第121話 私鉄沿線、マイケル・フランクス

そんな風に、可愛い女の子が一杯(^^)な、この時代。

大切にしてあげなきゃー、って、自然に思う。


・・・なので。


死んじゃった鈴木さんとかは、やっぱり

彼女のお父さんからすると、許せない存在だったんだろうなぁ、なんて

思ったりした。



その反対に、娘が「アレがいい」と言うと

おとーさん、おかーさんが「遊んであげて」なんて、その男の子に言う

ほのぼのとした時代でもあったり。


洋子ちゃんだけじゃなくて。あの、セブンイレブンのパートの

ガハハおばさんとかも、娘の写真持ってきたり。


そういうお母さんは多かった。




お金持ってそうだとか、出世しそうだとか(笑)

そういう理由で相手を選ばない時代、だった。




XVは、直してずーっと乗れば良かったな、と

今は思う。


1月に車検を取って、その後に例の欠陥が発覚して。


直すのも大変そうだから・・・。と。


たまたま、出入りしてたバイク屋さんのオヤジさんがホンダファンなので


新型のCBXを見せてくれて。



まあ、これでもいいかと・・・。変えた。




「いいデザインですね」と、女の子は言わないデザインだった(笑)。


けど、乗り心地はいいので

XVとは違う、巡航型のツーリングにはいいかも。



女の子の感覚は、割と面白くて

それに乗っていて、美しく見えるバイクの方を「いい」と思うらしい。



確かに、XVだとなんとなくお洒落な感じがする。

優雅に、どこか浮世離れしているような。


CBXは、普通のバイク。そういう感じ。

生活の一環で乗る、と言うか。

やっぱ、カブの会社だけのことはある。


乗っていても、あんまり優雅、と言うイメージではなくて

マジメ、ひたむき。機械。そんな感じ。



まあ、広美ちゃんみたいにCBXにも乗りたがる子も居たけど(笑)。



レコード屋さんの店員は、やっぱ音楽のお店だけのことはあって

いろいろ、個性的な人もいた。


長い髪を茶色にして、さらっと流しているサーファー風のお姉さん。

25歳くらいだった筈だけど、なんかいつも疲れているふうで

アンニューイな感じ。


私鉄の駅のアーケードの支店に、いつも行っていて。

マイケル・フランクスとか、ああいうのをよく掛けていた。


当時はレコード屋さんの店員でも、音楽が好きだけど・・・プレイヤーには

なれない。そういう人の職業だったこともあった。



俺が楽器弾くので、彼女は、なーんとなく微笑んで見てくれる。

そういう時は、優しげな感じで。にっこり。


黒いエプロンをしていて。いつも暇そうなお店に

ひとり。


お昼休みなんかの時、俺が交代で行ったり。

ついでに、書類を持っていく・・・とか。


そういう、配達の坊やみたいな事も

していた。



掛かってる曲を、俺が「クリス・レアですか?」と聞くと


にっこりして「マイケル・フランクスよ」と。


笑うと可愛かったから、もっと若い人かもしれなかった。




歩道に止めてあるXVを見て「大きなオートバイね」と。



TR1と同じ車体だし、XVは妙に背が高かったから、そう見える。


俺は「はい。750です」と。



彼女は笑顔で「ナナハンね」と。


懐かしい響きだね、と・・・思った。



「そう。ナナハンですね」と、にこにこした。俺も。



俺が、聖子ちゃんのステッカーをヘルメットに貼っているのを見て

にこにこしてて「可愛いわ」と。



俺も「そうですね」と、にこにこ。



彼女は笑顔で「キミも可愛いわ」と。



なーんとなく、淋しげに笑ったりして。






不思議な感じの人で、たまーにここのお店に行くのは

楽しかった。



そんな雰囲気にXVは、似合ってたりする。





低いアーケードのある、私鉄沿線の駅のそば。

たまーに、電車が

ごっとん、ごっとん・・・・きー・・・・とか。

ゆっくりゆっくり走って行く、ところ。


その一角のレコード屋さん。



こういうところで暮していくのも、いいかもしれないな、なんて・・・

思ったりもしたり。







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