに息が詰まってしまう。

もしミスリルの装備を身に着けていなかったら、死んでいたかもしれない。


「へ……糞弱い寄生虫が!生意気言ってんじゃねーよ!」


確かに俺は弱い。

だがそれは、スキルのため戦闘に参加できなかったからだ。

例え魔物を倒しても、パーティーに所属しているだけでは経験値が入ってこない。

そのため俺とギャンとでは、今や天と地程のレベル差があった。


「ぐ……」


奴に頭を掴んで持ち上げられる。

その万力の様な怪力に、頭が握りつぶされそうだ。


「死ぬか?」


「わ、わかった……装備は置いていく……」


「へ!わかりゃいいんだよ」


くそ……くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ……くそがぁ!


俺は怒りに体を震わせながら起き上がり、その場で装備を脱いで部屋へと戻った。


「絶対に見返してやるからな!」


荷物をさっさと纏めた俺は、そう宣言してホームを出ていく。


後にした建物の中から笑い声が聞こえてきた。

きっと俺の言葉を皆して馬鹿にしているのだろう。


だが俺には幸運がある。


緋色の剣を育てた自負が俺にはあった。

ならばもう一度、それと同じ事をやるだけだ。


ただし今度は一人で。


確かに一人では制限がついてやれることが限られてしまう。

だがパーティーを組めば、また今回の様な事になりかねない。

だから俺は装備やアイテムを一人で独占し、単独であいつら以上の名声を得て見せる。


例えどれだけ時間がかかろうともだ!

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