第160話 RZV前夜

シフト・ペダルのフィーリングは良くない。

後にリコールになったから、元々不調だったのかもしれなくて


がっちゃん


と言う感じ。



アラレちゃんの弟みたいだが(笑)。




アクセルを開き、クラッチをつなぐ。


油圧クラッチは、なんとなく・・・感じとりにくい。けれど、軽い。


びゅう



と、加速する。



V4なので、ひょろろろろ・・・・と。


夜の高速には似合いかもしれない。



XVみたいな2気筒だと、ちょっと長閑すぎて

昼間走りたくなるし、高速より

空いている田舎道を通って、遠回りしても走りたい気分になる。



VFは、高速ツアーがいいのかな?



そんなことを思いながら、サービスエリアから出る。

パーキング沿いに走って、かくっ、と曲がって下る。

ながーい下り坂、左カーブ。



VFは、時々乗せてもらったから

感じは掴めている。


なーんとなく、前のタイヤがどこにあるか解らないかーんじ。





「まあ、これでYが引っ越すと気楽になるなぁ」と、俺。


Yは愚痴っぽいので「愚っ痴言うゾウ」と、俺とかNし山とかは言っていて(^^)。


言っても仕方ない事を言うので、正直メンドいかった(笑)。

そーいう性格だから、彼女を命がけで救っても、振られる。


正直、俺でも閉口するくらいで。



深夜、セブンイレブンでバイトしてるとバイクで来て

ずーっと、くどくど・・・・。


それがなくなるだけでも、有り難かった。




「俺やNし山の方が、余程悲惨なのに」と、思う。

そーいう奴の方が明るいのだ。普段は。




Nし山は、近所の人が優しかったそうだし

俺も、そうだった。



昔は、子供がよく死んだ。

順子さんも千秋もそうで、死ぬのは珍しい事ではなく

だから、女の人はみんな、赤ちゃんを可愛がった。

戦後、と言う気風がまだあったし・・・人が少なかったのもある。





Nし山は、俺よりー7歳。

サル年かな。


俺は丑。


Yは、+7なので・・・馬か。




「馬並みかな」(笑)・・・まあ、見たことはないが。見たくも無いし(^^;


そうとうサカリだったんだろうなぁ。






VF750Fは、結構なペースで走っても飛ばしてる実感が少ない。

GTカー、と言うか・・・サルーンカーのようだ。



で・・・用賀に着いても

エンジンは安定していて、流石にホンダである。



このあたりは空冷のRC17でも同じだったから、エンジンのホンダ、健在である。



その後、練馬まで走り・・・・Yの家に着く。

今度はマンボーとかいないので、静かに、しずかーに。


ノーマルマフラーだから、静かだけど。このVFは芯抜きもしていない。


と言うか、抜きようもなく筒抜けだった。

それで静かなのは、流石、エンジンのホンダだ。





シートを手で押して・・・

バックさせて。

でも重心が高いのでちょっとふらふら。


なーんとなく馴染めないVFである。




任務完了である。


MVと、モトグッチ。XJと、このVFである。


Yの家は、庭が広いので・・・・この後、行き場が無くなったNし山が

ホンダの狭山工場に期間工で入り

RZ250はヤマハなので持ち込めず(笑)。Yの家の庭に置いて

休日だけどこか、走りに行っていたらしい。


庭で空ぶかししたり、迷惑千万(笑)。次の引越しの遠因になった(笑)。



深夜なので、静かに静かに。玄関のチャイムのボタン。

ふるーい、ベージュの。まるっこいボタンが

木の柱についていて。

それを押す。

引き戸のカギは開いていて。

2階からYが降りてきた。


177cm、100kgの巨体である。


マジメなのだが、ヘンに情が厚く、怒りっぽいところがある。



「ごくろうさん、どこかで珈琲でも飲もう」とYは言うから

俺は「深夜だし、回りみんな寝てるから」と、小さな声で言った。


環八沿いだから、そんなに静かではないけれど

やっぱ、深夜にANSAマフラーのシロッコじゃ・・・ね。

(それで、Yのお父さんはバラードCR-X1.5iが出て、直ぐ乗り換える。

お釣がいっぱい来たそうだ。

その後、1.6si=>SiR2台。

なかなかいいご趣味である。



この後、1年程でお父さんは茨城に引っ越す(^^)。


最初はYは付いて行かず、宝石鑑定士の学校に入学して

タクシーでアルバイトすると言い、吉祥寺に引っ越した。



・・・のだが、都内のタクシーは売り上げが上がらないと

乗務が出来ず(当時)。日勤で安い日当は出たが


(その方がいいと俺なら思うが)。


また、24時間勤務で合間に学校・・・と言うのは無理で



お父さんが助け船を出す。「受験しないか?」と。

お父さんは医学博士だし、お兄さんも一応医者である。

それでYがタクシー運転手と言うのは、お父さんも言いづらいと

そういう風に優しく、助けてあげた。

いいお父さんである。


(Yが卒業して程なく、天に召された。気がかりだったのだろう。

その日まで医師であり続けた。Yの学費の為である)。



それで・・・・茨城に引っ越す。それが1984年であるから


この日から2年ほどのこと、である。



RZVにはいい環境だったようで・・・・(第一話みたいに)。



また、Yが遊びに講じてしまうキッカケになってしまうのだが(笑)。



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