第163話 RZ250/350/500



日常生活が悲惨だったNし山にとって、バイクだけが生きがいだったのだろう。

倉庫の二階に住んでいて、仕切りのない部屋で1家3人。

さぞかし冬は寒かろう。

お父さんは一日中呑んでいて。


ただ、お母さんはいい人だった。常識人である。


俺が、静岡からNし山の荷物を軽トラで運んでやったら


丁寧に挨拶をしてくれて。


「我侭な子で、申し訳ありません。有難うございます」と

何度もお辞儀をした。



そういうお母さんの愛があったから、Nし山は荒まずに済んだのだろう。



若いうちは、誰にでもあるらしい

争いたい気持がどこかに。


それを、バイクで飛ばす事で発散できた時代である。




RZ250は欠陥だらけのバイクだが、魅力があった。

ドジッ子だけど心がある子・・・みたいな(笑)


ワタシはドジでノロマで間抜けなカメです(^^)。



「かめっ!」って言ってコーナーするんだろうか。



まあ、それはさておき。



2stは、RZのおかげでルネサンス、である。

まあ、RD250もかなりいいバイクだったが。





RZ250は、当時爆発的に売れ

Yは黒、Nし山は白を買った。


操縦性は特異なもので・・・・アクセル全開でないと曲がりにくい。

これは、あの・・・モノクロスサスのせいである。



なぜそうなるかは、バイクがなぜ曲がるかを知らないと解らない。


単純に、慣性と抗力である。


カーブに入る時、バイクは真っ直ぐ進もうとする。慣性である。

自分の足で走れば解るが、左に曲がりたければ右に蹴り続けなくては曲がれない。

慣性である。


前輪は、左カーブなら傾ければ勝手に左へ切れるので

右へ踏ん張る。


そうすると後輪は、慣性があるから外へ飛び出そうとする。



ここまでが減速である。


加速する。



後輪も傾いているので、その慣性に沿って右に出ようとする。

加速していると、接地点がずれながら左に曲がる。

前輪が接地していれば、その力が前輪を押すが

後輪が左に出ようとすれば、相対的に右に行こうとする。


それは、前・後ろの抗力のバランスである。


ウィリーしても後輪だけで曲がれるが

それは、タイヤの左側を使っているから、である。


その抗力の作用がバイクに伝わるのは

スイングアーム・ピボットとドライブチェーン・エンジン、サスペンションユニットである。



が。


モノクロス・サスペンションは、ストロークが長く、ユニットが長いアームを介して

ステアリングヘッドの位置に止めてある。



ので。


ふわふわして乗り心地がいいが、ガン、と加速しないと抗力を生みにくい。

ふつうの2本サスの方が力強く曲がる。



更に、RZ250はオーソゴナル・マウントと言ってラバーマウントのエンジンなので

ドライブチェーンを引っ張った瞬間の力が、ラバーで弱められる。


それらの関連で、全開でないとよく曲がらない、わけ。


ふつうは、急加速しながらカーブできるライダーはマレ、だから

緩加速しながらカーブすると、慣性質量は後輪に掛かるから

外に向かおうとする。


そのぶん、前輪が内へ向こうとするワケ。



急加速しながら曲がろうとすると、後輪はどんどん外へずれていこうとする。

タイアのグリップが良ければ、後輪が持ちこたえる分、バイクが起きようとするので

ハング・オフしないとならなくなる、ワケ。



チナミに500はモノクロスと言っても、単なるリンクサスで

ストロークも短い。

ただ、ショックユニットがエンジンの下にあるので

加速しようとすると・・・・前輪を押し出そうとする。(下から)。

だから、前輪のグリップが不足して、アンダーステアになるワケ。




当時はよく考えて作っていたのだろうと思っていたが、後でナカに入ったら

まったくそんなことはなく(笑)フィーリングで決めていたとのこと。

さすがは楽器屋さんである。



わはは。そんなものである。





それで・・・パワー不足だと言われたRZ250は

1年あとに350を出す。


Yは、すぐに飛びついた。

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